ジープ・ブランドのコンパクトSUV、レネゲードにプラグインハイブリッド仕様が加わった。レネゲード4xe(「フォー・バイ・イー」と読む)である。EV走行距離は48km。ジープ史上最高燃費を実現したレネゲード4xeとはどんなクルマか。
「ジープのPHEV?」なんとなくイメージに合わない気がしたのだが、乗ってみて「これなら普段使いにちょうどいいSUVだな」と感じた。
ジープ・レネゲードは、ジープのラインアップでもっともコンパクトなSUVだ。ボディサイズの全長×全幅×全高:4255×1805×1695mm、ホイールベース:2570mmは、トヨタのヤリスクロス(全長×全幅×全高:4180×1765×1590mm、ホイールベース:2560mm)とさほど変わらない。それでいてジープらしい存在感は充分というのが、レネゲードの特徴だ。兄弟車であるフィアット500Xとの差別化はきちんとできている。
ジープ・ブランド初のPHEVモデルには「4xe(フォー・バイ・イー)」という名前がつく。現在はレネゲード、コンパス、ラングラーに4xeモデルが設定されている。日本に導入される4xeはレネゲードが初めてだ。
4xeではないレネゲードは、フロントに1.3ℓ直4SOHCターボを横置きし、FFモデルは6速DCT、4WDモデルは9速ATと組み合わせる。4WDモデルはリヤへプロペラシャフトがつながりカップリングユニットで前後駆動力配分を制御する。つまり、普通の4WDだ。
PHEVモデルのレネゲード4xeは、フロントに1.3ℓ直4SOHCターボ、リヤにモーターを積む4WDモデルとなる。トランスミッションは6速ATだ。4WDだが、プロペラシャフトはない。後輪の駆動は最高出力128ps(定格出力60ps)最大トルク250Nmの交流同期モーター(eアクスル)が行なう。
まずは乗ってみよう。乗ったのは、リミテッド(498万円)とトレイルホーク(503万円)だ。ふたつのグレードではエンジンの出力が違う。エンジンの最高出力は、リミテッドが131ps、トレイルホークが179ps。システム総合出力はリミテッドが191ps、トレイルホークは239psとなる(つまりモーターは60ps)。
試乗インプレッションはまた別にレポートするが、短時間のドライブでの印象を記しておく。
EV走行換算距離WLTCモードは48kmだ。バッテリー容量は11.4kWh。ウィークデーの通勤や通学は往復48kmの範囲ならEV走行だけでこなせる。
ドライブモードは、ハイブリッド/EV/E-SAVEの3つがある。最初はEVモードで走ってみた。もちろんモーター駆動だ。次にハイブリッドモードにしてみた。やはりモーター駆動でエンジンはかからない。
ハイブリッドモードでは道路も状況に応じてエンジンとモーターが協調する 回生もする。最初はEV走行が優先されるが、バッテリーのSOC(State of Charge=充電状態)が最低限度になるとエンジンによって走行するというが、試乗中にエンジンはかからなかった。
レネゲード4xeで感じるのは、「やっぱりモーター駆動は気持ちいい」ということ。滑らかに加速し、もちろん変速ショックもない。後席下に積まれたバッテリーとモーター、インバーターなどPHEV化するために増した350kgの重量は乗り心地にはプラスに働く。250Nmのトルクのモーターには1790kgもまったく問題ない。モーター駆動での最高出力は130km/hだから普通にドライブしていたら、エンジンはかからないのだ。
言うまでもないが、EVモードで走っている間は、RWD、つまり後輪駆動だ。後輪駆動ならでは気持ちよさもやはり感じることはできる。
トレイルホークに乗り換えたとき、バッテリーの残量は61%でEV走行可能距離は21kmだった。それでは、と思って横浜の試乗会場からすぐに首都高速に乗って第三京浜、港北インターから首都高速の横浜北線を通る。制限速度で走っていてバッテリー容量が減って0%が近づけてくる。
確かめたかったのは、バッテリーが0%になるとエンジンが始動し、エンジン駆動になる。つまりFWD、前輪駆動に切り替わるはずだ、と思ったのだ。ところが……追い越し車線を走るトラックが覆面パトカーの餌食になるのに気を取られている間に、エンジンはかかっていた。バッテリー容量は2%となっていた。市街地走行なら気づくだろうが、高速道路ではあまり気にならないだろう。
高速道路を降りて市街地をバッテリー容量2%で走る。エンジンはかかっている。それでも、信号で止まったあとの走り出しはEV走行だ。
種を明かせば、モニター上でバッテリー容量が0%になっていても、実際は20%程度残している。したがって、エンジンの青信号になれば再始動なしにEV走行で再スタートできるわけだ。したがって、EV走行(後輪駆動)と4WDはあるが、FF(エンジンのみ)の走行はしないようだ。
以前、レネゲードのFFモデルに少しだけ試乗したことがある。その際は、1.3ℓSOHCターボ(マルチエアという可変バルブタイミング&リフト技術を使ったハイテクSOHCだ)と6速DCTの組み合わせが、正直苦手だった。
今回の4xeのパワートレーンは、スムーズでとてもよかった。バッテリー容量が少なくなってエンジンがかかってからは、正直言ってエンジンはそれなりに存在をアピールしてくるが、EV走行している間は、とにかくスムーズ。
リミテッドの498万円という車両価格は、なかなか魅力的な設定だと感じた。エンジン出力の違いはEV走行している間は関係ない。アピアランスとしては、リミテッドの方が都会に似合いそうな気がした。
ジープ・レネゲード Limited 4xe
全長×全幅×全高:4255×1805×1695mm
ホイールベース:2570mm
車重:1790kg
サスペンション:Fマクファーソン式 Rマクファーソン式
駆動方式:4WD
エンジン
形式:直列4気筒SOHCターボ
型式:46337540
排気量:1331cc
ボア×ストローク:70.0×86.5mm
圧縮比:10.5
最高出力:131ps(96kW)/1850pm
最大トルク:270Nm/5000rpm
燃料供給:DI
燃料:無鉛プレミアム
モーター
フロント
型式:T型交流同期モーター
最高出力:45ps(33kW)
最大トルク:53Nm
リヤ
型式:46347218型交流同期モーター
最高出力:128ps(94kW)
最大トルク:250Nm
燃料タンク:36ℓ
燃費:ハイブリッドWLTCモード:17.3km/ℓ
市街地モード18.5km/ℓ
郊外モード15.1km/ℓ
高速道路モード18.5km/ℓ
充電電力使用時走行距離プラグインレンジWLTC:49.8km
EV走行換算距離WLTCモード:48km
トランスミッション:6速AT
車両本体価格:498万円