オーストリア・インスブルック大学(University of Innsbruck)の研究チームは、ユークリッド宇宙望遠鏡による観測から2674個もの新しい銀河を発見したと発表しました。
その多くは「矮小銀河(わいしょうぎんが)」と呼ばれる、数十億個以下の恒星からなる小さな銀河だったとのこと。
しかしこれだけ銀河があれば、私たちと同じような知的生命体の暮らす惑星も一つくらいはあるかもしれません。
研究の詳細は2025年3月19日付でプレプリントサーバ『arXiv』に公開されています。
目次
- 新たな銀河を大量発見!
- 矮小銀河を見つけることは、なぜ重要なのか?
新たな銀河を大量発見!
研究チームは今回、ESA(欧州宇宙機関)の運営する宇宙望遠鏡「ユークリッド」の取得した観測データを用いて、北天のEuclid Deep Field North(EDF-N)と呼ばれる観測領域を調査しました。
この領域のうち、25枚のタイル画像を対象として詳細に解析した結果、合計で2674個もの銀河が新たに検出されたのです。
チームはこれらの銀河の明るさや色、形態などの情報を総合的に評価し、最終的な分類を実施。
その結果、新たに見つかった銀河のうち、約58%は楕円形の「矮小銀河」、約42%は明確な構造を持たない「不規則銀河」であることがわかりました。

またこれらのうち、星が球場に集まった天体である「球状星団」を持つ可能性の高いものは約1%、銀河の中心にある高密度な質量源である「銀河核」を持つものは約4%と推定されています。
銀河核の質量源には、大質量ブラックホールが存在すると予想されています。
それから、矮小銀河のうち約6.9%は青く輝くコンパクトな中心部を持っていました。
研究者によると、これは中心部で新たな星形成が進行している可能性があるとのことです。
矮小銀河を見つけることは、なぜ重要なのか?

今回の研究は、単に新しい銀河を「数えた」だけではありません。
矮小銀河の「数」と「分布」は、宇宙の構造形成や進化に関する理論、特にダークマター(暗黒物質)に関する宇宙論モデルを検証する上で非常に重要な手がかりを提供してくれます。
これまでの理論では、暗黒物質が小さな重力の種となり、そこにガスが集まって矮小銀河が形成されたとされています。
そのため、矮小銀河が宇宙にどのくらい存在し、どのような分布をしているかを明らかにすることは、暗黒物質が宇宙をどう形づくってきたのかを検証する上で、きわめて本質的な意味を持ちます。
さらに矮小銀河は今も新たに形成され続けているのか、それともすでに形成は終わっていて、環境によって変化していくのみなのか、といった疑問もあります。
今回の研究結果は、こうした矮小銀河にまつわる疑問を解き明かす貴重な情報源となり、さらに今後、同様のデータを積み重ねていくことで、宇宙の形成史を立体的に描き出すことができるかもしれません。
参考文献
Thousands of dwarf galaxies discovered
https://www.uibk.ac.at/en/newsroom/2025/thousands-of-dwarf-galaxies-discovered/
元論文
Euclid: Quick Data Release (Q1) —A census of dwarf galaxies across a range of distances and environments
https://doi.org/10.48550/arXiv.2503.15335
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部