新型コロナウイルスの蔓延に伴い、 政府が1人当たり現金10万円を支給する「特別定額給付金」の申請がスタート。電車やバスといった公共交通機関での通勤はまだ怖いので、この10万円を使ってバイクを新調し、バイク通勤はできないものだろうか……。早速リサーチしてみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
調査日：2020年5月30日
※今回紹介する車両は税込価格で10万円以下の車両となります。乗り出し価格ではありません。
「イマドキのバイクは高すぎる」なんてもう言わせない！10万円で購入できるモデルは存在する
「若者のバイク離れは、バイクの新車価格が高すぎるから」
「確かに原付は便利だが、電動アシスト自転車の方がコストパフォーマンスが良い」
等々、“バイク離れ”に関しては、巷で様々な意見が交わされている。
例えば50ccの場合。厳しい排ガス規制をクリアするため、国内メーカーは2000年頃を境に、2ストロークエンジンよりも部品数が多く、構造が複雑だけれど、クリーンな4ストロークエンジンに転換。
また、さらに厳しい排ガス規制のため、高性能ではあるが、キャブレターよりもコスト高となるフューエルインジェクションを採用。これに加え、高価なレアメタルを素材にした触媒なども必要となり、原付の価格も上昇した。
筆者的には、かつて10万円以下だったホンダ モンキーが、時代とともに12Vされインジェクション化され、最終的には30万円を超えた時は、腰を抜かしそうになったものだ。
総体的に見れば、確かにバイクの価格は上昇した。しかし、アセアン諸国で生産・発売され、並行輸入（※注）されたモデルの中には、10万円台は当たり前！ 中には10万円を切る車両も存在する。
ここでは人気のバイク検索サイト「グーバイク」を使い、10万円で購入できるモデルをリサーチしてみた。
※注：並行輸入とは、ショップ独自のルートにより、生産国で買い付けを行い、直接輸入すること。一般的に輸入に関わる様々なコストを削減することで、低価格を実現しているのが特徴。
「10万円」でお釣りが返って来る、ホンダのインド市場向けモデルを発見！
バイク検索サイト「グーバイク」を使い、『本体価格：～10万円』『年式：新車』の条件指定で検索してみると、57台の新車が引っ掛かった。
いくつかの車種が、『本体価格：～10万円』『年式：新車』で発売されているが、もっとも多かったのが、「ホンダ ナビ110」というモデル。タンクの下に空間を設けた、スクーターとミッション車を足して2で割ったような、何とも不思議なカタチをしている。
2016年、インドのデリーオートエキスポで発表されたホンダ ナビ110。インドの若者向けに開発されたこのモデルは、「グロㇺ」をイメージさせるスポーティーなデザインに、ベンリィ系の4ストローク単気筒オートマチック109ccエンジンを搭載している。
「FUN TO SEE」をデザインコンセプトにした、ちょっと変わったスタイルのナビ110は、スクーターと同様に、エンジンを後輪寄りに搭載。タンクの下には、空間ができているのが大きな特徴だ（インドでは、オプションで空間設置用の専用ボックスも発売）。
インド市場においてナビ110は、メーカー主導のSNSコミュニティが開設されるほどの人気ぶり。日本では正式にラインナップされることはなかったが、並行輸入業者により、かなりの台数がインドから輸入。余談だが、筆者が在住する千葉県でも時々見掛ける。また、近所にあるガソリンスタンドの店員さんがナビ110に乗っている。
「グーバイク」に掲載のナビ110は、全国のいくつかの店舗より発売。店舗によって異なるが、2020年5月現在、車両価格は9万9000円前後となっている。
●ホンダ ナビ110 主要諸元
全長×全幅×全高：1805mm×748mm×1039mm
ホイールベース：1286mm
最低地上高：156mm
シート高：765mm
乾燥重量：98kg
車両重量：101kg
乗車定員：2名
エンジン：水冷4ストローク単気筒
排気量：109.19cc
ボア×ストローク：50mm×55.6mm
圧縮比：9.5
最高出力：5.84kw（7.94ps）/7000rpm
最大トルク：8.96N・m/5500rpm
燃料タンク容量：3.5L（リザーブ容量：0.9L）
エンジン始動方式：セルフ・キック 併用式
バッテリー容量：12V-3Ah
変速機形式：Vベルト式・無段変速
フレーム型式：アンダーボーン
キャスター角：27°30'
トレール量：81.5mm
ブレーキ形式：
（前）機械式リーディングトレーリング
（後）機械式リーディングトレーリング
懸架方式：
（前）テレスコピックフォーク
（後）ユニットスイング式
タイヤ：
（前）90/90-12
（後）90/100-10
驚異のコストパフォーマンスを誇る、インド市場向けのシンプルなスクーター「ホンダ クリック110」。エンジンは空冷4ストローク単気筒110ccを搭載。コンビブレーキにはパーキング機能を装備し、フラットシートの下には、小さいけれどトランクスペースも設置済みだ。
「グーバイク」に掲載のクリック110は、ナビ110と同じく、いくつかの店舗より発売。店舗によって異なるが、車両価格は2020年5月現在、8万5000円～9万9000円程度。
●ホンダ クリック110 主要諸元
全長×全幅×全高：1745mm×695mm×1039mm
ホイールベース：1241mm
最低地上高：154mm
シート高：743mm
車両重量：102kg
乗車定員：2名
エンジン：空冷4ストローク単気筒
排気量：110cc
ボア×ストローク：50mm×55.6mm
圧縮比：9.5
最高出力：5.91kw（8.03ps）/7000rpm
最大トルク：8.94N・m/5500rpm
燃料タンク容量：3.5L
エンジン始動方式：セルフ・キック 併用式
バッテリー容量：12V-3Ah
変速機形式：Vベルト式・無段変速
フレーム型式：アンダーボーン
ブレーキ形式：
（前）機械式リーディングトレーリング
（後）機械式リーディングトレーリング
懸架方式：
（前）テレスコピックフォーク
タイヤ：
（前）90/100-10
（後）90/100-10
インドでのバイク販売価格は、日本に比べ、特別安いわけではない。日本国内でインド車が安く入手できる最大の理由は、「インドのルピー」と「日本の円」による為替レイト。具体的には、インドのルピーに対し、日本の円の価値が高いから＝円高（※注1）。
輸入業者の中には、アセアン諸国で生産された格安モデルを国内で販売している例もあるが、上記のモデルは、インドにおいて中級～上級クラスにカテゴライズ。インド国内では、富裕層をターゲットにリリースされている、いわゆる“高性能モデル”に属するのがポイントだ。
中国の13億9000万人に次ぐ、13億5000万人の人口を誇るインド（2018年現在）は、現在、世界最最大のバイク生産国であり、世界最大のバイク市場。日本はもちろん、各国のバイクメーカーが凌ぎを削り、市場獲得のため、「安くて性能が良くて壊れない」インド向けのモデルを開発・発売している。
インドでは、2020年3月より、欧州の排ガス規制「ユーロ5」と足並みを揃えるため、NEWモデルすべてのインジェクション化を義務付け。国内仕様との性能の差が、どんどん縮まっているのが現状だ。インドを始め、バイクのグローバル化は、今後ますます進んでいくと予測される。
※注2：円高＝円の価値が高くなるため、一般的に輸入品の価格が下降。一方、円安＝円の価値が低くなるため、一般的に輸入品の価格が上昇する傾向あり。2020年5月30日現在、1インドルピーは1.43円。
●リーズナブルな輸入車を買っても大丈夫？保証は？
今回リサーチに活用した「グーバイク」にも表記されているが、多くのショップでは、『2年保証（走行距離無制限）』などの「新車保証」が付いている。ただし一部のショップでは、保証制度を設けていない場合もあるので、購入前にしっかりと確認しておこう。
