「パワー・オブ・チョイス」をブランドコンセプトに掲げるプジョー。「ガソリン」「ディーゼル」「電気(EVやハイブリッドなど)」を用意し、パワートレインはユーザーが自由に選ぶ。そんななか日本に上陸した3008ハイブリッド4。外部充電を可能としたプラグインハイブリッドである。そこで気になるのはやっぱりリアルな燃費。今回は同じ背高MPV系でボディサイズが近似しつつ最新のディーゼルを搭載したリフターも連れ出し、東京と富山を往復して1000kmの燃費テストを行った。燃費結果そのものはもちろん、道路状況による燃費傾向の違いなどもレポートする。
PHOTO●平野 陽(Hirano Akio)
フランス車の実力を知りたければ長距離を走るべし
プジョー初……どころか、我が国に正規輸入されているフランス車としても初めてのハイブリッドとなるプジョー3008 HYBRID4がいよいよ日本の道を走り始めた。
パワー・オブ・チョイスをブランドコンセプトに掲げ、ガソリンやディーゼルに加え、e-208やe-2008といったピュアEVの導入も積極的に進めてきたプジョーだが、今度は3008 HYBRID4、そして508 HYBRIDとハイブリッド攻勢を仕掛けてきたのだ。
今回は読者のみなさまの感心も高いであろう3008 HYBRID4の実燃費を計るべく、東京と富山を往復するロングツーリングを敢行した。都市部における燃費に有利とされるハイブリッドだが、高速走行が主体となる長距離ドライブでは果たしてどうなるのか?
そしてそんなテーマともなれば、高速燃費に優れるとされるディーゼルとの差も気になるところ。そこでボディサイズが3008に限りなく近いリフターを連れ出し、燃費そのものはもちろん、その傾向の違いなども比べてみることにした。
最初に両モデルのパワートレインの概要を簡単に説明しよう。
3008 HYBRID4は直列4気筒1.6Lガソリンターボを搭載。最高出力は200ps、最大トルクは300Nmと、エンジン単体でも非常にパワフルで、これだけ見ても3008 HYBRID4がエコだけを狙ったハイブリッドではなく、高い運動パフォーマンスを秘めたプレミアムSUVとしてキャラクターづけされていることが伺える。トランスミッションは8速ATだ。
これに最高出力110ps、最大トルク320Nmのフロントモーター、最高出力83ps、最大トルク166Nmのリヤモーターを組み合わせ、必要に応じて4輪を駆動する。
一方のリフターは、最高出力130ps、最大トルク300Nmを発生する直列4気筒1.5Lディーゼルターボを搭載する。こちらもトランスミッションは8速ATだ。
プジョー3008 HYBRID4
全長×全幅×全高:4450mm×1840mm×1630mm
ホイールベース:2675mm
車両重量:1850kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1598cc
ボア×ストローク:77.0mm×85.8mm
圧縮比:10.5
最高出力:147kW(200ps)/6000pm
最大トルク:300Nm/3000rpm
モーター最高出力:Ⓕ81kW(110ps)/2500pm Ⓡ83kW(112ps)/14000pm
モーター最大トルク:Ⓕ320Nm/500-2500rpm Ⓡ166Nm/0-4760rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:F・AWD
サスペンション:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡマルチリンク
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク容量:43ℓ
燃費:WLTCモード 15.3km/ℓ
市街地モード11.5km/ℓ
郊外モード:16.7km/ℓ
高速道路:16.7km/ℓ
EV走行距離:64km
タイヤサイズ:225/55R18
車両本体価格:565万円
まずは東京の練馬インターチェンジから関越自動車道に入る。3008 HYBRID4の日本仕様には、電池残量を維持したり増やしたりするセーブモードやチャージモードが備わらない。そして急速充電にも対応していないため、スタート時点でのバッテリー残量はほぼゼロであった。
走行ペースは制限速度前後を基本として、ACC(アダプティブクルーズコントロール)も積極的に使用した。
藤岡ジャンクションから上信越自動車道に入り、北上を続けて上越ジャンクションから北陸自動車道へ。富山西インターチェンジで下りて最初に燃費チェックとなる。
ここまで409kmを走っての平均燃費は3008 HYBRID4が16.8km/L、リフターが19.2km/Lとなった。さすが高速燃費を得意とするディーゼルの面目躍如といったところだが、純ガソリンエンジン搭載車(3008GT)と比べて360kgも重くなっている割には3008 HYBRID4も健闘したと言えそうだ。何しろスタート時点でのバッテリー残量はほぼゼロで、ハイブリッドのアドバンテージは限りなく小さかったのだから。
プジョー・リフターGT
全長×全幅×全高:4405mm×1850mm×1880mm
ホイールベース:2785mm
車両重量:1650kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
排気量:1498cc
ボア×ストローク:75.0mm×84.8mm
圧縮比:16.4
最高出力:96kW(130ps)/3750pm
最大トルク:300Nm/1750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:FF
サスペンション:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡトーションビーム
燃料:経由
燃料タンク容量:50ℓ
燃費:WLTCモード 18.2km/ℓ
市街地モード15.7km/ℓ
郊外モード:17.8km/ℓ
高速道路:19.8km/ℓ
タイヤサイズ:215/60R17
車両本体価格:361万円
ここからは「おわら風の盆」で有名な越中八尾や氷見漁港およびその周辺の海岸などでニューモデル速報「プジョーのすべて」用の撮影をこなす。電池残量の尽きている3008 HYBRID4だが、実際にはある程度の電力をキープしているようで、発進時にはEV状態で転がり出し、減速時にはスムーズにエンジンが停止して回生を行う。いわゆるフルハイブリッドとして走るのだ。
そんなこんなで市街地や郊外を85kmほど走行して本日の宿に到着する。
高速道路を下りてからホテルまでの一般道区間の平均燃費は3008 HYBRID4が14.6km/L、リフターが17.0km/Lと、奇しくも両者とも高速ステージに対して2.2km/Lのマイナスであった。自動車専門誌の撮影というものは燃費に厳しく、何気なく停めているように見える写真でも、実際には微調整のために動かしては止め、動かしては止めを繰り返している。走行シーンの撮影時には、カメラマンの指示に即座に応えられるよう低めのギヤに固定することも少なくない。そうこうしているうちに平均燃費表示の数値がみるみる悪化していくのが常なのだ。そんな事情を鑑みれば、3008 HYBRID4もリフターも立派な燃費性能を発揮してくれたと言っていい。
今回はEV普通充電器を備えたビジネスホテルを選んでおり、翌朝は3008 HYBRID4はバッテリー満タンの状態でのスタートとなった。この時点でメーター内に表示されたEV走行距離は38kmであった。
この日はまず「日本のベニス」との異名を持つ内川地区、古き佳き港町の風情を残す岩瀬地区などで撮影を行う。そして走行距離が40kmに達した時点で3008 HYBRID4のバッテリーが尽きてエンジンが始動した。
滑川インターチェンジまでの117kmを走行し終え、3008 HYBRID4は64.1km/Lという桁外れの燃費をマークする。もちろんこれは、このステージの全行程の1/3をEV走行でまかなえたからだ。
一方のリフターは18.7km/Lであった。高速燃費ばかりが注目されがちだが、さりげなく市街地燃費も優れているではないか。
滑川インターチェンジからは往路の折り返しで、北陸自動車道、上信越自動車道、関越自動車道を経て東京へと帰着した。下り坂が続く区間では3008 HYBRID4はエンジンが停止したEV状態となり、コースティング走行とエネルギー回生によって燃費が伸びていく。
練馬インターチェンジまでの382kmを走り切り、復路の高速区間の平均燃費は3008 HYBRID4が17.0km/L、リフターが19.2km/Lと、往路とほぼ同じであった。
全行程993kmを走り終えての総合燃費は3008 HYBRID4が18.2km/L、リフターが18.9km/Lである。両者ともに甲乙つけがたい結果となったが、総合燃費は全行程に占める高速道路の割合によって簡単に変わるため、あくまで参考程度と認識していただきたい。
こうして約1000kmに渡って走ってみると、もちろん3008 HYBRID4の一般道における燃費の良さが顕著に表れたわけだが、ディーゼルのアドバンテージも依然として大きい、というのも全域に渡って見て取れた。
そしてもちろん3008 HYBRID4とリフターの魅力は燃費だけにあるわけではない。ガソリンエンジンと電気モーターの緻密でシームレスな制御がもたらす上質感、そしてディーゼルならではの力強さもまた、この2台を選ぶ大きな理由になりうる。そのあたりについてはニューモデル速報「プジョーのすべて」に詳しいが、ドライビングプレジャー、快適性、そして燃費と、2台の最新プジョーはどこをとっても優れたグランドツアラーであることは間違いない。