マツダがSKYACTIV-Xのアップデートを行なったのが、2020年11月。「SPRIT 1.1」と称するバージョンに進化し、出力も180ps→190ps、トルクも225Nm→240Nmへアップしている。SPIRIT1.1のXを搭載するMAZDA3の燃費はどのくらいか? ロングドライブに連れ出した。満タンで何km走れるのだろうか?
SKYACTIV-X SPRIT1.1で700km一気乗り
SKYACTIV-Xは、SPCCIと呼ぶ革新的な火花点火制御圧縮着火という画期的な燃焼方法を実現した現代世界最先端のエンジンである。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りというSKYACTIV-XがSPIRIT1.1版へ進化した。ハードウェアの変更ではなくソフトウェアのアップデートによって性能アップを果たしたことが話題になった。このアップデート版のSKYACTIV-Xを搭載したMAZDA3に試乗した。
試乗車はMAZDA3 FASTBACK X L Package(AWD) 車両価格○361万6963円である。赤レザーを使ったX Burgundy Selectionを除いて実質的にMAZDA3の最上級仕様だ。
試乗車のモード燃費は
WLTCモード燃費:16.2km/ℓ
市街地モード 12.6km/ℓ
郊外モード 16.7km/ℓ
高速道路モード 18.1km/ℓ
である。
マツダR&Dセンター横浜で借りだして、数日間通勤、郊外への往復120km程度のドライブなどで406km走った燃費は12.8km/ℓ(高速道路は3割ほど)だった。
さて、ICE(内燃機関)を積んだクルマがEVに対して持つ大きなアドバンテージは1タンクで走れる距離、つまり「足の長さ」だ。SKYACTIV-X搭載のMAZDA3の足の長さを確認するために、ロングドライブに連れ出してみた。
WLTCモードが16.2km/ℓでガソリンタンク容量が48ℓ(FFモデルは51ℓ)ということは計算上777.6km走れるということだ。
ちなみに、MAZDA3は21年4月に商品改良を受けてSKYACTIV-Xエンジン搭載モデルのモード燃費が次のようになった。
SKYACTIV-X AWD(6MT):17.1km/ℓ
SKYACTIV-X AWD(6AT):16.6km/ℓ
SKYACTIV-X FF(6MT):17.9km/ℓ
SKYACTIV-X FF(6AT):17.3km/ℓ
・AWDはFFより4%ほど燃費が悪化する。
・ATはMTより3%ほど燃費が悪化する
結果として、Xでもっとも燃費のよいFF(6MT)よりAT/AWDモデルは7%ほど燃費では不利になる。
という事前情報を頭にいれて、緊急事態宣言が発出される前の都内を早朝に出発した。目指すは日本海(新潟)である。片道350km程度だ。
まずは給油。SKYACTIV-Xはレギュラーにも対応するが、ハイオクを入れた方がいい。まったくフィーリングが違うから。
満タンにした時点でメーター内に示された航続可能距離は530kmだった。燃料タンクは48ℓだから直近の燃費が11.0km/ℓだったことになる。530kmでは日本海を見て都内に戻ってこられない!
さて、マツダのATは、SKYACTIV-Driveと呼ばれる6速である。変速タイミングもいいし、いたずらに多段化する必要はそうは感じない。ちなみにMAZDA3 SKYACTIV-X AWD 6ATの各速度の巡航エンジン回転数はいずれもメーター読みで
100km/h巡航で2150rpm
110km/h巡航で2350rpm
120km/h巡航で2500rpmほど
である。
WLTCモード通りの燃費を達成した満足……というわけにはいかない。前述したとおり、SKYACTIV-Xの6AT/AWDは6MT/FFよりも7%ほど燃費では不利だ。ということは、6MT/FFだったら、17.5km/ℓになったはずだ。走りにはまったく不満はない。が、もう少し燃費が良いといい……と思った。そしたら、1タンクで780kmではなく、もっと足が長くなる。
高速移動が多い欧州でMAZDA3はどうなっているのか、ちょっと気になって調べてみた。
驚いたのは、欧州仕様も圧縮比が16.3から15.0(つまり日本仕様と同じ)へ下がっていたことだ。
■欧州仕様は2021年モデルで
+6PS/16Nm出力アップで
最高出力:186ps(137kW)/6000rpm
最大トルク:240Nm/4000rpm
燃費は、0.5ℓ/100km向上したという。
MAZDA3 FB SKYACTIV-X AWD(6AT)
WLTP:Combined 6.5ℓ/100km(15.38km/ℓ)
Extra High 6.8ℓ/100km(14.71km/ℓ)
High 5.7ℓ/100km(17.54km/ℓ)
Medium 6.3ℓ/100km(15.87km/ℓ)
Low 7.9ℓ/100km(12.66km/ℓ)
タイヤサイズもトランスミッションのギヤ比も最終減速比も日本仕様と同じ。だから、130km/hのExtra High(日本のWLTCモードでは採用していない)用になにか特別なことがしてあるわけではないのだ。
ライバルとなる、たとえば
■マツダMAZDA3 SKYACTIV-X(338万463円)が2.0ℓ直4スーパーチャージャー(190ps/240Nm)搭載のFFモデル(6AT)でWLTCモード燃費(国内・以下同))が17.3km/ℓ
■メルセデス・ベンツAクラス A180スタイル(406万円)が、1.3ℓ直4ターボ(136ps/200Nm)搭載のFFモデル(7速DCT)でWLTCモード燃費が15.2km/ℓ
■BMW1シリーズ 118iプレイ(378万円)が1.5ℓ直3ターボ(140ps/220Nm)搭載のFFモデル(7速DCT)でWLTCモード燃費が13.7km/ℓ
であるから、同価格(より安い)のMAZDA3 SKYACTIV-Xエンジン搭載モデルは、パワー/トルクも燃費も勝っている。SKYACTIV-Xが「走りも燃費も」狙ったエンジンだという意識が強すぎて、どうしても燃費に対してキビシイ見方を見てしまうのだが、やはりSKYACTIV-Xは優秀なのだ。
今回の試乗車はAWDモデルだった。悪条件になればなるほど、AWDの良さが光るわけだが、たとえば高速道路への進入・退出時の回り込んだループ状の道路でアクセルをジワッと開けるようなシチュエーションでの安心感と気持ちの良さはAWDならではだ。
あらためてMAZDA3 SKYACTIV-Xモデルと少し長く付き合った。本当にいいクルマである。Cセグハッチバックを選ぶなら、第一候補にMAZDA3を推す。MAZDA3のなかでなにを選ぶか? 個人的な見解を言わせてもらえば
SKYACTIV-X搭載のFFモデル X L Package:車両価格338万463円
か
SKYACTIV-G1.5搭載のFFモデル 15S Touring:車両価格231万5989円
で迷う。トランスミッションはMTでもATでも同価格。ATもMTも6速だから、MTを選ぶ。
予算に余裕があれば、やはりSKYACTIV-Xに乗りたい。だって、現在世界生先端をゆく内燃機関なのだから。
MAZDA3 FASTBACK X L Package(AWD)
全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm
ホイールベース:2725mm
車重:1510kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rトーションビーム式
エンジン形式:直列4気筒DOHC
エンジン型式:HF-VPH型
排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm
圧縮比:15.0
最高出力:190ps(140kW)/6000rpm
最大トルク:240Nm/4500rpm
過給機:スーパーチャージャー
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:プレミアム
燃料タンク容量:48ℓ
モーター:MK型交流同期モーター
最高出力:6.5ps(4.8kW)/1000rpm
最大トルク:61Nm/100rpm
WLTCモード燃費:16.2km/ℓ
市街地モード 12.6km/ℓ
郊外モード 16.7km/ℓ
高速道路モード 18.1km/ℓ
車両価格○361万6963円
試乗車はOP(スーパーUVカットガラスフロントドア+IRカットガラス+
CD/DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー4万9500円/360°ビューモニター+ドライバーモニタリング8万6880円)込みで375万3343円