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「HDR」は「High Dynamic Range」の略称で、より広い範囲の明暗を表現できる技術のことです。
ダイナミックレンジは、処理可能な信号の最大値と最小値の比率を表した数値です。「もっとも明るい要素」と「もっとも暗い要素」の『差(範囲)』と捉えるとわかりやすいです。
カメラなどの撮影分野に精通している方は特に意識して用いる単語かと思います。
ダイナミックレンジの上限の明るさを超えると、それは「白とび」として記録され、暗い場合はその逆の反応、つまり「黒つぶれ」が起こります。
一言でまとめると、これらの白とびや黒つぶれが起こる限界を広げる技術がHDRです。
前項で、HDRはダイナミックレンジを拡張する技術とお伝えしました。
ここではダイナミックレンジとは何なのかを具体的に掘り下げてご説明します。
例えば、写真を撮るときに画角の中に太陽と、ひまわりの花を同時に写そうとしている状況を思い浮かべてみてください。
私たちの肉眼ではひまわりの花も、背景の青空も、そして太陽も眩しいながらしっかりと見えていることと思います。
しかし、いざひまわりに露出を合わせてシャッターを切ると、背景が白とびしてしまいます。
逆に背景の空に露出を合わせてシャッターを切ると、今度はひまわりの花がシルエットのように黒つぶれしてしまいます。
これこそが、ダイナミックレンジの広さの違いです。
人間の視覚は10^12のダイナミックレンジを持っていると言われています。
しかしカメラのセンサーが持つダイナミックレンジはこれより小さいので、視覚では明暗差を認識できてもカメラの性能は追いつけないのです。
下のように図示すると分かりやすいです。
上の例ではカメラのセンサーとしたところを、下図では従来のSDRテレビと置き換えて考えてみてください。
より広い明るさの幅(ダイナミックレンジ)を表現できる技術こそが、HDR技術です。
HDRにはいくつか規格が存在します。
その中でも、特にメジャーな2つを具体的に紹介します。
・HDR10
HDR10は明暗を1024段階(10bit)で表現できるHDR規格です。
輝度は10000nitまで対応しています。
(※ nitはニトと読み、明るさを表す単位です。「1平方メートルの画面を1cd(ろうそくを灯した時とほぼ同等)の明るさで光る輝度のこと」を表す国際単位(SI)系で定められた単位です。)
人間の視覚で認識できるnit数は0.001〜20000nitほどと言われており、より視覚に近い輝度幅を表現できています。
従来の映像技術であるSDRと比較してHDRは高い輝度、広い明暗差の表現が可能になりました、
極端な明部・暗部にて忠実な色再現性やディテールの維持、立体感や質感の表現など、映像で表現できる幅が広がっています。
HDRは次世代の高画質技術として注目されており、Netflixをはじめとする動画配信サービスやUHD Blu-rayではすでにHDRで作成されたコンテンツの配信が始まっています。
このように、HDRは従来技術よりも、さらに精細な表現を可能にしています。
配信などの目的でHDR映像をスクリーンショット、画面録画をした際、その映像を配信サイトやSNSにアップ・シェアすると、非対応環境の視聴者やサービス下においては本来の意図とは異なる色味になってしまう可能性があります。
また、明暗部を強調することに適さないゲームソフトも存在するため、HDRが本当に適した環境なのかを精査することも必要です。
HDRの技術とその規格、メリット・デメリットをご紹介しました。
幅広い明暗差を表現できるようになれば、今まで作り込めなかった部分にも手を加えることができ、作品作りの幅が広がります。
イメージとしては今まで小さな机の上で作業をしていたものを、さらに大きな机に拡張したと考えるとしっくりくるかと思います。机が広くなれば多くのお皿を並べられますし、作業をするにしても広いスペースを使えます。
iPhoneやデジタルカメラで写真を撮る際にもHDRの表記を見たことのある方もいらっしゃると思いますが、写真におけるHDRは得られる効果としては映像と同じでも映像の作り方が異なります。
写真では ①明部に露出を合わせたもの ②中間露出のもの ③暗部に露出を合わせたもの の各々を重ね合わせて1枚の写真を作り上げています。
映像でのHDRとは作像のプロセスが多少異なるので注意しましょう。