ついに、VWゴルフ8が日本デビューを果たした。デジタル化時代のゴルフがどうあるべきか? ゴルフ7からどこがどう進化したか? 価格は1.0ℓ直3ターボのeTSI Active Basicが291万6000円、1.5ℓ直4ターボのeTSI Styleが370万5000円だ。ディーゼルエンジン搭載モデル、そしてGTIは追って導入されるという。まずは、ActiveとStyleに試乗した。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
新型ゴルフは、1.0ℓターボと1.5ℓターボの2本だてでスタート
フォルクスワーゲン(VW)ゴルフがモデルチェンジして第8世代になった。プラットフォームは第7世代、いわゆるゴルフ7から導入したMQBを継続採用する。日本に導入されるガソリンエンジンは2種類で、排気量が小さなほうのリヤサスペンションはトレーリングアーム(トーションビームアクスル=TBA)式を採用。排気量が大きいほうは4リンク式を採用する点も変わらない。土台や骨格はゴルフ7と同じ。エンジンはアップデートし、コックピットはデジタル化を進め、ヘッドライトは全車LEDにし、最新の運転支援システムを装備したのがゴルフ8だ。
新型VWゴルフ
1.0ℓ直3DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
eTSI Active Basic:291万6000円
e-TSI Active:312万5000円
1.5ℓ直4DOHCターボ+48Vマイルドハイブリッド
eTSI Style:370万5000円
eTSI R-Line:375万5000円
Cセグメントに属するハッチバック車が大型化するなか、ゴルフ8は扱いやすいサイズを守っている。全長はゴルフ7に対して30mm伸びたが、それでも4300mmを切る4295mmだ。全幅は10mmマイナスの1790mmとなっているが、意図して幅を狭くしたというより、国交省に届け出る際の誤差範囲だという。運転席に座った際に感じる印象はゴルフ7と変わらない。
気になるのはホイールベースで、ゴルフ7より15mm短い2620mmになっている。これは意図したものだ。ゴルフ7はハッチバックとヴァリアントでホイールベースを共有していたが、ゴルフ8ではそれぞれ最適なホイールベースを与えることにしたのだという。ハッチバックはホイールベースを短くしたいっぽう、今後国内に導入されるヴァリアントはユーティリティ向上のために延長した。後席に座ってみたが感覚的な変化はそれほど感じず、相変わらず充分に実用的なスペースを確保している。
運転席に腰を下ろした際に目に入る景色はゴルフ7と同じだ。左右のAピラーとルーフ、ダッシュボード上辺で切り取られた前方の景色、もっといえば左ドラミラー方向の視界はゴルフ7と変わらない。乗り換えてもまったく違和感はなく、住み慣れた我が家の心地良さである(筆者はゴルフ6、7と乗り継いだ)。では新鮮味がないかというとそんなことはなく、表示系と操作系は大きくアップデートされており、新鮮だ。
古い家屋をいったん取り壊して新築したのではなく、元の家屋を生かしてリフォームし、住み心地を良くしたのがゴルフ8という印象だ。使い古した家電をまとめて処分し、最新のデジタル家電を一式そろえたような。ゴルフ7ではセンターのディスプレイが空調吹き出し口の下にあったが、ゴルフ8では上下関係が逆転してディスプレイ(10インチ・タッチスクリーン)が見やすい位置になったのは、うれしい変化点である。
機械的な接続を持たないバイ・ワイヤー式になったシフトレバーはゴルフ7に比べてだいぶ小ぶりになった。ドライブに入れるには手前、リバースに入れるなら奥にちょっと倒せばよく、シンプルで使いやすい。エアコンやオーディオの操作は最近流行りのタッチスライダー式で、スマホ時代のインターフェイスに合わせたものだ。エアコンは全車「オート」。ベースグレード以外は3ゾーンオートエアコンなので、前席左右に加え、後席も独立して温度調整が可能になった。USBソケットはフロントの2個に加え、リヤにも2個設置。前席シートバックにスマホ入れに適したポケットを設けるなど、デジタルガジェット系のユーティリティは最新の国産車に負けていない。
ゴルフ8はヘッドライトが全車LEDになっただけでなく、テールライトもLEDになり、ルームランプにもLEDを使用。装備のアップデートが一気に進んだいっぽうで、ダッシュボードやドアトリムは質感的にも意匠面でもゴルフ7からの劇的な変化は感じられない。ゆえに、昼間の雰囲気はゴルフらしい(VWらしい)といえばらしいが、地味に感じる人がいるかもしれない。夜の雰囲気は未確認だが、ムードは大きく変わっていそうだ。
2種類のパワートレーン
パワートレーンは48Vハイブリッド化したのが最大のニュースだ。ゴルフ7のガソリンエンジンは1.2ℓ直4ターボ(77kW/175Nm)と1.4ℓ直4ターボ(103kW/250Nm)の2種類だった。ゴルフ8は1.0ℓ3気筒ターボ(81kW/200Nm)と1.5ℓ直4ターボ(110kW/250Nm)の2種類である(カッコ内は最高出力/最大トルク)。両エンジンともに、48Vハイブリッドシステムを組み合わせる。ベルトスタータージェネレーター(BSG、9.4kW/62Nm)でエンジン始動と減速時のエネルギー回生、出力のアシストを行なう仕組みだ。
eTSI Active
全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1310kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
エンジン形式:直列3気筒DOHCターボ
エンジン型式:EA211型
排気量:999cc
ボア×ストローク:74.5mm×76.4mm
圧縮比:11.4
最高出力:110ps(81kW)/5500rpm
最大トルク:200Nm/2000-3000rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:47ℓ
モーター:4450型
最高出力:13ps(9.4kW)
最大トルク:62Nm
駆動用バッテリー:44V
トランスミッション:7速DCT
WLTCモード燃費:18.6km/ℓ
市街地モード 14.7km/ℓ
郊外モード 19.1km/ℓ
高速道路モード 20.6km/ℓ
車両価格○312万5000円
BSGによるアシストの効果は、非力な(といっても、排気量が小さくなったにもかかわらず、最高出力/最大トルクは向上している)1.0ℓ3気筒ターボ搭載車のほうが感じやすい。ゴルフ7の1.2ℓ版の場合、高速道路の料金所から本線に合流するようなシーンでは、「もうちょっと力強さがあってもいいかな」と感じることがあった。ゴルフ8の1.0ℓ版はドライバーにストレスを感じさせることなく、イメージどおりに加速して本線に合流する。一般道を走っているときに、物足りなさを感じることもない。
ただし、とくに低速(低回転)域で、3気筒エンジンに特有のゴロゴロとした音と振動が目立つ。これが気になるか気にならないかで、1.0ℓエンジン搭載車に対する評価は変わるだろう。1.5ℓ4気筒版は振動がよく抑えられておりスムーズで、力に余裕がある。高速/市街地を問わず走行中は、アクセルペダルをオフにするとエンジンを停止し、無駄な燃料の消費を抑える。アクセルを踏み込むと即座にエンジンを再始動させるが、停止も始動もスムーズなため、エンジン回転計を見ていなければわからないほどだ。ハイブリッドシステム非搭載だったゴルフ7の実用燃費は相当に良かったが、48Vマイルドハイブリッドシステムを得たゴルフ8は相当に期待できそうだ。
VWはゴルフのグレード体系を見直した。ゴルフ7は下位から上位に向けて「Trendline」「Comfortline」「Highline」を設定し、トレンドラインとコンフォートラインは1.2ℓエンジン、ハイラインは1.4ℓエンジンを搭載した。エンジンに差があるだけでなく、装備にも差があり、はっきり言って下位グレードは見劣りがした。「いまどき軽自動車ですらLEDヘッドライトを装備しているのに、輸入車なのにハロゲンライト?」というような。下位グレードのエアコンはマニュアルだし、運転支援系の装備はないに等しかった。
ゴルフ8はベーシックグレードでも装備を充実させた。「Active Basic」と「Active」は1.0ℓエンジンを搭載。「Style」とスポーティな位置づけの「R-Line」は1.5ℓエンジンを搭載する。前述したように、LEDヘッドライトは全車標準だ。オートエアコンも全車標準(Active Basic以外は3ゾーン)。同一車線内運転支援システムのTravel Assistなど、運転支援システムはグレードによる差がほとんどない。デジタルメーターと10インチのインフォテインメントシステム(ナビシステムはオプション設定)も全車標準装備だ。
ゴルフ7は「できれば上位グレードを選びたい」と思わせるようなグレード体系だったが、ゴルフ8は「ベースグレードで充分」と思わせるグレード体系になっている(動力性能も含めて)。付加価値を求めるならひとつ上、もっと快適に過ごしたいなら2つ上、というような選び方がいいだろう。Bセグメントの国産車でも欲しいオプションを付けていくと300万円台になるのが珍しくない昨今、Active Basicの291万6000円は魅力的な価格設定だ。
eTSI Style
全長×全幅×全高:4295mm×1790mm×1475mm
ホイールベース:2620mm
車重:1360kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 R4リンク式
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
エンジン型式:EA211evo型
排気量:1497cc
ボア×ストローク:74.5mm×85.9mm
圧縮比:10.5
最高出力:150ps(110kW)/5000-6000rpm
最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
過給機:ターボチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:51ℓ
モーター:4450型
最高出力:13ps(9.4kW)
最大トルク:62Nm
駆動用バッテリー:44V
トランスミッション:7速DCT
WLTCモード燃費:17.3km/ℓ
市街地モード 12.8km/ℓ
郊外モード 18.0km/ℓ
高速道路モード 19.8km/ℓ
車両価格○370万5000円