
企業が人工知能(AI)活用を加速させる一方で、従業員の間では「AIが上司になる未来」への懸念が高まっています。WorkdayとHanover Researchが世界2,950人の意思決定者や導入リーダーを対象に実施した調査では、82%の企業がAI活用を拡大している一方で、従業員の受け止め方には大きな温度差が見られました。
従業員の4人に3人はAIを同僚として受け入れ、業務改善の提案を歓迎しています。特に若い世代はAI投資を進める企業で働くことに魅力を感じており、63%が「競争力が高まる」と評価しました。しかし、AIが管理者として振る舞うことには強い抵抗感が示されています。7割が「AIに管理されるのは不安」と答え、6割は財務上の重要な意思決定をAIに任せることに否定的でした。さらに、76%は「知らないうちにAIがバックグラウンドで動作する」ことに不快感を抱いています。
企業にとってAIの利点は膨大なデータ解析やリアルタイムの課題検出、感情に左右されない意思決定などです。しかし、従業員は「共感力の欠如」「責任の所在不明確」「プライバシー問題」などを理由にAIを上司として信頼していません。実際、採用や給与、法令遵守といった分野では人間が主導権を握ることを望んでいます。
一方で、調査は「AIへの信頼は経験とともに高まる」ことも示しました。導入初期には36%しか信頼を寄せなかった従業員も、慣れるにつれ95%まで信頼度が上昇しました。つまり、AIは「上司」ではなく「コーチ」として活用されることで、従業員の能力を高め、生産性を押し上げる役割を果たす可能性があります。
要するに、AIの力は人間を管理することではなく、人間の能力を拡張し、より良い意思決定や創造的な発想を支援する点にこそあるといえそうです。
詳しくはWorkdayまで。
レポート/DXマガジン編集部
