はじめに
百合ヶ浜、随分有名なので期待せずに行ったんです。想像が一人歩きせぬように。ところがどうしてとんでもない!! 想像なんて追いつけない“THE 美しい”がありました。不思議な光景でもあり“新世界到達“気分にもなります。きっとあなたも放心しちゃうと思います!
Text&Photo:とまこ
まずは百合ヶ浜の衝撃をみて!!!
百合ヶ浜は奇跡のビーチです。だって、とても限られた時間だけ、不思議なことに海の真ん中に出現するんですよ。美しさは天下一品! なにはともあれ、ドローン空撮ムービーをご覧ください。
絶景ビーチに溶けこむ喜び、極上すぎてとろけます
百合ヶ浜へはボートで渡るのが一般的です。到着したらやることはひとつ、百合ヶ浜と戯れる! 思う存分、稀有な絶景に溶け込んで、海やビーチを堪能してください。
個人的にはビーチが海面から顔を出すか出さないかの浅瀬になっている時間が大好き。湖のように静かな海面が、思いっきりキラキラ光って、空も雲も自分さえも、全てを写し込むんです。
上の写真は、百合ヶ浜が海の中へ消えかけている時。それまで上陸していたたくさんのボートが去っていくなか、最後の一隻に残っていただきました。
海底の砂がうねうねとした波模様になっているのが透けて見えるのも美しいでしょう……きっとうっとりがとまりません。
歩き回って、寝っ転がって、いろんな角度から海と光のコラボレーションを堪能してください。写真は波紋がきれいな海底と、それを写す海面、そして空。
嬉しいのが、ビールやジュースを売る売店ボートがやってくること。海の真ん中で、ビーチパラソルとビール! キャッチーでしょ。
百合ヶ浜が現れる奇跡の瞬間っていつ?
百合ヶ浜の場所は与論島の東側、大金久海岸の1.5kmほど沖合です。
写真中央から少し手前、海の真ん中に白く浮かび上がっているのが百合ヶ浜。その一番島よりに小さな点々が見えるでしょうか。これがボートと人々で、周辺一帯が完全に陸地になっているところです。
普段は白い砂浜が海に潜っている状態になっていて、潮位が30cmを切ると出現するそうです。その奇跡の瞬間こそが「大潮の干潮」。
ちなみに、泳ぎ好きや釣り好き、海とゆかりの深い地域に暮らす方でないと「大潮の干潮」と聞いてもピンとこないかもしれません。海によく訪れるわたしも、写真の被写体として見るようになるまで理解していなかったんですよね。ちょっと説明を付け加えます。
海には満ち引きがあるのはご存知かと思います(上の写真は満潮時、百合ヶ浜が海底に隠れています)。その主な原因は月の引力。月と面している地点は月の引力に引っ張られて海面が上がり、その反対側でも地球が自転する遠心力によって同様に潮が満ちて「満潮」と呼ばれる状態になります。なので1日に2回満ちるタイミングが生まれます。一方で、それらの影響が少ない地点の海面が下がり「干潮」になるわけです。
月が満月・新月の時のほうが引力が強いため、この満ち引きの差が大きくなり「大潮」と言われます。一方、引力が弱く差が小さい半月の頃は「小潮」と呼ばれるのです。
そんなわけで、海の底にある百合ヶ浜は、ズンと大きく潮位が下がる「大潮の干潮」のときに出現する可能性が高まるのです。
ちなみに、場所によって満ち引きの差は違うので、与論島に限らず海を訪れる際は、その場所の潮位などがわかる「潮見表」を検索するとより楽しめるかもしれません。
百合ヶ浜出現情報から見て、季節はいつがいい?
百合ヶ浜出現の基本条件、大潮の干潮の時は一年中訪れますが、かといって必ずそのとき見られるわけでもないのです。例えば、2018年の夏はほとんど出現がなかったそう。ゴールデンウィークに出現したあとは9月(わたしは9月に訪問)だったんですって。原因は主に台風。海が荒れる日が多く、海底に沈んだ百合ヶ浜の砂が少なくなっていたそうです。
砂の量が万全でも、海が荒れているとボートの出航が難しいかもしれませんし、そもそも浜も隠れているかも。波を左右する風でいえば、夏なら台風、冬なら偏西風という敵がいます。
また、冬は同じ干潮でも、夜より昼のほうが波の引き方が小さめなので、海を渡れる昼間に出現するかどうかも読みづらくなってきます。ただ、前述の通り、個人的には完璧に浜が出現したシーンより浅瀬の時の方が好みなので、それでもまぁいいような。結局、きれいで思わず写真に収めたシーンは浅瀬のものばかりなんですもの。
そんなわけで、出現情報から見て季節を決めるのはなかなか至難の技ですね。基本は運、大切なのはくじけない心!(笑)
※ボート情報は与論島の観光協会のホームページ「ヨロン島観光ガイド」の「百合ヶ浜情報」をご参考になさってください。
夏と冬の、メリットとデメリット
では、その他の夏と冬のメリット・デメリットをあげてみましょう。
夏に訪れる1番のメリットは、暑くて海気分満点で行けることでしょう。ただし、オンシーズンならでは、観光客は多いし(百合ヶ浜は出現すると島中の観光客が集まってくるのでかなりの満員ビーチに。写真は満ち始めて混雑が和らいだ頃)、航空券やホテルも高いです。まあ高くても予約できればいいのですが、この島は宿が少なめなので、早めのチェックをおすすめいたします。
一方で冬に訪れる何よりのメリットは、観光客が少なくゆったりすごせること。航空券やホテル代も節約できるかもしれません。当然ですが、冬は夏と比べると寒いです。とはいえ気温が10度を切ることは滅多にないそうで、晴れれば夏より海が澄んで見えるそう! 本土に比べたら暖かいですね。実際、昨シーズンの12・2月は奄美群島に滞在していましたが、春先晩秋くらいの感覚でかなり避寒に成功した気分でした。
おわりに
百合ヶ浜が出現するかどうかは神様次第、運次第。賭けるかどうかはあなた次第。ただ繰り返しますが海の美しさは絶句級、賭ける価値は十分です。今だ! と思う時が訪れたなら、ぜひ足を運んでいただきたいです。
◆とまこ
明治大学在学中からバックパッカーとしてデビューし、卒業後は秘境ツアーコンダクターに。現在は旅作家&おしゃれパッカーとして本の執筆や講演、TV出演など多方面で活躍中。著書に『離婚して、インド』(幻冬舎文庫)、『世界の国で美しくなる!』(幻冬舎)、『台湾で朝食を 日常よ、さようなら!』(メディアパル)など既刊12冊。2018年5月14日には奄美観光大使に就任。