最近、国産ステーションワゴンのラインアップは縮小傾向だ。ステーションワゴンは、4人が乗車でき、広い荷室を持っているが車高が低いため走行性能が高いなど魅力が多い。新車では少なくなったが中古車市場には魅力あるステーションワゴンが豊富にある。今回はそのなかでも走りが楽しい「150万円で狙える走りが楽しいステーションワゴン」を紹介する。
ステーションワゴンには多くの魅力がある。まずは車高が低いことから得られる高い走行性能だ。セダンがベースとなっているため重心が低く、SUVやミニバンよりも運転を楽しむことができる。またラゲッジスペースが広いことも魅力で、セダンより多くの荷物も積むことができる。さらにトランクと後部座席の間に仕切りがないため、リヤシートに座っても頭上空間にゆとりがある。ほかにも、全高が低いので立体駐車場に駐車できるなど多くの魅力がある。
そんな魅力あるステーションワゴンが最近減ってきている。かつて一大ブームにもなったアコードワゴンも、先代モデルから廃止されてしまった。しかし中古車市場には150万円以下でも多くのステーションワゴンが出回っている。そこで今回は、150万円以内で狙えるステーションワゴンを4台紹介する。
2代目トヨタ・アベンシス 基本性能を徹底的に磨き上げた欧州向けワゴン
トヨタ・アベンシスは、1997年に欧州市場に投入され、トヨタブランドの欧州車として、走行性能や力強いデザイン、高い静粛性などを追求したモデルだ。今回紹介する3代目(日本では2代目)は、2011年に日本で発売(先代モデルはセダンも販売されていたが、3代目はステーションワゴンのみとなる)。「アップダウンの激しい道路環境やワインディングロードでの力強く、しなやかな走り」、「プレミアム感を醸し出すスタイル」、「ゆとりの居住空間・広いラゲージスペース」を開発目標に、欧州車に負けないよう基本性能が磨かれた。当時、欧州でのフラッグシップモデルだったこともあり、全体的に落ち着いた上質感を表現している。
また、取り回しやすいミディアムサイズの全長4765mmに、大人5人がゆったりと乗ることができるゆとりの居住空間も魅力だ。また荷室幅1550mm、荷室容量543ℓと、ゴルフバッグが4セット収納できる余裕のラゲージスペースを確保している。
パワートレーンは、2.0ℓの3ZR-FAE型バルブマチックエンジンを搭載。CVTと組み合わせ、低・中速域から高速域まで、レスポンスに優れた力強い走りを実現している。「走る」「曲がる」「止まる」といった基本性能を徹底的に磨き上げるため、アウトバーンやワインディングロード、石畳路など、欧州のさまざまな路面での走行テストを繰り返したという。走りに素性の良さを感じさせるのは、そのためだ。これといってスポーティというわけではないが、ほかの日本車とは一線を画した落ち着いた乗り味を感じることができる。
平均中古価格は約85万円。
たとえば「アベンシスワゴン 3.5 2013年式、走行3万3000kmで車両本体価格88万円」というようなところが標準的な中古相場だ。
ただし、2012年と2015年に2度のマイナーチェンジが実施されており、特に2015年のモデルチェンジでは内外装のデザインが大きく変更されたので、アベンシスを検討する際は注意が必要だ。
全長×全幅×全高(㎜)=4765×1810×1480
ホイールベース(㎜)=2700
エンジン:2.0ℓ 直列4気筒DOHC
駆動:FF
最高出力:152ps(112kW)/6200rpm
最大トルク: 20.0kgm(196Nm)/4000rpm
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション:CVT
車重(kg):1470
新車価格:250万円
※2011年発売当時のスペック
ホンダ・シャトル ステーションワゴンの空間価値を最大化したパッケージングが魅力
シャトルは、5ナンバーサイズの扱いやすさや優れた燃費性能と、堂々とした存在感あふれるスタイリッシュフォルム、コンパクトワゴンとしては圧倒的な広さを誇るフラットなラゲッジスペース、上質な走りを融合したコンパクトステーションワゴンだ。先代型は「フィット シャトル」というモデル名だったが、現行型からはフィットの名前が外れた。ただし、ベースは3代目フィットとなる。
フィットベースを活かしつつ、ステーションワゴンの空間価値を最大化したパッケージングは、シャトルの大きなポイントだ。荷室容量は、5名乗車時で5ナンバーサイズとしては驚きの570ℓを確保(先に紹介したアベンシスが543ℓ)。後席を倒した2名乗車時には、荷室長は最大184cm、荷室容量は最大1,141ℓまで拡大する。またリヤゲートの開口部が広く、フラットな床面に加え、リア開口部は大きく低くすることで荷物の積み降ろしがしやすく、使い勝手も良好だ。
パワートレーンは、ガソリンモデルとハイブリッドモデルの2種類が選べる。ハイブリッドモデルには、1.5ℓ DOHC i-VTECエンジンに高出力モーター内蔵7速DCT、リチウムイオンバッテリーとパワードライブユニットを一体化したIPUを組み合わせたSPORT HYBRID i-DCDを採用。低速ではEVのような静かでズムーズなモーター走行を楽しめ、アクセルをぐっと踏み込めば、エンジンがかかり力強く加速する。最近のハイブリッドモデルではトランスミッションにCVTが採用されることが多いが、シャトルはDCTなので変速もキビキビとしていてダイレクト感がある。エンジン音を聞いていても楽しい。
平均中古価格は約141万円。
たとえば「シャトル 1.5 ハイブリッドX 2017年式、走行3万3000kmで車両本体価格139万円」というようなものがある。
シャトルはいまも現行型だが、ガソリンモデルでもナビなどをつけていくと優に200万円を超えてしまう。中古では走行距離が少ないハイブリッドモデルでも150万円で狙えるため、シャトルの購入を考えている方は、中古も検討してみてはいかがだろうか。
全長×全幅×全高(㎜)=4400×1695×1545
ホイールベース(㎜)=2530
エンジン:1.5ℓ 直列4気筒DOHC16バルブ+モーター
駆動:FF
エンジン最高出力:110ps(81kW)/6000rpm(システム最高出力:137ps)
エンジン最大トルク:13.7kg・m(134Nm)/5000rpm(システム最大トルク:170Nm)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
トランスミッション:7DCT
車重(kg):1220
新車価格:219万円
※2015年発売当時のスペック
3代目マツダ・アテンザワゴン デザインが美しいGTワゴン
今回紹介する3代目マツダ・アテンザワゴンは、2012年12月に発売。いまでは当たり前になったマツダのデザインテーマ「魂動(こどう)-Soul of Motion」が初代CX-5につづき採用された、Dセグメント・ステーションワゴンだ。現在は、モデル名が変更され「MAZDA6 ワゴン」として販売されている。
特にこの3代目は、デザインにおいて世界で非常に評価されており、2013年には「2013ワールドカーデザインオブザイヤー」のベスト3にランクインした。ちなみに残りの2台は、ジャガーFタイプ、アストンマーチン・ヴァンキッシュだ。
パワートレーンは2.0ℓ、2.5ℓの2種類のガソリンエンジンと、2.2ℓのディーゼンルターボエンジンの合計3種類(MAZDA6には2.5ℓガソリンターボエンジンも設定されている)。トランスミッションは基本的に6ATだが、ディーゼルモデルのみMTの設定もある。
基本的に2.0ℓ NAエンジンでも力不足を感じることはないが、おすすめは人気のディーゼルモデル。4.0ℓ V8NAエンジン並みの最大トルク(420Nm)を発揮し、高速走行でも静粛性が高い。また2016年の改良では、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを緻密に変化させることで、横方向と前後方向の加速度を統合的にコントロールする「G-Vectoring Control」を採用。操縦安定性を向上させている。
平均中古価格は約142万円。
マイナーチェンジが2015年と2018年の2度行なわれており、中古で150万円以内となると前期型と中期型が狙える。
たとえば中期型のディーゼルモデルだと「アテンザワゴン 2016年式、走行4万5000kmで車両本体価格139万円」というような中古車がある。
3代目アテンザは、美しいデザインとディーゼルのトルクフルな走りを楽しめるGTワゴンだ。
全長×全幅×全高(㎜)=4800×1840×1480
ホイールベース(㎜)=2750
エンジン:2.2ℓ 直列4気筒DOHC16バルブターボ (ディーゼル)
駆動:FF
最高出力:175ps(129kW)/4500rpm
最大トルク: 42.8kg・m(420Nm)/2000rpm
使用燃料:軽油
トランスミッション:6AT
車重(kg):1530
新車価格:290万円
※2012年発売当時のスペック
3代目フォルクスワーゲン・ゴルフ ヴァリアント 控えめだが堅実な走り味がおすすめ
フォルクスワーゲン・ゴルフ ヴァリアントは、ドイツ車を代表するCセグメントハッチバック「ゴルフ」のステーションワゴンモデル。今回紹介する3代目ゴルフ ヴァリアントは、7代目ゴルフをベースとしており、2014年1月に日本で発売された。エクステリアデザインは、堅実でシンプルなものが採用され、何年乗っても飽きがこず、長く付き合えるだろう。インテリアは、インパネ周りを中心に基本的にハッチバックの「ゴルフ7」と共通のものが採用されている。また、前モデルと比べて100ℓ多い、605ℓの最大規模の荷室容量を誇るラゲッジスペースは、大人4人で旅行をするにも充分なスペースだ。
発売当初のパワートレーンは1.2ℓと1.4ℓのガソリンターボ(TSI)エンジンが用意された。また2019年には、2.0ℓのガソリンターボ(TDI)エンジンが追加された。バランスを考えるとおすすめは、1.4ℓガソリンターボエンジンだ。7速DSG(DCT)との組み合わせで、小刻みよく加速し、運転が楽しい。パワーも最高出力140psと驚くほど高出力ではないのだが、過不足なく日常使いをするならこのくらいがベストだ。ただ一点注意が必要なのは、低速での走行はDSGの変速ショックが大きく、振動を感じるところだ。この乗り味については好き嫌いが分かれるため、検討をする際は試乗してみよう。
平均中古価格は約167万円と150万円を超えてしまうが、前期型なら150万円以内がほとんどだ。
たとえば前期型の1.4ℓモデルでも「ゴルフヴァリアント TSI ハイライン 2015年式、走行3万4000kmで車両本体価格117万円」というようなものがある。
ゴルフヴァリアントは、サイズもエンジンもちょうどいいベストなワゴンだ。
全長×全幅×全高(㎜)=4575×1800×11485
ホイールベース(㎜)=2635
エンジン:1.4ℓ 直列4気筒DOHC16バルブICターボ
駆動:FF
最高出力:140ps(103kW)/4500~6000rpm
最大トルク: 25.5kgm(250Nm)/1500~3500rpm
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
トランスミッション:7DCT
車重(kg):1380
新車価格:322万5000円
※2014年発売当時のスペック
番外編:後席の乗り心地にこだわらないなら、トヨタ・サクシード/プロボックスもあり?
リヤシートの乗り心地にこだわらない方には、トヨタ・サクシード/プロボックスもおすすめだ。営業バンは大量の荷物を積んで大きな荷重がかかることを想定して設計されているため、脚周りは硬めのセッティングになっている。タイヤも硬い割にエアボリュームがあるため、粘り強いグリップ力を発揮する。足まわりもタイヤもスポーツモデルほどの限界の高さこそありませんが、意外と「攻められる」のだ。
また、エンジンは低速トルク重視型。さらにミッションのギヤ比は基本ローギヤードなので、軽い車重(プロボックスは1160kg)と相まって、空荷では活発な加速性能が発揮できる。
このように、営業バンはそこそこ「走り」が良いのだ。
見た目や後席にこだわらないならトヨタ・サクシード/プロボックスあたりもショッピングリストに入れて見てはいかがだろうか。
今回は150万円で狙えるステーションワゴンを紹介した。150万円といえどもそれぞれの性格はさまざまだ。ぜひ好みにあった楽しいステーションワゴンを見つけていただきたい。