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既存の路線バス車両に後付け自動運転AIシステムを搭載し、全国各地の路線バスルートを実証実験レベル2で走り続けている埼玉工業大学の日野レインボーIIベース自動運転AIバス。
この後付け自動運転AIシステムという独自性から、全国の路線バス事業者が既存車両を自動化できるということで注目している埼玉工業大学の自動運転技術が、またアップデートし実現へ向けて一歩ちかづいた。
これまで首都高速道路直下を行きGNSS(衛星測位システム)がうまく届かなかった川崎鶴見臨港バス路線テスト走行や、新宿中央通りトンネルの下を行く京王バス運行 都庁循環(CH01系統)などを、デッドレコニング(DR/自律航法)の性能向上などで想像以上に“なめらかな自動走行”でクリアしてきた埼玉工業大学 自動運転AIバス。
その埼玉工業大学 自動運転AIバスが、キャンパスを構えるここ深谷市へ再び里帰りし、東海理化の遠隔監視システムなどをアップデートさせて再び公道テストへ―――。
今回は、埼玉工業大学の地元、埼玉県深谷市の小学生たちも乗せて、「まるで人が運転してるみたかった」といわせる走りをみせてくれた。
全国各地の自治体・路線バス事業者などと連携し、実証実験・限定運行などを重ねる埼玉工業大学の “生きた教材” 後付け自動運転AIシステム搭載 自動運転バスが、再び大学キャンパスがある埼玉県深谷市に里帰りし、「渋沢栄一新一万円札発行記念 自動運転バス試乗会」に登場。
この埼玉工業大学 自動運転AIバスは、1月13・18・19日の3日間に一般無料試乗会、1月12・15~17日の4日間に関係者無料試乗会で、深谷市内循環ルート約13.6kmをオートで走行。すでに定員以上の一般応募があり、その注目度がうかがえる。
今回の埼玉工業大学 自動運転AIバス無料試乗会は、埼玉県深谷市が主体となり、埼玉工業大学をはじめとし、A-Drive(神奈川県横浜市)、アイサンテクノロジー(愛知県名古屋市)、損害保険ジャパン(東京都新宿区)、KDDI(東京都千代田区)、ティアフォー(愛知県名古屋市)、深谷観光バス(埼玉県深谷市)の7事業者による「深谷自動運転実装コンソーシアム」で実現。
自動運転レベル2で、公道を法定速度(60km/h以下)で運行し、運転手不足等の交通課題解決にむけて、市内公共交通へ『地産地消』で自動運転技術の導入をめざしていく。
また深谷市は、この7事業者による「深谷自動運転実装コンソーシアム」結成で、国土交通省「令和4年度 地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転実証調査事業)」に埼玉県内で唯一採択され、自動運転レベル4 の実現へ向けても取り組みを加速させていく。
今回のルートは、地上空間が広く、急なアップダウンもない平坦な道が続くにもかかわらず、「これまでで最も現実的で難しいルート」といえる。
実際に乗ってみると、地方のローカルな道路網によくある、人間の判断では難しい走行ポイントがいくつもある。たとえば↓↓↓
◆農業用トラクターが出入りする1車線道と農道の交差点
◆信号なし「止まれ」一時停止確認・横断歩道つき交差点&T字路
◆大型トラックとぎりぎりすれ違える対向2車線道路
◆センターライン・歩道がない狭い道路で高齢の歩行者や自転車通学生がいる
◆60km/hで走る片側2車線の国道17号バイパス
◆日没後のヘッドライト点灯オート走行ダイヤもある
まず乗ってみて、今回も「あっまた進化したな」と感じたのは、自動運転AIモニターに映るアイサンテクノロジー「自動運転用 高精度3次元地図 ADASmap」がさらに高精度になっていて、白線表示などがさらに詳細にリアルタイム表示されていた。
レベル4自動運転実用化をめざして走り続ける埼玉工業大学 自動運転AIバスは、今回の「これまでで最も現実的で難しいルート」を、そつなくスーッと走っていく。それが第一印象だ。
また、東海理化の遠隔監視システム・車内乗客検知システムの技術を得て、車内の安全・快適環境もアップデートさせていることで、自動で走っていても、上手な運転手が操っていると思ってしまうほど、自然。
小学生を乗せて深谷市内の「最も現実的で難しいルート」を走る埼玉工業大学 自動運転AIバスを見守りながら、埼玉工業大学 工学部 情報システム学科 渡部大志 教授(同大学 自動運転技術開発センター センター長)はこう話していた。
「子どもの下校時間になると、道が暗くなる。街路灯をつければいいとも思うけど、街路灯をむやみにつけると田畑の作物の発育環境も考慮しなければならない。そういった課題を、インフラと車上側の両方の自動運転システムでクリアし、レベル4実現へと前進させたい」
また埼玉工業大学 内山俊一 学長は、「レベル2からレベル4へ持っていくにあたり、さまざまな課題をひとつひとつ解決させながら、地元 深谷市とともに次世代モビリティ社会の実現をめざしたい」と伝えた。
そして深谷市 小島進 市長は、「『渋沢栄一新一万円札発行記念 自動運転バス試乗会』という名には、ここ深谷で生まれ育ち『近代日本経済の父』と称される渋沢栄一が歩み築いてきた道を、こんどはどこよりも早く実現化に向けて自動運転バスが走り抜けていくというトピックスが込められている。未来の乗り物には、夢とロマンがある。自動運転バスの実現は、ここ深谷から始まったと歴史に刻めるように、これからも連携してすすめていきたい」と意気込んだ。
人間社会学部と工学部の2学部で文系・理系の枠を超えた多彩な学び・研究を続けている埼玉工業大学は、独自の自動運転AIシステムをいち早く“生きた教材”として採り入れ、大学の教材でありながら、全国各地の自動運転実証実験でテスト走行を重ね、いまでは全国の路線バス事業者から共同事業のオファーがくるまでに進化してきた。
すでに2月以降も、ここ埼玉県深谷市から300km以上離れた地の公道で、埼玉工業大学 自動運転AIバスが走る計画が動いているという。
◆埼玉工業大学
https://www.sit.ac.jp/