はじめに
先日奄美で、一生記憶に残るような、神秘的な経験をしました。それは「ユタ」にお会いしたこと。自分の様々な素質を詳しく見抜き、的確なアドバイスをいただいたことで大きな勇気を授かり、未来がもっと楽しみになりました。そのユタは、奄美を知る上で欠かせない、歴史文化の大切な要素だったのです。
Text&Photo:とまこ
女性霊媒師「ユタ」ってどんな人?
「ユタ神様行った? あれ、まだなの?! 奄美好きなのに」
奄美をよく訪れていたら、奄美在住の友達にそう言われました。
「ユタ神様」?! 奄美のキーワード的に表現されたそれは、かつての琉球王国の版図にあった、沖縄県と鹿児島県の奄美群島に昔からいらっしゃる民間の女性霊媒師「ユタ」のことです。
神秘的な霊能力で神の言葉を代弁し、個人の問題解決の助けとなってきた彼女らは尊敬と信仰を集め、それゆえ国から厳しい弾圧も受けてきました。そんな歴史を経ても今なお、実際に存在して、人々に頼られているのがすごいでしょう。しかも「神様」と呼んで敬意を表す人もいるほどとは(その認識には、個人差、賛否両論は大きくありますが)。また、他の琉球圏の島々も訪れてみると、奄美はユタの存在が人々にとってより近い島だと感じる部分もありました。
ユタも人を選ぶ?! 見ることのできない人と、予約の仕方
「奄美の人は気軽にユタ神様のところに行くよ。例えば進路とか、恋愛とか、引越しとか、なんでも気軽に聞きに行くみたい。わたしも3回行ったよ」
なるほど、気軽に。神様と表現するからには敬意が高いのは当然だけど、ご意見を伺いに行くハードル的には、信頼する先生や先輩と似ているような……いよいよ気になります。特に問題はないけれど、奄美を知りたい、感じたいと思い、お会いしに行くことにしました。
「ユタ神様はあちこちにいるけど、わたしが行くのは、さだよ神様。全国から訪ねてくる人がいるから前もって電話で予約してね。当日は空いてないと思うけどね。あと、午後は(ユタが代弁する)神の声が聞こえづらくなるから午前のみって聞いたこともあるよ」
また、断られることもあるそうです。訪れようとしている人について神の声が聞こえるかが電話越しにわかるとか。なかなか電話が通じない人もいたり、二人で予約する場合「あなたは平気だけどもう一人は見てあげられません」と言われることも。どうやら色々お見通しのよう……ユタの前で都合のいいことは言えませんね。自分の本当の心を見つめるいい機会にもなりそうです。
さっそく電話をすると、すぐにやさしい声の女性が出てくれて、ご本人とわかりました。そしてできないと聞いていた当日の夕暮れ時に約束ができ、招かれているかも、なんて思いました。
ユタを訪ねるときにはお忘れなく! 持ち物と謝礼
訪れる際の持ち物は三点です。焼酎、塩、謝礼。
焼酎は神様に捧げるもので、行った店にある一番小さいもので構いません。塩は、必要な人に聖なる力を加えて持ち帰らせるためのもので、量は思う分でいいようです。
ちなみにわたしは、行く道のコンビニで揃えました。奄美で一番古い蔵元の弥生焼酎醸造所の「彌生」360mlと、売っていた塩がこれだけという理由で「伯方の塩」1kg。謝礼の相場は、島人は3,000円、島外の人は5,000円と聞きその額を包みましたが、あくまでも気持ちです。
ユタの居場所にはどうやって辿り着く? 家の目印は?
場所は「佐仁(集落)の海の前に赤い鳥居があるから」と聞きました。その情報だけでわかる存在感があるし、集落は小さいということでしょうね。その言葉通り、本当にすんなり到着できました。
集落に入って海に一番近い道を走ればすぐ。民家に赤い鳥居……なかなか意味深な雰囲気ですよ。ちなみに佐仁は、奄美の一番北にある集落(奄美市笠利町大字佐仁)で、名瀬から車で50分ほどです。
まさか、そんな人も、ユタを訪ねてくるとは!
到着したのは約束の時間少し前。中から人が出てきたので、
「ユタさまのところの方ですか?」
「ううん、ちょっと買い物を頼まれて。今見てもらってる住職さんが泣いてて山場だったから、もう少し時間かかるみたいよ〜」
へえ! 住職さんがユタに。そして涙とは、本格的ですね。
ユタの言葉に鳥肌!! めちゃくちゃ前向きになるひととき
しばし外で待ち、前の方と交代で家のドアを開けました。すぐ前に神棚の部屋が、右隣には待合室として使われているらしい部屋があります。なるほど、待っている方にも、用事があって訪ねてきた方にも話は筒抜けでしょう。
「こんにちは」
ユタさまの姿はまだ見えません。
「あなたはひとつのことに夢中になると集中して他が見えなくなる人ね」
びっくりです。まだお互いの姿も見ていないのに、言い当てられました。そうなのです、ザックリいうとそのために離婚もしたし(笑)、そもそも、今ここにいるのもそのためです。昨年から急にはまった離島でのドローン空撮のために、大半の日々をどこかの島で過ごしているのですから。
そして左の部屋から姿を表すと、矢継ぎ早に他の多くの素質と特徴を言い当て、それを持って何をすればいいか教えてくださいました。主に仕事と恋愛について。わたしはすでに、それをしている……びっくり!
「言い当てられてどうするの?」普段占いなどに縁のないわたしはそう思っていましたが、とんでもない、絶大な効果がありました。自分は自分の素質を生かす道を歩いていると神様が太鼓判を押してくださった、これにはものすごく背中を押されたし、勇気が湧いたし、やる気になるのです!
「仕事の課題は○○よ。そうしたらすごく上手くいく」
待ってました、未来へのアドバイス! 聞いてもいないのに課題を提示していただいて、しかもとても納得がいき、力強くなりました。
体についても言われました。あるタイミングで急に
「生理が遅れてるね」
ギクッ。なんで知ってるの? 一週間遅れているんです!
未来の体調についてもです。わたしの場合は良く言っていただいたけど、これだけ言い当てられた後では、悪いことを言われたら、そうならないよう最善の努力をするでしょう。
「あ、つい、焼酎と塩をお渡しするのを忘れていました!」
慌てて差し出すと、
「いいのよ」
受け取った焼酎の蓋を開けて注ぎ、神棚にかざすと、遠くを見ながら
「あなたの家は○○で□□で△△なところ……あなたにはもっと△△な方がいいけど、なかなか△△ではある、いいところね」ギクッ。大正解で鳥肌。
さだよ神様は、どうしてユタになった?
「あなたから聞きたいことはある?」
そもそも特に聞きたい項目はなかったのに、言われるべき言葉が自動的に十分降ってきていたので、逆に質問させていただきました。いつ、どうしてユタになったのか。
「46年間ユタをやってるよ。寝たきりになってね、それからね」
なるほど「カミターリィ」でしょうか。ユタになる前、原因不明の体調不良や精神的な苦しみが起こり、それはユタにならないと治らないと聞きます。カミターリィはユタになるための通過点のようです。
また、修行はするのか聞くと
「日々の生活が修行だよ」
わー、なんて尊いお言葉でしょうか。一般人ながら、このお言葉は身にしみました。
ユタはどうやって相手を見るの?
25分ほどお話しして大満足で感謝の気持ちを述べ謝礼をお渡しすると、
「お名前は?」
ここで初めて聞かれました。思えば、予約の時ですら、名前も連絡先も聞かれませんでした。会話の間に伝えた個人情報は生まれた年のみ。手相も見ません。神様の声を聞くには、生身のわたしと直接会う、それだけで十分だったことに気づきます。
お願いして、神棚の写真とさだよ神様ご本人の写真を撮らせていただきます。どさくさに紛れて、一緒に撮ってくださいとミーハー発言。すると、ユタさまから顔をくっつけて写ってくださいました(笑)。ハッピー!
おわりに
大きな力をいただいたし、重要な歴史的文化を生身で体験するという意味でもとても深い意義がありました。どう感じるかはあなたにお任せいたします。ただもしも少しでも興味がおありなら、ぜひオススメしたい神秘体験でした。
◆さだよ神様
電話番号:0997-638-350
◆とまこ
明治大学在学中からバックパッカーとしてデビューし、卒業後は秘境ツアーコンダクターに。現在は旅作家&おしゃれパッカーとして本の執筆や講演、TV出演など多方面で活躍中。著書に『離婚して、インド』(幻冬舎文庫)、『世界の国で美しくなる!』(幻冬舎)、『台湾で朝食を 日常よ、さようなら!』(メディアパル)など既刊12冊。2018年5月14日には奄美観光大使に就任。