45馬力の水冷4気筒エンジンを搭載したクラス最強のNEWモデル「カワサキ Ninja ZX-25R」。2019年のモデルチェンジで大幅に進化した水冷2気筒のMotoGPワークスマシン・YZR-M1の縮小版「ヤマハ YZF-R25」。250ccという同じ排気量区分で、お互いにフルカウルだが、それぞれのキャラクターにはかなり大きな違いがある。カワサキとヤマハが誇る2台のスーパースポーツ250ccを徹底比較してみよう。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
カワサキ Ninja ZX-25R……82万5000円(SE/SE KRT EDITIONは91万3000円) ※10%消費税込
ヤマハ YZF-R25……61万500円 (ABSは65万4500円) ※10%消費税込
両車のスタイリングとサイズを比較
■カワサキ Ninja ZX-25R(SE KRT EDITION)
全長×全幅×全高:1,980mm×750mm×1,110mm
軸間距離:1,380mm
最低地上高:125mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.2°/ 99mm
車両重量:184kg
最小回転半径:2.6m
燃料タンク容量:15L
■ヤマハ YZF-R25(カッコ内はABS)
全長×全幅×全高:2,090mm×730mm×1,140mm
軸間距離:1,380mm
最低地上高:160mm
シート高:780mm
キャスター/トレール:25.0°/ 95mm
車両重量:167kg(170kg)
最小回転半径:-
燃料タンク容量:14L
フルカウルを装備した外観は、両車ともサーキットが良く似合うアグレッシブでグラマラスなイメージ。前後ホイールはどちらも17インチを採用している。
全長は YZF-R25が110mm長く、Ninja ZX-25Rに比べて車体はかなり大柄なイメージ。とはいえ、軸間距離(ホイールベース)は1,380mmの同寸。また、キャスター/トレールは、両車とも直進安定性と旋回性を吟味したスポーツモデルに多用の範囲に設定。
写真で見る限り、YZF-R25の「全長110mmの長さ」は、Ninja ZX-25Rよりも後方まで伸びたリヤフェンダー部の影響が大きい模様。YZF-R25はNinja ZX-25Rよりも全幅が20mm短く、車体は15kg以上軽量。軸間距離(ホイールベース)、全幅、車両重量で見た場合、街中での取り回しや渋滞に対する強さは、YZF-R25にアドバンテージがあるかもしれない。
Ninja ZX-25Rの4気筒エンジンと、 YZF-R25の2気筒エンジンを比較
■カワサキ Ninja ZX-25R
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:249cc
内径×行程(ボア径×ストローク長):50.0mm×31.8mm
圧縮比:11.5:1
最高出力:33kW(45ps)/15,500rpm
※ラムエア加圧時:34kW(46ps)/15,500rpm
最大トルク:21N・m(2.1kgf・m)/13,000rpm
レッドゾーン:1万7000~2万rpm
■ヤマハ YZF-R25
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:249cc
内径×行程(ボア径×ストローク長):60.0mm×44.1mm
圧縮比:11.6:1
最高出力 26kW(35ps)/ 12,000rpm
最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/ 10,000rrpm
レッドゾーン:1万4000~1万5000rpm
どちらもレーシーなショートストローク型エンジン(ストローク長よりもボア径が大きい)を採用。ショートストローク比(内径÷工程)はNinja ZX-25Rが1.57、YZF-R25が1.36で、Ninja ZX-25Rの方がショートストローク。
Ninja ZX-25Rの最高出力は、YZF-R25の35馬力を遥かに凌ぐ、45馬力(ラムエア加圧時は46馬力)を出力。10馬力の差はやはり体感的にも大きく、Ninja ZX-25Rの凄さがよく分かる数値といえる。
Ninja ZX-25Rのエンジンは、ハイパワーな小排気量4気筒ならではの超高回転型仕様。1万5500回転でMAXパワーを出力し、レッドゾーンは1万7000~2万回転というレーシングマシン並みの驚異的な数値。
以上の点で、Ninja ZX-25Rは十二分にサーキットを楽しめるマシンに仕上げられているのが分かる。同車の優れた点は、ストリートで多用する低中回転域での扱いやすさも吟味されているところ。高回転域を多用するサーキット走行はもちろん、街乗りでの扱いやすさもトコトン重視されている。この点を指摘した試乗レポートは下記をチェック。
一方、YZF-R25は1万2000回転でMAXパワー(35馬力)を発揮し、レッドゾーンは1万4000~1万5000回転。最大出力はNinja ZX-25Rに及ばないが、ショートストローク型の高回転エンジンならではのエキサイティングな走りが楽しめる。
一般的に2気筒は、1気筒あたりの爆発力が4気筒よりも大きくなるため、軽量&小型のピストンで多くの往復運動をこなす、4気筒のような超高回転型にするのは物理的に不可能(2気筒の大排気量車が、超高回転型エンジンでないのは基本的にこのため)。
とはいえ、2気筒でレッドゾーンが1万4000~1万5000回転を可能にしたYZF-R25は、驚くほどスポーティなエンジンであるといえる。
※同じ2気筒250ccのスーパースポーツ「ホンダ CBR250RR(41馬力)」はレッドゾーンが1万4000~1万6000回転
超高回転域でMAXパワーを発揮するNinja ZX-25Rは、YZF-R25よりも最大トルクの数値が0.2kgf・m低いのが特徴(この点は、小排気量な超高回転型エンジンの短所だともいえる)。
Ninja ZX-25Rよりも低い回転数(1万rpm)で最大トルクを発揮するYZF-R25は、街中で多用する低中回転域で扱いやすく、バイクビギナーでもスムーズに走行できるのがポイント。実走行では、低速域からよく粘るエンジンは、住宅街や市街地のノロノロ走行でも扱いやすく、どの回転域でもスロットルレスポンスに優れ、遅滞無くスムーズに加速を始める乗り味は活き活きとしている。
また、スロットルをワイドオープンすれば、1万4000rpmからのレッドゾーンへも難なく吹き上がる。なお、回転上昇の勢いは1万rpmオーバーで緩くなるので、実質的には1万rpm当たりまでの使用が効率良い。引っ張ったとしても、せいぜい1万2000rpmで早めにシフトアップする方が有効的だ。
YZF-R25の開発コンセプトは「毎日乗れるスーパーバイク」。スポーツ性能に特化した走行性能と、日常での扱いやすさを調和させたその特性や個性は、かなり過激なNinja ZX-25Rとはやや趣の異なるもの。この点を指摘した試乗レポートは下記をチェック。
フレーム&足周りを比較
■Ninja ZX-25R
フレーム形式:トレリス
フロントフォーク:倒立型SFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストン)
※インナーチューブ径:37mm
スイングアーム:ホリゾンタルバックリンク式
スイングアーム本体:スチール製
Fホイール:5スポーク 17M/C×MT3.50
Rホイール:5スポーク 17M/C×MT4.50
Fタイヤ:110/70R17M/C 54H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Rタイヤ:150/60R17M/C 66H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Fブレーキ:シングルディスク 310mm (外径) +
ラジアルマウント式モノブロック型・異径(上側ø32mm / 下側ø30mm)対向4ピストンキャリパー
Rブレーキ:シングルディスク 220mm (外径) + 片押し1ピストンキャリパー
■ヤマハ YZF-R25
フレーム形式:ダイヤモンド
フロントフォーク:倒立型
※インナーチューブ径:37mm
スイングアーム:モノクロスサスペンション
Fホイール:10スポーク 17M/C
Rホイール:10スポーク 17M/C
Fタイヤ:110/70R17M/C 54S(ラジアル)
Rタイヤ:140/70R17M/C 66S(ラジアル)
Fブレーキ:シングルディスク + サイドマウント式片押し2ピストンキャリパー
Rブレーキ:シングルディスク+ 片押し1ピストンキャリパー
両車とも前後にディスクブレーキ(フロントはシングル式)・17インチホイール・ラジアルタイヤを採用。また、フロントフォークは37mm径インナーチューブの倒立型を装備。
フロントタイヤは両車とも同サイズだが、リヤタイヤはNinja ZX-25Rが1サイズワイドな150をチョイス。
ライディングポジションと足着き性を比較
Ninja ZX-25Rのハンドル位置は、見た目ほど低すぎず、ヒザの曲がりも緩めで見た目以上に楽なポジション。サーキット走行はもちろん、街乗りも十二分に対応。785mmのシート高と絞り込まれたスリムな形状によって足着き性も良好。
YZF-R25は前モデルよりもハンドルが22mm低くなり、上体の前傾度はやや増したが、ステップとシートの位置はほぼ従来通り。街乗りでも操作しやすい余裕のあるポジション。サーキットを想定して上体を伏せると、カウルとスクリーンが作るストリームラインにちょうど上体が隠れる感じになるため、走行風をうまく流す。