
日清食品グループは、「NISSIN Business Transformation(NBX)」を全社活動テーマに掲げ、経営トップ自らがスローガン「DIGITALIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」を全社員に発信しました。このスローガンは、IT部門へ任せきりにするのではなく、社員一人ひとりが自主的に業務を見直し、自らデジタル技術を身につけて活用する組織文化を作ろうというメッセージです。NBXの下、ビジネスモデル自体の変革や効率化による労働生産性の向上を目指し、財務経理、生産、調達、営業など各部門で積極的な業務改革を推進しています。
生産性向上のために2023年に導入したのが、日清食品グループ独自開発の対話型AI「NISSIN AI‑chat」です。導入のきっかけは2023年4月3日に開催された入社式で、安藤宏基CEOがChatGPTを用いて生成したメッセージを新入社員に披露したことでした。経営トップが生成AIを率先して活用したのを受けIT部門はその日のうちにプロジェクトチームを立ち上げ、わずか3週間で「NISSIN AI‑chat」の運用を開始しました。運用開始直後から各部門で活用が進み、現場ニーズに応じた使い方が広がっています。
営業部門では、店頭プロモーションのアイデア出しの壁打ち相手として「NISSIN AI‑chat」を活用しています。例えば「チキンラーメン」のバースデーに合わせた店頭プロモーションでは、営業担当者が店舗の特徴や店頭に並べる商品群、プロモーションの狙いなどを入力し、AIが示した案をベースにブラッシュアップして企画をまとめています。その結果、「チキンラーメンが生まれた1958年に流行・誕生した懐かしいモノやコトを店頭で紹介する」という企画が生まれ、従来担当者が一人でゼロから考えていた業務が効率化され、よりクリエイティブな時間を捻出できるようになりました。
ツール導入で終わらせない取り組みも重視しています。RPAやノーコード/ローコード開発ツールなどを全社的に導入するだけでなく、現場の業務や課題を最も理解している事業部門自らがデジタルツールを使いこなすことを目指しています。そのためIT部門が事業部門と伴走し、現場での業務調査、課題の特定と整理、業務プロセスの最適化(業務の廃止、簡素化、標準化、集約化、分散化、権限・ルール変更)を行い、単純作業の自動化、決裁書申請の電子化、情報の一元管理、データの可視化・分析業務の効率化を進めています。これにより現場に根ざした実効性のあるデジタル化を進めています。
社員のデジタルリテラシー向上を支援する教育プログラム「NISSIN DIGITAL ACADEMY」も展開しています。7つの重点領域ごとに用意された多彩なカリキュラムを社員はオンラインで自由に受講でき、IT部門によるデータ分析やアプリ開発に関する講座に加え、外部講師による生成AIの効果的な活用方法などの講座も提供しています。こうした教育により社員はデジタルツールを最大限に活用するための知識や技術を習得し、全社的な業務スピードや生産性の向上につながっています。
日清食品グループは、スローガの発信からツール導入、現場伴走、教育までを一貫して進めることで、現場が主体的にデジタルを活用する組織文化の醸成を目指しています。各部門での実践が横展開されることで、ビジネスモデルの変革と労働生産性の向上が期待されます。
詳しくは「日清食品グループ」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松
