ホンダのコンパクトミニバン「フリード」をベースとしたホンダアクセスのコンプリートモデル「モデューロX」が2020年5月28日、ベース車より約7ヵ月遅れてマイナーチェンジを受けた。
同モデルには1.5L直4直噴DOHC i-VTECエンジン+CVTを搭載する「フリードモデューロXホンダセンシング」と、1.5L直4アトキンソンサイクルDOHC i-VTECエンジン+「i-DCD」(7速DCT+1モーター)を搭載する「フリードハイブリッドモデューロXホンダセンシング」が設定されている。
今回はそのうち後者に新旧比較試乗。ホンダアクセス本社のある埼玉県新座市周辺の一般道と高速道路に加え、マイナーチェンジ後のモデルについては箱根のワインディングなどでも試乗した。
REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO●遠藤正賢、本田技研工業、ホンダアクセス
現行二代目フリードは2016年9月に発売されたが、その頃よりファミリーカーとして走りの完成度は高く、乗り心地とハンドリングのバランスに優れていた。
それが故と言うべきか、2019年10月のマイナーチェンジでも、走りの変更点は多くなく、サスペンションのチューニングに関しても「変更する方向で開発は行ったが、結局元のままがベストということになった」(開発担当者)のだという。
【2019年10月マイナーチェンジの主な変更点】
・標準仕様の内外装をシンプルかつ落ち着いたものに変更
・クロスオーバー仕様「クロスター」追加
・ADAS「ホンダセンシング」を全車標準装備のうえ後方誤発進抑制機能を追加、ACC(アダプティブクルーズコントロール)の加減速制御を改善
・ガソリン車のCVTにブレーキ操作ステップダウンシフト制御を採用
・エンジンを三代目フィット後期型と同様の仕様にアップデートしWLTCモードに対応
・旋回から直進に戻る際の収れん性向上、旋回速度に対するアシストトルクの減少幅増大などEPS(電動パワーステアリング)の制御を改善
なお、フリードの「モデューロX」は2017年12月に発売。ボディ下面の空気の流れを整えて中高速域の操縦安定性を大幅に高める「実効空力」に基づいたエアロパーツ、四輪の接地性を高めるサスペンション、剛性バランスに着目したアルミホイール、上質感を高めたインテリア、といったモデューロXの定番メニューは、この時点ですでに実現されていた。
あらためてこの前期型フリードモデューロX、そのハイブリッド車に、ホンダアクセス本社のある埼玉県新座市周辺で試乗してみると、ベース車以上に路面の凹凸に対する挙動の収まりが早く、かつ突き上げも少ない極上の乗り心地が即座に体感できる。
だがその一方で、モデューロX各車の大きな持ち味であり、だからこそ強く期待する、矢のような直進安定性はやや乏しい。ミニバンが最も苦手な横風のみならず路面の凹凸に対しても、わずかに進路を乱しがちだった。
では、マイナーチェンジを受けた、新しいフリードモデューロXはどうか。運転席に座った瞬間に誰しも体感できるのが、インテリアの進化だろう。ディンプルレザー&スムースレザー巻きステアリングホイールは、見た目こそ変わらないものの、その手触りは全くの別物。硬くツルツル滑りやすかったものが、手の平に吸い付くような柔らかさとしっとり感のある、スポーツモデルに相応しい本革に生まれ変わっていた。
そして、最も肝心な走りは、どのように進化したのか。ベース車と同様に「違う仕様もテストしたが、空力の進化を加味してもサスペンションとホイールはそのままがベストだった」(関係者)とのことで、マイナーチェンジ後もこの2つは従来より変更されていない。
だがその分、フロントエアロバンパーとグリルが大きく変わっている。マイナーチェンジ前は「X」の字をグロスブラックの加飾と開口部で表現していたが、マイナーチェンジ後はベース車のデザインコンセプトがシンプルな方向に180度転換されたのに伴い、ボディ色で「X」の字を象るデザインに変更されている。しかしながら、そのためにかえってデザイン要素が増え、より一層濃い顔つきになったのはいかがなものか。…大多数の購入ユーザーは真逆の印象を受けるのだろうが。
下面は劇的に変更されており、マイナーチェンジ前はバンパー下部中央に設けられた「エアロガイドフィン」で空気の流れを真っ直ぐに整え、ゴム製の整流板でホイールハウス内の内圧を低減していたが、マイナーチェンジ後はバンパー下部中央に設けられた2つの大きな凹凸の「エアロスロープ」と、両サイド各7本の小さなフィン「エアロボトムフィン」に変更された。
なお、専用形状のサイドロアスカート、ディーラーオプションと同一形状のテールゲートスポイラーは従来と変わらず、ディフューザー形状となっている専用リアロアスカートはボディ同色のサイド部のみが見直されている。
これら空力の進化は大きく、マイナーチェンジ前の車両に見られた直進安定性の心許なさは、最早全く感じられない。そのうえ旋回時も、ヨーの立ち上がりは素早く、ロールは入り・戻りとも穏やかかつリニアになっており、すべての挙動から雑味が減りスッキリした印象を受けた。
こうした違いは、箱根のワインディングに持ち込むと、絶大な安心感をドライバーのみならず同乗者にももたらしてくれる。ブレーキング時には挙動が乱れにくく、かつ旋回時には路面のRやバンク角に沿って、ドライバーの意思を先読みするかのように自然に曲がっていく。
しかも、コーナーへの進入速度がやや高すぎたり、コーナーの奥がタイトで旋回中にブレーキを踏まざるを得なくなったりしても、あるいは大きなギャップを乗り越えても、リヤタイヤがブレイクする予兆すら感じさせないのだ。
■ホンダ・フリードハイブリッドモデューロXホンダセンシング(キャプテンシート仕様)
全長×全幅×全高:4290×1695×1710mm
ホイールベース:2740mm
車両重量:1430kg
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1496cc
エンジン最高出力:81kW(110ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:134Nm/5000rpm
モーター最高出力:22kW(29.5ps)/1313-2000rpm
モーター最大トルク:160Nm/0-1313rpm
トランスミッション:7速DCT
サスペンション形式 前/後:マクファーソンストラット/トーションビーム
ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:185/65R15 88S
乗車定員:6名
WLTCモード燃費:───km/L
市街地モード燃費:───km/L
郊外モード燃費:───km/L
高速道路モード燃費:───km/L
車両価格:325万6000円