スコティッシュフォールドってどんな猫?
Andrey Tairov/shutterstock.com
猫の人気ランキング上位に必ず出てくるスコティッシュフォールド。まん丸とした顔がかわいらしいですよね。そして、なんといってもスコティッシュフォールドは垂れた耳が特徴的な猫です。名前の由来ともなっている垂れ耳がかわいいと人気を集めていますが、実は立ち耳のスコティッシュフォールドもいるんですよ。
今回はスコティッシュフォールドの耳に注目してみましょう。スコティッシュフォールドの歴史、特徴、そして垂れ耳と立ち耳のメリットやデメリットについてもまとめます。これからスコティッシュフォールドを飼ってみたいと考えている人がいたら、ぜひ参考にしてくださいね。
スコティッシュフォールドの歴史
スコティッシュフォールドの歴史は「スージー」と名付けられた真っ白なメス猫から始まります。1960年代にスコットランドの農村で発見されたスージーはとても人懐っこいメス猫でしたが、珍しい垂れ耳をしているのが特徴的でした。
飼い主のウィリアム・ロスは、スージーが生んだ子猫の中に、母猫と同じような垂れ耳の子がいることに注目し、垂れ耳の猫を繁殖させることにしました。イギリスの猫種血統登録団体であるGCCFに登録し、さらに遺伝学者のパット・ターナーの協力を得て、本格的に垂れ耳の猫の繁殖が進められました。
ところが、遺伝に伴う疾患に悩まされるようになり、イギリスでの繁殖は中断されることになりました。それでもアメリカで遺伝疾患や品種確立のための研究が続けられ、やがてアメリカの猫愛好家協会であるCFAに登録されるようになりました。
垂れ耳が特徴だったので、垂れ耳のウサギのようだとして「ラップ」と呼ばれていましたが、やがて耳が折りたたまれているような見た目から「フォールド」と呼ばれるようになりました。最大の特徴の垂れ耳ですが、これは骨軟骨異形成によるものなので繁殖するべきではないとして公認していない団体もあります。
スコティッシュフォールドの特徴
スコティッシュフォールドはまん丸の顔と丸い目が特徴的で、筋肉質なセミコビータイプの体形をしています。丸い顔をしているのでドラえもんみたいだとか、フクロウに似ているといわれることがあります。折りたたまれたような耳が特徴的ですが、耳の折れ曲がり方を3つに分けています。
一つのゆるい折り目がついているのがシングルフォールド、折り目がピッタリとしているのがダブルフォールド、折り目が三重になっているのがトリプルフォールドです。そして、中には耳が立っている個体もいます。生まれた時から耳が垂れているわけではなく、生後1か月くらいに耳が折れ始めると言われています。
また、折れた耳の個体が生まれるのは全体の30%くらいで、残りの70%は立ち耳のスコティッシュフォールドだとも言われています。立ち耳の個体をスコティッシュストレートと呼ぶこともあります。確かにフォールドだと「折りたたまれた」という意味になるので名前を変える必要があると考える人がいるのも納得できますね。
さらに、スコティッシュフォールドは腰を抜かしたようなユニークな座り方をすることでも知られています。この姿勢は「スコ座り」とも呼ばれています。スコティッシュフォールドは遺伝的に骨軟骨異形成になりやすいため、足腰にかかる負担を減らすように本能的にユニークな座り方をするようになったといわれています。かわいいスコ座りにはそんな理由が隠されていたんですね。
スコティッシュフォールドの性格
スコティッシュフォールドは穏やかで飼い主に対して甘えん坊な性格をしているといわれています。中には犬のような性格だという人もいることから、他の猫に比べて人懐っこい性格の子が多いことがわかります。家族やほかのペットとも仲良くやっていけるので、飼いやすい性格の猫だということができるでしょう。
スコティッシュフォールドがおとなしいのは、遺伝疾患による関節の痛みを我慢しているからではないかと考える人もいます。魅力的な性格を持つ猫種ではありますが、遺伝疾患という複雑な事情もあるので、購入前に注意を払って観察する必要があるといえるでしょう。
垂れ耳スコティッシュフォールドのメリット
frank60/shutterstock.com
可愛くて稀少
垂れ耳の非常に珍しい猫種なので、初めてスコティッシュフォールドを見た人は、間違いなくそのかわいさにノックアウトされることでしょう。スコットランドの農場で白い垂れ耳のメス猫が発見されたことから同種の繁殖が行われるようになりましたが、やはり珍しくてかわいいということで、発見したウィリアム・ロスは繁殖に力を入れることにしました。
その名前の通り、「耳が折りたたまれていなければスコティッシュフォールドではない」といって垂れ耳の個体を探す人がいるかもしれません。垂れ耳の子猫を繁殖するために、垂れ耳同士の親猫を交配させるというのが確実だと考えてしまいそうですが、スコティッシュフォールドの場合はそうすることが禁止されています。
なぜなら、垂れ耳同士の親を交配させると遺伝的な疾患を抱えた子猫が生まれやすいからです。子猫の時は異常が見られないこともあり、健康体だと診断されることがありますが、成長の過程で異常が出てくることがあります。垂れ耳の個体はかわいいですが、垂れ耳同士の両親を交配させていないかどうかの確認はしたほうがよさそうですね。
垂れ耳と立ち耳の両親を交配させるのがスコティッシュフォールドの繁殖の際の常識になっているので、生まれてくる子猫がすべて垂れ耳になるとは限りません。全体の30%ほどが垂れ耳の個体として生まれてくるという情報もあります。ただしこの数字にはっきりとした裏付けはないようですが、かわいくて稀少な垂れ耳の個体はやや割高で販売されています。
スコティッシュフォールドには短毛種と長毛種の2種類がいますが、垂れ耳で長毛種となるとさらに珍しいので割高で取引されています。遺伝による疾患というジレンマがありますが、スコティッシュフォールドを飼うなら垂れ耳がいいという人が多いのも納得できますね。
垂れ耳スコティッシュフォールドのデメリット
zossia/shutterstock.com
耳の掃除が大変
垂れ耳のスコティッシュフォールドはかわいいですが、それゆえに耳の掃除を定期的にしなければなりません。通気性が悪いので湿気や汚れが溜まりやすく、そのまま放っておくと耳の病気になってしまいます。猫の耳はデリケートなので、掃除をする時は優しく丁寧に扱うことが大切です。
垂れ耳のスコティッシュフォールドの耳掃除は最低でも1週間に1回は行いましょう。専用のイヤークリーナーがあるので、コットンなどに適量をしみ込ませて優しく汚れをふき取ります。できるだけ子猫の時から耳掃除に慣れさせるようにしましょう。成猫になってからだと嫌がって耳を触らせてくれないかもしれません。
最初は嫌がるでしょうが、根気強く耳掃除をするようにしてくださいね。嫌がるときは無理矢理掃除するのではなく、リラックスできる状態を作るなど様々な工夫を凝らしてください。できれば飼い主と愛猫のコミュニケーションの時間になるといいですね。上手にできたらたくさん褒めてあげましょう。
綿棒を使うと耳垢を取りやすいですが、鼓膜を傷つけてしまう可能性があるので慎重に行ってください。また、耳垢が黒い時や臭いがきつい時は耳ダニが繁殖している可能性があります。症状が進行する前に動物病院で診察を受けるようにしましょう。
遺伝疾患が多い
垂れ耳のスコティッシュフォールドは遺伝疾患が多いといわれています。特徴とされている垂れ耳そのものも骨の形成異常によるので、耳だけでなくその他の骨や関節に異常がある可能性も考えることができます。スコティッシュフォールドに多い病気に骨軟骨異形成があります。骨や軟骨の形成がうまくいかずに、痛みが発生する病気です。
骨軟骨異形成は進行性の病気なので、子猫の時はわからずに健康体と診断されることがあるようです。しかし病気が進行するにつれ、関節の痛みが発生し、歩き方や座り方に異常があらわれます。運動をしたがらなくなったり、高いところへの上り下りができなくなったりします。年齢が進むと「骨瘤」という骨のかたまりができて、さらに痛みが増します。
骨軟骨異形成を完治させる治療法は今のところありません。鎮痛剤によって痛みを和らげるという方法がとられますが、長期にわたる投与によって副作用が生じたり、治療費も高額になったりすることを覚悟しないといけないでしょう。
他にもスコティッシュフォールドは尿管結石になりやすい猫種だといわれています。さらに、レーベル先天黒内膜という視力障害も起こりやすいとされています。垂れ耳のスコティッシュフォールドはかわいいですが、このように先天性の遺伝疾患にかかりやすいというデメリットもあります。
垂れ耳同士の交配には要注意
遺伝による疾患が多いスコティッシュフォールドですが、先ほども取り上げたように、垂れ耳同士の交配により疾患を抱えて子猫が生まれてくる可能性が高くなります。繁殖を開始した当初から、骨格と聴力の異常が見られたため、一時は中止されたほどです。
結局、アメリカでアメリカンショートヘアやエキゾチックショートヘアなどと交配がなされ、スコティッシュフォールドらしさを残しながら繁殖が続けられました。こうして遺伝性疾患のリスクを少なくしながら注意深く繁殖がなされたという歴史があります。
それでも、遺伝的に考えると垂れ耳同士の交配をすれば確実に垂れ耳の子猫が生まれてきます。そのため、垂れ耳の子猫だけを誕生させて商売したいとする悪質なブリーダーがいるのも残念ながら現実です。ですから、スコティッシュフォールドの子猫を迎える際は、垂れ耳同士の交配がされていないか確認するようにしましょう。
スコティッシュフォールドが抱える遺伝病という問題を真剣に受け止めて、繁殖そのものに反対をする団体もいます。飼育することを決めた際には、スコティッシュフォールドが抱えている問題についても向き合って、自宅で安易に繁殖をすることがないようにしましょう。