奈良市「遊山ゲストハウス」の2号店となる別館(アネックス)が5月1日にオープンして約4ヶ月が経ち、目の肥えたゲストハウスフリークからも感嘆の声があがっている。宿泊者からは、「駅近でこれだけ豪華な古民家で静かに過ごせるのに、個室がドミトリー並の料金で安すぎる、これならコストパフォーマンスが高く大満足だ!」との感想が多数。
部屋は、庭を囲むように4部屋のみ。例えば、スタンダードルームが1室2名で室料7,000円から、大人気のスーペリアルームは室料1室2名で7,600円から4名で11,200円まで。2名で泊まっても1人当たり3,800円、4名で泊まれば1人2,800円となる。
「妻とあちこち旅行してた時にモロッコで中庭がある平屋の広い宿に泊り、あぁ、こういう家に住んでみたいなぁ~なんて言ってことが、実際に(宿ですが)現実になって、しかも近鉄奈良駅から徒歩4分という好立地です。」とは、オーナーの談。築約100年の平屋で建坪が200平方メートル、敷地面積は500平方メートルというから豪奢なお屋敷だ。立派な門構えで、ぐるりと立派な塀で囲まれている。
オーナーで宿主の清重拓自さんにお話を伺いました。
ー2号店のオープンおめでとうございます。別館をオープンさせた経緯を教えて下さい。
宿主の清重拓自さん(以下、敬称略)「オープンさせた経緯は2013年頃から海外のファミリーやグループのご宿泊、問い合わせが増えてきました。それに伴い8人ドミで7人が同グループで、個人旅行者が1人というような状況が増えて来て、2軒目を考えるようになりました。もちろんグループでの宿泊はありがたいのですが、遊山ゲストハウスは1人旅の人に優しい宿でありたいと思ってはじめたので、アネックスを作ることですみ分けができればと考えました。近鉄奈良駅から近い物件を探していたところ、現在のアネックスの物件を不動産屋から紹介されました。」
ー収益率が高いドミトリーをあえて採用せず、個室にこだわった特別な理由がありますか?
清重「個室のみにした理由ですが、単純にうちに来る問い合わせでまず多かったのが個室だったからということです。奈良の場合、閑散期と繁忙期の差が大きく、閑散期はドミトリーのベッドに空きが多く出るのですが、その時期でも個室は比較的埋まっており、個室のみにすることで年間を通じて稼働が安定すると考えました。 また奈良もドミトリーベッドが増え続けていますので、ドミに関してはこれ以上増やしても厳しいのではないかという読みもあります。」
ーなるほど、個室のみですとスタッフ的にも負担は軽くなりますよね?
清重「はい、個室のみですのでチェックインする回数も少なく、スタッフ(自分と妻)の負担がかなり軽減されています。 現在の最大収容人数は13人なのですが、許可申請ではドミ対応もできるように19人までの許可はもらっています。またお部屋のドアもドミトリーにも対応できる仕様になっていますので、今後の状況次第ではドミトリーを作るかもしれません。当初は4ベッドルームは個室として使ってお客さんの入りが悪ければドミトリーへ変更しようと考えていたのですが、思っていた以上に個室としての需要が多いです。」
ー遊山ゲストハウスとアネックスで、それぞれに宿泊されるお客様の客層に違う傾向はありますか?
清重「アネックスは本館と比べてバックパッカー率は低く、スーツケース引いた方が多いです。ファミリーが多いので年齢層も高いです。旅館やホテルを泊り歩いている方も多く、ゲストハウスの方とは違う感覚でこられる方が多いので、本館と比べるとお客様の要求レベルが高いです。本館ではこれくらいでもいいか、、、という事が別館では大きなマイナスになったりと、お客様の層の違いはとても勉強になっています。」
ー清重さんとしては、お客様に対し2つの宿の使い分けのご提案がありますか?
清重「遊山ゲストハウスは1人でふらっと、アネックスは家族やグループ、カップルでのんびりと、といったところでしょうか。常連さんにもそのように使い分けている方がいらっしゃいます。 」
ー両宿のホスピタリティーは過剰さがなく、それでいて不足が無い、宿泊者との距離感をお客に合わせて適度に調整してくれる。それが心地よいと評判ですが、宿のポリシーがあれば教えて下さい。
清重「ありがとうございます!まさしくおっしゃるような感じのホスピタリティーを目指しています!宿のポリシーは、本当にシンプルなんですが、安くて、安心してゆっくり寝られる場所にすることです。こんな感じでさっぱりしているので、思いっきり出会いを求めている学生さんからは『物足りない』という声もたまにいただきます(笑)。 」
ーなるほど。(笑) 差し支えなければ、アネックスの8月度稼働率を概ねで構いませんので教えて下さい。
清重「アネックスの8月の客室稼働率は95%でした。」
ーいくら8月とはいえ、奈良で95%はお見事ですね。やはり1番人気は、スーペリアルームでしょうか?2名宿泊でもお得感が高くコスパの良い値段設定だと思うのですが?
清重「はい、海外のお客様のリアクションが一番いいのがスーペリアルームですね。縁側ともなる廊下があり、昔ながらのガラス窓から前庭と池を眺めることができます。ゲストハウス価格で旅館の雰囲気を楽しめるという事で人気があります。ただ、マイナス点は大通り沿いのため、暴走族がうるさいということは稀にあります(笑)。」
ーこのスーペリアルーム8畳にはフルサイズの床の間がありますし、実際には10畳程度あり、戸を開けてお庭が見渡せる状態にすると、体感ではそれ以上の広さがありますよね。
清重「値段設定は本当に難しいですね。今は1号店である本館をご利用頂くお客様のとの属性の違いに戸惑っている部分もありまして、もう少し値段を上げてもバスタオルや歯ブラシなど最低限のアメニティーはつけてほしいというご要望もあります。現在検討中です。」
清重「アネックスは素泊まりですが、ゲストハウスの雰囲気を残しつつも、民宿と旅館のちょうど中間にあたるような宿です。広いキッチンもありますので長期滞在にも向いています。また近鉄奈良駅から徒歩4分、JR奈良駅からは徒歩8分ですので、アネックスを拠点に京都、大阪観光をして頂くのもいいかと思います。アネックスはまだまだ周知が行き届かず、日本人のお客様がまだほとんど泊られていません。今後は楽天トラベル等日本のサイトへの部屋だしも含めて、日本の方にもドンドン泊りに来ていただける環境を整備していきます!」
ー大変ご多忙な中、 インタビューにお答えいただきましてありがとうございました。
(インタビュー&文:編集長 向井通浩)
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