こんにちは。トラベルジャーナリストの橋賀秀紀です。
さて、今回のテーマはソウル発券です。
かつて幾多のマイラーを虜にしてきたこの発券地も、このところ、はたと耳にしなくなったという人は少なくないのではないでしょうか。ウォン高の継続はもちろんのこと、日本人にとって使いやすいソウル発日本国内ダブルストップオーバーの航空券の値上がり、それに加えて格安航空会社(LCC)の普及もまた、ソウル発券にとって逆風となったといえます。日本と韓国間はLCCでかつてより安く飛べることになったため、ソウル発日本国内ダブルストップオーバーの航空券を購入したところで、かつてほどの値打ちがなくなってしまいました。こうした状況の中、ソウル発券の中にも探せば面白いものが見つかります。たとえばこの航空券です。
LATAM(ラタム)航空という名前を聞いたことがあるでしょうか。これはチリの航空会社LAN航空とブラジルの航空会社TAM航空が2012年に合併してできた航空会社です。この航空会社がソウル発南米各都市行きの安い航空券を販売しているのです。訪問都市やルートにもよりますが、最安値では諸税や燃油サーチャージ込みで8万円台からとなります。出発15日前までの予約が必要で、有効期間は3日から1年、ストップオーバーは100米ドルで最大3か所まで可能です。
以下、この航空券の主な注意事項をまとめてみました。
チリの首都サンチアゴ、ペルーの首都リマをはじめとしたチリやペルーの各都市に加えて、ブラジルのサンパウロ、アルゼンチンのブエノスアイレス、パラグアイのアスンシオンなどを目的地として設定できます。面白いのはマチュピチュの最寄りの空港となるペルーのクスコなどへもほぼ同額でカバーできること。目的地をペルーとした場合、首都のリマ行きだけではなく、クスコ・フリアカ(チチカカ湖近くのプーノへの最寄りの空港)、イキトス(アマゾンの中心都市)といった地方都市へもほぼ同額でカバーしています。リマとクスコの間は一番安い航空券でも2万円以上しますから地方都市へ飛んだほうがお得ということになります。ちなみにチリ行きであれば、モアイで有名なイースター島往復も13万円程度から見つかります。イースター島への日本発のフリーツアーだと約30万円もするのでこれは超お買い得といえるでしょう。
ゴールデンウィークや8月のピーク時にも発売しています。ただし、トータルの金額はやや高くなりますが、それでも十数万円程度で収まります。
行き帰りに欧州・アメリカなどの各都市に短時間寄ることができます。航空券を検索すると滞在時間22時間といったものも出てくることがあるのでこれをうまく活用したいものです。同様にクスコ行きで、途中にリマで小休止できることもあります。
LATAM航空はワンワールドに加盟しているので、日本航空(JAL)などワンワールド加盟航空会社にマイルを積算することができます。しかも積算率は50~100%と比較的高いので、距離が長いこともあり、1度の旅行で比較的多くのマイルが貯まります。”あの”アラスカ航空もLATAM航空と提携しているのですが、LATAM便名でほかの航空会社運航便の場合、原則としてマイルは積算されません。ただし、搭乗券に運航会社の便名が記されていれば事後積算が可能なようです。
日本にはラタムの代理店がありますが発券業務を行っていないので、通常はオンライン旅行会社などで予約・発券することになります。一番簡単なのはスカイスキャナーやエクスペディアなどの航空券価格検索サイトで探すこと。筆者が愛用しているのはエクスペディアの米国サイト(https://www.expedia.com/)。日本のエクスペディアでは拾ってこないようなルートを拾ってきます。また、アメリカのサイトであることから予約後24時間はキャンセルが無料なので、「とりあえず予約」ができますが、24時間を過ぎると、予約の変更などをするのにアメリカに電話して英語で行わなければならないというのが欠点でしょうか。
スカイスキャナーやエクスペディアでの検索時の設定を「往復」ではなく「複数都市」にして、ソウル→リマ・リマ→東京などで検索してみると、ソウルからの単純往復とほぼ同額の航空券が表示されます。日本在住者なら旅行の最後を日本で終えられれば時間の節約にもなるし、そもそもソウルから日本に帰る航空券代も必要ないので非常にありがたいかぎりです。ちなみに最終目的地は東京以外にも関西・千歳・那覇などを設定することができます。
ソウルからみると、南米はほぼ地球の裏側です。そのため、行きはアメリカ経由、帰りは欧州経由といったルーティングも可能となります。その結果事実上世界一周航空券となります。また、検索の結果、行きはオーストラリア・ニュージーランド経由、帰りはアメリカ経由のいわゆるサークルパシフィックのルートを拾ってくることもあります。ルートについては、日付はもちろん出発時間帯を変えることにより変化するので、とにかく色々と試してみるとよいと思います。
筆者が2017年12月に実際に利用したのは次のようなルートです。
ソウル発→(コリアンエアー/Qクラス・50%)→マドリード(1泊)→(LATAM航空/Sクラス・100%)→サンチアゴ(1泊)→(LATAM/Sクラス・100%)→ニューヨーク(約5時間滞在)→(JAL/Sクラス・50%)→羽田着(括弧内はアラスカ航空・マイレージプランへのマイル積算率)
予約クラスはエクスペディアなどで表示されます。積算率を調べるにはWhere to credit(http://www.wheretocredit.com/)が便利でしょう、
この航空券をサプライスで予約・発券し、トータルの金額は84,600円でした。この旅行でトータル約18,235マイルが積算されました。
2018年3月にはエクスペディアの米国サイトで次のようなルートを発券しました。金額は総額787ドル(約84,000円)でした。こうしたルートを出すために、エクスペディアの検索を「複数都市」にしてソウル・リマ・シドニー・羽田・那覇を指定しました。
ソウル発→(大韓航空/Qクラス・50%)→バルセロナ(1泊)→(LATAM航空/Nクラス・100%)→リマ(1泊)→(LATAM航空/N・Vクラス・100%)→シドニー(約13時間30分滞在)→(カンタス航空/Vクラス・100%)→羽田着・羽田発→(ANA/Hクラス、2018年9月末まではANAに100%積算)→那覇着
このコースの肝はアラスカ航空で多くの予約クラスが100%積算されるLATAM航空とカンタス航空を利用する区間を意図的に増やした点です。
トータルの実飛行マイルは26,872マイル(http://www.gcmap.com/mapui?P=icn-bcn-lim-scl-akl-syd-hnd-oka)。アラスカ航空に積算されるマイル数も約23,000マイルに及びます。ゴールド会員ならなんと2倍の約46,000マイルが積算されるということになります。1マイルあたりの単価は約1.8円。しかもバイマイルとは異なり、きちんと世界一周したうえでこの単価です。さらにアラスカ航空の1マイルの価値は他社の1マイルよりもはるかに高いと考えると、日本からソウルまでに航空券代が別途かかるとしてもなお、驚異的なコストパフォーマンスといえるでしょう。
アメリカ系航空会社の上級会員からステータスマッチでアラスカ航空MVPゴールド会員(ただし申請時に名目上の住所をアメリカのアラスカ航空就航都市に置く必要がある)、そしてソウル発のラタム航空の南米行きでマイルを獲得というスキームが「飛びマイラー」として現在最強だと考えています。
アラスカ航空マイレージプランをその圧倒的なコストパフォーマンスから「アラスカ砲」とよぶのなら、このラタムの世界一周は「ラタム砲」と呼んでもいいかもしれません。そして今回この記事を書くにあたり、「ラタム砲」のルートを調べていたらこんなものに突き当りました。
ソウル→(大韓航空)→マドリード→(イベリア航空)→サンチアゴ→(LATAM航空)→イースター島→(LATAM航空)→パペーテ→(エア・タヒチ・ヌイ)→成田→(JAL)→那覇
これでトータル128,000円。これはすごいと色めきだったのですが、結果からすると複数のオンライン旅行会社どこでも発券できませんでした。しかし、この「ラタム砲」、非常に奥深く、まだまださまざまなルーティングが組めそうです。
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