耳の違い、意味はある?
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犬は聴覚に優れている動物ですが、耳の形によって違いはあるのだろうかと思われることはありませんか?
耳がピンッと立っている犬と耳が垂れている犬がいますが、立ち耳と垂れ耳が存在する理由があるのでしょうか。
犬の立ち耳と垂れ耳の起源はどのようなものなのでしょうか。
犬の生活スタイルの変化や人間との関わりによって犬の耳にどのような影響を与えてきたのかについてまずはご紹介したいと思います。
1.犬の立ち耳と垂れ耳の起源
オオカミなどのイヌ科の野生動物や古代からの起源と考えられる犬種は、警戒心や緊張、危険察知のために、音を聴く能力が必要でした。
そのために耳介の筋肉をピンと立たせることで周囲の音を拾い、外敵から身を守っていたと考えられています。
耳によって生き抜く必要があったため、もともと立ち耳の犬しか存在していなかったと言われています。
犬の情報源として耳は大きな役割を持っていることがよく分かりますね。
犬は人間とともに仕事をしていくうちに、聴覚よりも嗅覚を必要とする犬が現れるようになりました。
嗅覚によって獲物を探し当てるので、耳からの情報が邪魔だったのでしょう。
鼻に神経を集中させて、ニオイによって獲物を狩るようことができるように、耳が折れる形に改良されたと考えられています。
また、家畜として人間と共生する犬が増えて、生きることに警戒心を持つ必要がなくなりました。
そのことによって、耳介の筋肉が緩み、垂れ耳の犬が誕生したとも言われているそうです。
また、垂れ耳の愛玩犬は「容姿がいい」という理由で生まれたとも言われているそうです。
2.犬の耳の種類
犬の耳は人間と共生していくことによって変化してきましたが、犬の耳の形には様々な種類があります。
それぞれの耳の形によって何となく「カッコイイ」「優しそう」などとイメージが変わるような気がします。
どのような形があるのか見ていきましょう。
1.立ち耳(Prick Ears)
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ピンと立っている立ち上がっている耳を「立ち耳」と言います。
イヌ科の野生動物のほぼ全てが立ち耳で、先端は丸いタイプや尖っているタイプがいます。
柴犬やジャーマン・シェパード、シベリアンハスキーなどが立ち耳として挙げられています。
2.こうもり耳(Bat Ears)
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顔の大きさに対して、耳の割合が大きく、コウモリに似ていることから別名「バットイヤー」とも言われています。
耳の付け根は広く、丸い先端をしています。
耳と耳の間隔が広いことが特徴です。
フレンチブルドッグやコーギーなどがコウモリ耳として挙げられています。
3.ろうそく耳(Candle Flame Ears)
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ろうそくの炎のような形をしている耳のことを「ろうそく耳」と言います。
先端は尖った形をしています。
ミニチュアピンシャーなどが挙げられています。
4.バタフライイヤー(Butterfly Ears)
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まるで蝶が羽を広げたような耳を「バタフライイヤー」と言います。
大きな立ち耳に豪華な飾り毛を持つことが特徴です。
飾り毛は毛玉になりやすいので、こまめなブラッシングやお手入れによって美しさを保つことができるでしょう。
パピヨンやロシアン・トイ・テリアなどが挙げられています。
5.半立ち耳(Cooked Ears)
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立ち耳ですが、先端が折れ曲がっている耳を「半立ち耳」と言います。
先端に折りクセをつける耳セットを行なう方も多いそうです。
シェットランドシープドックやコリーなどが挙げられています。
6.ボタン耳(Button Ears)
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半立ち耳に似ていますが、耳の穴が隠れるように垂れた耳の部分が耳の根元を覆っている形を「ボタン・イヤー」と言います。
テリア種に多く見られ、ジャックラッセルテリアやフォックステリアなどが挙げられています。
7.ローズ・イヤー(Rose Ears)
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途中から折れた耳が後ろ側にねじれて、耳の中が見える形を「ローズ・イヤー」と言います。
ブルドッグやウィペットなどが挙げられています。
8.垂れ耳(Drop Ears)
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頭の横に垂れ下がった耳の形をしているのを「垂れ耳」と言います。
犬はカーミングシグナルとして耳を使う場合がありますが、垂れ耳の犬はそれが伝わりづらいという難点があります。
ゴールデンレトリーバーやビーグルなどが挙げられています。
9.ペンダント耳(Pendant Ears)
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頭を振り回したら、風を起こせそうなほどの大きな耳を「ペンダント耳」と言います。
嗅覚によって獲物を捕らえる仕事をしていた犬種に見られる耳の形です。
バセットハウンドやミニチュアダックスフンドなどが挙げられています。
3.耳を清潔に保つ
犬にはいろいろな耳の形がありましたが、立ち耳と垂れ耳では自宅で耳掃除を行なうときに違いはあるのでしょうか。
犬がまず耳の中を触っても嫌がらないように慣れさせることから始めることができるでしょう。
耳掃除をどのように行えるか見ていきましょう。
1.立ち耳タイプの耳掃除の手順
1.犬を動かないように安定させます。
2.耳の中にイヤークリーナーを1~2滴垂らします。
3.指で耳をマッサージするように、イヤークリーナーを耳になじませます。
4.しばらくそのまま犬が動かないようにして数分経ったら、犬が自分で耳をブルブルふるわせるようにします。健康な耳の汚れの場合は、これできれいに耳の汚れが飛んでいくでしょう。
5.耳を振り終わったら、コットン(ガーゼ)できれいに優しく拭き取ります。強くこすったりしないようにしましょう。生乾きにならないようにしっかりと乾燥させるようにしましょう。
立ち耳タイプの犬は、ほこりなどが耳に入りやすくなっているので、定期的に耳の中を観察してあげるようにしましょう。
耳掃除のときにイヤークリーナーの使い過ぎには気をつけるようにしましょう。
イヤークリーナーは、2週間に1回くらいのペースで大丈夫です。
2.垂れ耳タイプの耳掃除の手順
1.耳をしっかり持って、耳が見えるようにしてからイヤークリーナーを1~2滴垂らします。
2.その後、しばらくしてから犬が自分で耳をブルブルとふるわせるようにします。
3.耳を振り終わったらコットン(ガーゼ)できれいに優しく拭き取ります。垂れ耳タイプの犬は、外に耳あかが飛び散らなかったりするので、必ずコットン(ガーゼ)でしっかりと確認して拭き取りましょう。
垂れ耳タイプの犬は、耳の穴がふさがっている状態になっているので、すごく蒸れやすくなっています。
蒸れやすい状態になっていると、いくら耳掃除しても細菌繁殖をしてしまうので、しっかり乾かすことに重点をおくとよいでしょう。
細菌に感染すると、初期症状として粘っこくニオイがきつい耳あかがたまるようになるそうです。
垂れ耳タイプ用の乾燥する効果のあるイヤークリーナーもありますので、それを使うことも効果的と言えるでしょう。
また、耳の軟骨と軟骨の重なっている部分などもしっかりと乾燥させるようにしましょう。
3.耳の中に毛が生えているタイプの耳掃除の手順
耳に毛が生えていると、耳を掃除するときに毛が邪魔になってきれいにすることが難しくなります。
耳の中に生えている毛は、鉗子を使ってゆっくりと抜いてあげるようにしましょう。
鉗子がない場合は、耳の毛は指で引っ張って抜くこともできるでしょう。
このときに気をつけたいのは、耳の中にくっついて生えている毛は絶対に抜かないようにすることです。
耳に傷をつけてしまうことになりかねません。
抜いても大丈夫なのは、人間で言う“産毛”のような毛です。
それでは掃除の手順を見ていきましょう。
1.耳の毛の処理を行ないます。
2.耳の毛の処理が済んだら、イヤークリーナーを1~2滴垂らして、マッサージするように耳になじませます。
3.その後、犬が自分で耳をブルブルとふるわせるようにします。
4.耳を振り終わったら、コットン(ガーゼ)でしっかり拭き取り、乾燥させるようにします。
5.耳の毛が生えるタイプの犬も、耳の中が蒸れやすい状態になりやすいので注意しましょう。乾燥に気を配ることが大切です。
4.やってはいけない耳掃除の方法
耳あかはべっとりしているので、水だけ落とすのは難しいと言えるでしょう。
それで、耳に水を入れたらどうだろうかと考えるかもしれませんが、耳に水を入れて耳を洗うと耳の中が蒸れてしまい、細菌の繁殖につながりかねません。
イヤークリーナーは毎日使うと耳の皮膚を悪化させてしまいますので、毎日は使わないようにしましょう。
綿棒を使うと耳掃除しやすくなって、きれいに掃除できると感じますが危険なこともあることを覚えておきましょう。
綿棒の先の綿が耳の中に入ってしまい、取れなくなってしまうことも起こりえます。
また、綿棒を使うと奥にまで入れてしまいがちになるので、そうすると耳の中を傷つけやすくなってしまい、耳の病気につながることになるでしょう。