簡単に創造性を測定できるテストが開発されました。
2021年6月22日にハーバード大学の研究者たちによって『PNAS』に掲載された論文によれば、創造的な人ほど意味の遠い単語を選ぶ能力に優れていたとのこと。
また本研究で開発された、意味の遠い単語を選ぶ能力を測定するテスト(DAT)は既存の創造性を測定するテストに比べて、結果にばらつきが少なく、極めて優秀な尺度になるとのこと。
記事の最後には実際にテストを受ける方法を説明するので、よかったら試してみてください。
目次
- 創造性の高い人は意外な単語を組み合わせられるはず
- 意味の遠い単語選びテストは創造性の高い人を的確に見抜ける
- 創造性測定テストの受け方
創造性の高い人は意外な単語を組み合わせられるはず
クリエイティブな人材は世界中の企業に求められています。
しかし人間の数ある才能において、創造性ほど測定が困難なものはありません。
特に一般的な家庭用品の思いもよらない使い方を発見するといった、自由な思考を元にした創造性(発散的思考)の測定は特に困難であり、既存の創造力測定テストも、発散的思考の成績には大きなばらつきが生じていました。
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちは、極めて簡単な方法でありながら非常に高い精度で、自由度の高い「発散的思考」タイプの創造性を、測定する方法を考案しました。
研究者たちはまず、発散的思考タイプの創造性が高い人は、物事を様々な方法で組み合わせることが得意であるという事実を土台に方法を考案。
そしてこのような発散思考タイプの創造性の高い人は、きっと「意味の遠い単語を選ぶ能力も高いに違いない」と仮説をたて、実証を試みます。
研究者たちは早速98か国の8000人以上のボランティアの人々に「意味のできるだけ離れた名詞を10個選んでもらうテスト」(DAT:Divergent Association Task)を行ってもらいました。
また成績のつけかたにおいては、人間の主観を配するためにAIを用いました。
このAIは膨大な量の文章を分析し、単語間の意味がどれくらい離れているかを学習し、テスト結果を100点満点で数値化することが可能です。
なおAIはかなり優秀であり「犬」と「猫」の組み合わせよりも「犬」と「本」の組み合わせのほうが意味が離れていると判断できます。
新たな単語選びテストはどの程度、自由な発想に重きを置くタイプの創造性を正確に数値化できたのでしょうか?
意味の遠い単語選びテストは創造性の高い人を的確に見抜ける
意味の遠い単語選びは、創造性をどれだけ正確に測れるのか?
研究者たちは8000人の参加者に「意味の遠い単語選び」(DAT)をしてもらうと同時に、既存の創造性を測定する複数のテストを受けてもらいました。
結果、意味の遠い単語を選ぶ能力が高い人ほど、既存の創造性測定テストの成績が高いことが判明します。
また「意味の遠い単語選び(DAT)」の成績は、既存の成績のばらつきが大きな創造性測定テストよりも精度が12倍優れていることが判明します。
創造性測定テストの受け方
今回の研究により、自由な条件での創造性(発散的思考)の高さを正確に測定する方法が判明しました。
研究者たちは今後、この新たな「意味の遠い単語選び」(DAT)を研究者や新入社員の採用試験に取り入れることで、創造性の高い人材を確保できると述べています。
なお現在DATはネット上に公開されており、誰でも自分の創造性の高さを確かめられるようになっています。
もし我こそは創造性の塊だという人がいれば、チャレンジしてみるのもいいかもしれません。
利用するにはまず下記のリンクのページに飛びます。
https://www.datcreativity.com/task?
すると上の画像のようなページが出てくるので「Enter words」の部分に自分が選んだ単語(名詞)を1つずつ記入していって下さい。
ただし、単語は英語である必要があるので、事前にグーグル翻訳などで選んだ単語を英語に翻訳しておく必要があります。
他の記入事項が終わったら「Submit」を押せば、いよいよ測定が開始されます。
スコアは最低が0点で最高が200点となっています。
ナゾロジー編集部で試した結果は、75.62点となりました。
うーん、普通?
※この記事は2021年7月公開のものを再掲載しています。
参考文献
Psychologists Find a New Way to Objectively Measure Creativity
https://www.gilmorehealth.com/psychologists-find-a-new-way-to-objectively-measure-creativity/
元論文
Naming unrelated words predicts creativity
https://www.pnas.org/content/118/25/e2022340118
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
やまがしゅんいち: 高等学校での理科教員を経て、現職に就く。ナゾロジーにて「身近な科学」をテーマにディレクションを行っています。アニメ・ゲームなどのインドア系と、登山・サイクリングなどのアウトドア系の趣味を両方嗜むお天気屋。乗り物やワクワクするガジェットも大好き。専門は化学。将来の夢はマッドサイエンティスト……?