ドラッグレースやカスタムのイメージが強いかもしれないが、1985年に創業したレッドモーターの主業務は中古車販売・車検整備・一般修理で、これまでに扱った2スト250ccレーサーレプリカの累計数は、余裕で数百台以上に達する。今回紹介するのは、同店代表の中村圭志さんに聞いた、2スト250ccレーサーレプリカの現状だ。
REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)
取材協力●レッドモーター ☎03-3915-0953 http://redmotor.com/
当企画に協力してくれたレッドモーターは、ひと言で説明するのがなかなか難しいショップである。代表を務める中村圭志さんは、日本のドラッグレース界の第一人者で、近年ではクラスフォーエンジニアリングと共にJD-STERというイベントを開催しているし、カスタムに関しても豊富なノウハウを持っているのだが、その一方で1985年の創業以来、同店の主業務は中古車販売・車検整備・一般修理で、店内の雰囲気は至ってアットホーム。レースとカスタムが得意なショップで、時として感じる敷居の高さは、レッドモーターには皆無なのだ。
「ドラッグレースには力を入れているし、カスタムもお客さんの希望に応える形でいろいろとやっていますけど、ウチはまあ、普通のバイク屋です(笑)。あえて特色を挙げるなら、私を含めたスタッフの好みで、1980~1990年代車の扱いが多いことでしょうか。もちろんその中には、2スト250ccレーサーレプリカも含まれています」
1970年生まれの中村さんは、レーサーレプリカの黄金時代をリアルタイムで体験したライダーで、若き日はRZやTZR、NSRなどを愛用。自身でショップを始めてからは、多種多様なレーサーレプリカを積極的に販売してきた。そんな中村さんは、近年の2スト250ccレーサーレプリカの中古車事情をどう考えているのだろう。
「価格がムチャクチャ上がりましたよね。一昔前は20~30万円台で良質な中古車が選べたのに、今はその倍以上が普通になった。きっかけは十数年前から始まったNSRの再評価で、最近はNSRに引っ張られる形で、他のレーサーレプリカの価格も上がっています。具体的な話をするなら、最低ラインが50万円前後~で、NSRの極上車なら100万円以上が珍しくない。こういった価格高騰に対して、個人的には違和感を覚えますが……。生産終了からかなりの年月が経過して、調子のいい車両が減って来たこと、そして本来の調子を取り戻すために、ひと通りの整備が必要になることを考えれば、ある程度の価格上昇を止むを得ないのかな、とは思います。仕入れ価格が高いうえに整備に手間がかかるので、ウチの儲けはまったく増えていないですけどね(笑)」
数ある2スト250ccレーサーレプリカの中で、レッドモーターのオススメ機種はあるのだろうか。
「どんなライダーにも自信を持ってオススメできるのはTZRの初期型、1KTです。速さという点では、以後のライバル勢には及ばないですが、このバイクはとにかく乗りやすくて、どんな用途にも気軽に使える。整備性が良好で、現時点では補修部品の心配がほとんどないことも、1KTの魅力でしょう。それ以外だと、個人的にはNSRの初期型、MC16もオススメかな。ライポジが意外に楽で、トルクで走る感覚のMC16は、MC18以降のNSRと比べると、日常性が高いんですよ。もっとも業者オークションに出て来るタマ数の豊富さ、選択肢の広さなら、MC21以降のNSRがダントツです。それに続くのは3XV(1991年以降のTZR)で、1KTとMC16はその次くらいでしょうか。パラレルツインのΓは、さらに少ないですね。なおレーサーレプリカではないですが、1KTのエンジンを転用したR1-Zはかなりのタマ数があるので、レプリカでなくてもいいから2ストに乗ってみたい人は、このモデルに目を向けるのもアリだと思いますよ」
前述したように、レッドモーターでは80~90年代生まれのバイクを幅広く扱っている。4ストとは異なる、2ストならではの問題点、注意すべき点はあるのだろうか。
「2ストならではの問題点と言うと、筆頭に挙がるのは、構造的にカーボンが溜まりやすいこと。1980年代中盤以前のモデルはチャンバー内部、それ以降のモデルはシリンダーの排気バルブ近辺に溜まりやすくて、こびりついたカーボンをきれいに掃除すれば、それだけで調子がよくなることが多いですね。また、2ストのピストンとピストンリングは、4ストほど耐久性が高くないので、ある程度の距離を走ったら、点検・交換が必要と考えたほうがいいと思います。それ以外の問題点と言うと、扱いが悪いとスパークプラグがカブること……でしょうか。4ストと同様の感覚で、高めのギアでスロットルをガバッと開けると、2ストはプラグがカブって失火しやすい。でもそれが起こりやすいのは、1980年代中盤くらいまでで、排気バルブを採用して電装系が進化した以降のモデルは、そう簡単に失火はしません。逆に1980年代中盤以降の2ストで、普通に走っているのにすぐカブってしまう場合は、機関の調子を疑ったほうがいいでしょう」
誕生から20~40年前後が経過したレーサーレプリカは、すでに立派な旧車である。そういうバイクを所有するうえで心配になるのは、パーツの供給状況だ。
「現行車のように、何でもすぐに揃うわけではないですが、たいていのパーツは何とかなります。もちろん、車両メーカーの純正部品は欠品が増えていますが、NSRに関してはホンダが再生産を始めたし、最近のアフターマーケット市場では2ストレプリカ用のリプロパーツがいろいろと登場しているし、ネットオークションでは多数の中古が販売されている。なおベアリングやシール類は、汎用品が代替部品として使えるケースが少なくないです。いずれにしても現時点なら、“これはもう修理できません”という事態にはならないと思いますよ」
最後になってこういうことを聞くのも何だけれど、中古車としての効率を考えれば、2000年以降のモデルを主力にしたほうがよさそうなのに、どうしてレッドモーターは、1980~90年代車に力を入れているのだろう。
「それはやっぱり、好きだからです(笑)。1980~1990年代生まれのバイク、中でも250ccと400ccのレーサーレプリカは、とにかく走ることが楽しいし、技術者の熱い思いがダイレクトに伝わって来る。実際に整備をしてみると、いくら販売台数が今より格段に多かったとはいえ、日本市場専用車で、よくぞここまでコストをかけたものだなあと思います。逆にかつてのレーサーレプリカに慣れ親しんでいると、最近のバイクは乗ってもいじってもガッカリすることが少なくないんですよ。もっとも最近の価格高騰を考えると、1980~1990年代のレーサーレプリカは、安易に推奨できる車両ではなくなって来ましたが、ウチとしては車両購入から修理、カスタムまで、どんなことでも相談に乗りますので、この分野に興味のある人は、気軽に来店して欲しいですね」
レッドモーターの中古車3台!
※記事制作時に店頭で販売されていた車両のため、必ずしも在庫があるとは限りません。ご了承ください。
車名:RG250Γ
型式:GJ21A
全長×全幅×全高:2050mm×685mm×1195mm
軸間距離:1385mm
最低地上高:155mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:28°45′/102mm
エンジン種類/弁方式:水冷2ストローク並列4気筒
弁形式:パワーリードバルブ
総排気量:247cc
内径×行程:54.0mm×54.0mm
圧縮比:7.5:1
最高出力:45PS/8500rpm
最大トルク:3.8kgf・m/8000rpm
始動方式:キック
点火方式:CDI
潤滑方式:分離給油式
燃料供給方式:ミクニVM28SSキャブレター
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ
1速:2.500
2速:1.625
3速:1.210
4速:1.000
5速:0.853
6速:0.782
1・2次減速比:3.100・2.642
フレーム形式:ダブルクレードル
懸架方式前:テレスコピック正立式φ36mm
懸架方式後:スイングアーム フルフローター式
タイヤサイズ前後:100/90-16 100/90-18
ホイールサイズ前後:2.15×16 2.15×18
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
最小回転半径:3.2m
乾燥重量:131kg
燃料タンク容量:17L
オイルタンク容量:1.2L
新車価格:46万円(1983年)