45馬力の水冷4気筒エンジンを搭載したクラス最強の「Ninja ZX-25R」。Ninja ZX-25Rよりも低価格ながら、スポーツ走行・ツーリング・街乗りまで幅広くこなすオールラウンダーの「Ninja 250」。カワサキが誇るスポーツモデルである、2台の250ニンジャをあらためて比較。ビッグバイクに比べ、250クラスは車検もなく、お手軽に乗れるのが特徴。もしも乗るなら、アナタはどっちがいい?
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
外観は似ているが中身や個性は別物!アナタはどっち派?カワサキが誇る、2台の250ニンジャを比較
ビッグバイクに比べて車検がなく維持費も安い。パワフルだから一般道はもちろん、高速道路も余裕の走りが楽しめる。ロングツーリングもOKの250クラスは、その扱いやすさから、バイクビギナーや小柄でかよわいバイク女子にも人気のカテゴリーだ。
■Ninja ZX-25R(SE KRT EDITION)
全長x全幅x全高:1,980mm×750mm×1,110mm
軸間距離:1,380mm
最低地上高:125mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:24.2°/ 99mm
車両重量:184kg
最小回転半径:2.6m
燃料タンク容量:15L
■Ninja 250
全長x全幅x全高:1,990mm×710mm×1,125mm
軸間距離:1,370mm
最低地上高:145mm
シート高:795mm
キャスター/トレール:24.3°/ 90mm
車両重量:166kg
最小回転半径:2.5m
燃料タンク容量:14L
前後ホイールはどちらも軽快なイメージの5スポーク型17インチを採用。軸間距離(ホイールベース)はロングスイングアームを装備したNinja ZX-25Rが10mm長いが(全長はNinja ZX-25Rが10mm短い)、車体は両車ともコンパクトでほぼ同格といえる。
フルカウルを装備した外観は酷似しており、どちらもサーキットが似合うスポーティなイメージ。ハンドルとステップのレイアウトは写真で見る限り、Ninja ZX-25Rの方がやや前傾姿勢で戦闘的(ハンドルが低く、ステップが後ろ)。
2気筒エンジンを搭載したNinja 250の重量は、エンジンの面積やエンジンの総部品点数の多い、4気筒エンジンを搭載したNinja ZX-25Rよりも18kg軽量につくられている。
キャスター/トレールの数値は、両車とも直進安定性と旋回性を吟味した、大型のNinjaシリーズを踏襲したスポーティなもの。
軸間距離(ホイールベース)はNinja 250が10mm短く、最小回転半径も0.1m狭いので、街中での取り回しはNinja 250がやや優る。Ninja 250の全幅は40mm狭く、ハンドル幅も狭いので、渋滞路のすり抜けなどのしやすさも、Ninja 250に軍配が上がりそうだ。
■Ninja ZX-25R
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:249cc
内径x行程(ボア径×ストローク長):50.0mm×31.8mm
圧縮比:11.5:1
最高出力:33kW(45ps)/15,500rpm
※ラムエア加圧時:34kW(46ps)/15,500rpm
最大トルク:21N・m(2.1kgf・m)/13,000rpm
■Ninja 250
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列2気筒/DOHC 4バルブ
総排気量:248cc
内径x行程(ボア径×ストローク長):62.0mm×41.2mm
圧縮比:11.6:1
最高出力:27kW(37ps) /12,500rpmm
最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm
どちらもエンジンの回転数を上げてパワーを稼ぐ、レーシーなショートストローク型エンジン(ストローク長よりもボア径が大きい)を採用。ショートストローク比(工程÷内径)はNinja ZX-25Rが15.7、Ninja 250が15.0で、Ninja ZX-25Rの方がショートストローク。最大出力はNinja ZX-25Rがクラス最強の45馬力(ラムエア加圧時は46馬力)を発揮する。
注目すべきは、Ninja ZX-25Rは小排気量4気筒エンジンならではの、超高回転型エンジンであること。Ninja 250は1万2500回転でMAXパワーを発揮し、レッドゾーンは1万4000~1万6000回転というスポーティな高回転型エンジン。一方、Ninja ZX-25Rは3000回転高い、1万5500回転でMAXパワーを出力。レッドゾーンは1万7000~2万回転というレーシングマシン並みの驚異的な数値だ。
Ninja 250の2気筒250ccエンジン(37馬力)は、ライバルのホンダ CBR250RR(41馬力)を追従するスポーティなもの。しかしNinja ZX-25Rの4気筒エンジンは、上記2台の2気筒エンジン搭載車を遥かに凌ぐ、超高回転域で本領を発揮するのがポイント。言い換えれば、限りなくレーサーに近いテイストに仕上げられているわけだ(もちろん、ストリートで多用する低中回転域での扱いやすさも吟味)。
見逃せないのは、超高回転域でMAXパワーを発揮するNinja ZX-25Rは、Ninja 250よりも最大トルクが低いところ(この点は、小排気量4ストハイパワーモデルの特徴だといえる)。
一般的にこのタイプを速く走らせるためには、一定のパワーバンド(もっともパワーの出やすい回転数)をキープする必要があるため、適格なミッション操作やスロットルワーク(つまりテクニックや経験)が必要とされるが……。
Ninja ZX-25Rは250ccクラス初となる「クイックシフター」を装備することで、クラッチ操作なしのシフトアップとシフトダウンを可能とした。これによりレースビギナーでも、スムーズな加速とクイックでイージーな減速ができ、爽快なエンジン特性をより楽しむことができる。
以上のことから、諸元の数値上では、Ninja ZX-25Rは高回転域まで気持ち良くエンジンを回して楽しむタイプ=限りなくレーサーに近い(繰り返すが、下記の試乗インプレでは低中回転域での乗りやすさも吟味されていることを体感済み)。
一方、パワーがあってトルクもあるNinja 250は、スポーツ走行にも使えるし、低中回転域を多用する街乗りでも非常に扱いやすい、何でもこなせる万能タイプ。Ninja ZX-25Rがガッチガチの体育会系野郎ならば、Ninja 250は文武両道の秀才といったところだ。
■Ninja ZX-25R
フレーム形式:トレリス
フロントフォーク:倒立型
※インナーチューブ径:37mm
スイングアーム:ホリゾンタルバックリンク
Fホイール:5スポーク 17M/C×MT3.50
Rホイール:5スポーク 17M/C×MT4.50
Fタイヤ:110/70R17M/C 54H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Rタイヤ:150/60R17M/C 66H(ダンロップ GPR300 / ラジアル)
Fブレーキ:シングルディスク 310mm (外径) +
ラジアルマウント式モノブロック型・異径(上側ø32mm / 下側ø30mm)対向4ピストンキャリパー
Rブレーキ:シングルディスク 220mm (外径) + 片押し1ピストンキャリパー
■Ninja 250
フレーム形式:トレリス
フロントフォーク:正立型
※インナーチューブ径:41mm
スイングアーム:スタンダード
Fホイール:5スポーク 17M/C×MT3.00
Rホイール:5スポーク 17M/C×MT4.00
Fタイヤ:110/70-17M/C 54H(ダンロップ GT601 / バイアス)
Rタイヤ:140/70-17M/C 66H(ダンロップ GT601 / バイアス)
Fブレーキ:シングルディスク 310mm (外径) + サイドマウント式片押し2ピストンキャリパー
Rブレーキ:シングルディスク 220mm (外径) + 片押し2ピストンキャリパー
両者ともトリレスフレームや17インチホイールを採用。前後のディスクブレーキ径も同サイズだが、ハイパワーなNinja ZX-25Rは
・ショーワのSFF(セパレートファンクションフロントフォーク)とBPF(ビッグピストンフロントフォーク)のコンセプトを組み合わせた、250㏄クラス初採用の倒立型φ37㎜SFF-BP(セパレートファンクションフロントフォーク-ビッグピストン)フロントフォークを採用
・ショックユニットとリンケージをスイングアーム上方に配置し、マフラーに大容量チャンバーの搭載が可能となり、マスの集中化にも貢献する「ホリゾンタルバックリンクリヤサスペンション」を採用。こちらも250㏄クラス初採用
・過酷なブレーキング時にも安定した制動力を確保する、異径対向の4ピストンを備えたモノブロック型キャリパーを採用。また、取り付けはサイドマウント式ではなく、レーシングモデル定番のラジアルマウント式(進行方向にボルト固定したキャリパー)を導入
など、Ninja 250の上を行く、Ninjaシリーズの大型スポーツモデルにも採用の贅沢な装備をインストール。なお、前後ホイールはリム幅を1サイズアップし、リヤタイヤを150にワイド化。4気筒エンジンのパワーを確実に伝達するよう設定済みだ。前後にはハイグリップなラジアルタイヤ「ダンロップ GPR300」がチョイスされている。
Ninja ZX-25Rのハンドル位置は、見た目ほど低すぎず、ヒザの曲がりも緩めで見た目以上に楽なポジション。サーキット走行はもちろん、街乗りもOK。785mmのシート高とスリムな形状により、足着き性も良好。
Ninja 250は実際に跨ってみると、ハンドル位置も意外と高め。シート高は795mmだが、絞り込まれたタンクと30mmスリム化されたシートにより、足着き性を向上。身長179cmの場合、両足はべったりと着く。
両モデルとも、アナログ式タコメーターを中央に配置したレーシーなコックピット。液晶パネルにギヤポジションを表示、その右側に多機能ディスプレイを配置したレイアウトは6Rと共通。