CBR650Rは2019年3月15日から発売。今回の試乗車は2021年1月18日から新発売されたマイナーチェンジモデルだ。赤と黒の2タイプを揃えるカラーバリエーション・パターンは同じだが、カラーリングが一新された他、一部デザインも変更。フロントフォークも熟成された。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社 ホンダモーターサイクルジャパン
ホンダ・CBR650R.......1,089,000円(グランプリレッド)
CBR650Rは、CBR650Fをベースに開発されて2年前にデビュー。車名末尾がF~Rへ変更された事からも推察できる通り、そのキャラクターはスポーツ性とその楽しさを味わう度合いを増して仕上げられ、その主な変更点はスポーティなライディングポジションに表現されたと言う。
また、スチールのダイヤモンドフレームを始め細部まで全体が見直され、スタイリングの一新に加えて、剛性バランスの見直しや、軽量化とマスの集中化が図られる等、多くの部分が一新されたのである。
リヤエンドの短いスッキリしたシート。新デザインの軽量アルミキャストホイールや倒立タイプのフロントフォークを採用。搭載された水冷4気筒のツインカム16バルブエンジンも扱いやすい出力特性に加えて、アシストスリッパークラッチやHSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)の搭載。そして灯火類のLED化も合わせて実現されての登場だった。
国内ではとかくニッチなマーケットだった中間排気量だけに、年間の販売計画台数は600台だったが、ネイキッドのCB650Rとエンジンや車体等、主だった使用部品を共用してリリース。
ユーザーにとっては、ミドルクラスのホンダ4気筒車に選択肢を与えてくれた点が嬉しいところ。現在このクラスの4気筒エンジン搭載車という意味で、国産車に真っ向ライバルとなり得るモデルは存在しないのである。
前置きが長くなってしまったが、今回の試乗車は、カラーリングや一部外観デザインのリファインとフロントフォークの仕様変更でマイナーチェンジされた最新モデル。本体価格は据え置かれ、国内の販売計画台数は2倍の1200台となって登場した。
ニッチマーケットのこのクラスもジワジワと人気が膨らみつつあるのかもしれない。実際、国内で乗るバイクとして、道路事情に上手くマッチするハイパフォーマンスは、多くのユーザーに満足感を与えるであろう事は間違いない。
一見すると、デカールデザインを一新したカラーリング変更モデルに思える。しかしじっくりと観察すると、結構多くの部分に手が入れられている。
すぐに気付くのはシートカウルとリヤフェンダーデザインの一新。サイドカウルは厚みの増した印象を与え、フェンダーも仕上げは上質に感じられる。
デカールデザインの変更は、全体的に精悍さを増しシェイプされた感じ。タンクもエラの張り具合がリファインされているように見える。アッパーカウルも細かな手直しが施され、左右につり上がったヘッドランプのトップエンド・デザインも変更された。
エンジン・クランクケースの両サイドカバーも一新。剛性面の向上も図られているように見える。
そしてフロントフォークは、SHOWA製の倒立式が採用されているが、初期の作動特性に優れるビッグピストンタイプのダンパーを新採用。しかもダンパー(減衰装置)は右側にのみ搭載し、左側はスプリングのみとしたS.F.F.(Separate Function front Fork)が採用されている。
また薄型軽量メーターも熟成され、表示文字が大きくなり、バックライトの照射角度が見直され視認性が向上された。
ツインチューブタイプのスチール製ダイヤモンド・フレームを始め、足回り、そしてボア・ストロークが67×46mmというショートストロークタイプの648ccエンジンはネイキッドモデルのCB650Rと共通。
但し、上のディメンション図で示す通り、ライディングポジションは明確な違いが構築されており、左図にある通り少し上体が前傾するスポーティーな乗り味を引き出し、明確な差別化が成されている。
ちなみにエンジンは、ボアが同サイズながら42.5mmというさらにショートストロークな599cc エンジンを搭載するCBR600RRと比較するとCBR650Rはピークパワーを控えめにし、高回転高出力の度合いをセーブ。実用域でより扱いやすい豊かな中低速トルクを発揮するタイプに仕上げられている。
下に掲げる出力特性のイメージ図に回転数を示すスケールの記載が省略されているのが残念だが、ホンダの公式Webサイトから引用すれば「3,000~8,000rpm付近のレスポンスを高め、ー中略ー 7,000rpm付近からの直列4気筒ならではの吹け上がり感により、スポーツバイクならではの興奮と充実感を満喫できるー後略ー。」とある。
やはり4気筒への拘りとその魅力は侮れないものが期待できそうである。
十分にエキサイティング。決して過激では無いハイパフォーマンスが心地よい。
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
⬛️主要諸元⬛️
CBR650R
車名・型式:ホンダ・2BL-RH03
全長(mm):2,120
全幅(mm):750
全高(mm):1,150
軸距(mm):1,450
最低地上高(mm):130
シート高(mm):810
車両重量(kg):206
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):31.5(60km/h)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(km/L):21.3〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):3.0
エンジン型式:RH03E
エンジン種類:水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒
総排気量(㎤):648
内径×行程(mm):67.0×46.0
圧縮比:11.6
最高出力(kW[PS]/rpm):70[95]/12,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):64[6.5]/8,500
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式:セルフ式
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):15
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式:常時噛合式6段リターン
変速比:
1速 3.071
2速 2.352
3速 1.888
4速 1.560
5速 1.370
6速 1.214
減速比(1次/2次):1.690/2.800
キャスター角(度):25゜30′
トレール量(mm):101
タイヤ(前/後):120/70ZR17 M/C (58W)/ 180/55ZR17 M/C (73W)
ブレーキ形式(前/後):油圧式ダブルディスク / 油圧式ディスク
懸架方式 (前/後):テレスコピック式 / スイングアーム式
フレーム形式:ダイヤモンド