前回、筆者がレストアベースのラビット・スーパーフロー125を路上復帰させるまでにかかった経費を紹介した。総額で43万円以上かかったのが安いか高いかは、持ち主の価値観次第で様々だろう。では中古車を買う場合、どの程度の金額が必要になるのだろう。個人売買、プロショップ双方の相場を調べてみた。
前回の記事でレストアベースのラビットを買い、自分で直して路上復帰させた場合の金額を紹介した。車両本体価格を含め、乗り出しまでにかかったのが43万9714円。でもこの金額はあくまで筆者の場合であって、例えばボディを直さないでいいなら15万円ほど安くなる。エンジンのオーバーホールをしなければクランクシャフトの加工代やベアリング、オイルシールなどの部品代も必要なかった。路上復帰に必要最小限の整備だけに止めるなら、おそらく車両代以外にかかったのは15万円ほどではないだろうか。
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では15万円で路上復帰させるという前提で、現在のヤフオク相場を調べてみよう。なんと最安値はレストアベースで13万円にもなる。さらに動くけれど整備が必要なものだと14万円、しっかり直してあるというもので27万8000円、30万円と続く。最安値を買って15万円かけて整備すると合計で28万円。でも外装は手付かずのままだから、直してある27万8000円を買った方が安いことになる。
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ではプロショップから中古車を買うとどうだろう。調べてみて驚いた。実はヤフオクで買ってもプロショップで買っても、あまり差がないのだ。いずれも実働状態で相場は25万円から40万円まで。これはバイクの中古車検索サイトに掲載されたもので、扱っているショップはどこも旧車に強いようなことが書いてある。だが、中古車に補償はない。買ってしばらくするとトラブルになる可能性もあるから、車体価格だけでなく整備代も見ておかなければならないだろう。
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中古車検索サイトに出ていない情報にも目を通しておきたい。例えば筆者も修理をお願いしたことがある都内の専門店だと、同じ最終型のスーパーフロー125でオールペイント済み、エンジンのシリンダーヘッドをオーバーホールしてあるもので33万円。経験から言わせてもらうと、この33万円の個体なら安心して乗れると思われる。
このように見てみると、古い鉄スクーター代表であるラビットのS301に乗るなら、どのような方法を選んでも30万円以上、40万円前後の金額が必要になるという結論だ。もちろん、どの方法を選んでも買って乗っているうちにトラブルは出るから修理代や部品代は必要になる。決して安い買い物ではないということだ。
意外な落とし穴は”燃料代”
ラビットに乗り出して驚くのがオイル代だろう。オイル代とは2サイクルオイルのこと。ラビットはガソリンにオイルを混ぜてエンジンを動かす2サイクル方式を採用している。現在2サイクルエンジンの市販車は世界中探してもごくわずかしかないが、80年代90年代くらいまでの小排気量バイクでは定番方式だった。比較的新しい年代のモデルだと2サイクルオイルは燃料タンクと別にオイルタンクがあり、オイルポンプによりガソリンと混合してくれる分離給油方式が多い。だがラビットのように古いモデルだと燃料タンクにオーナー自らオイルを混ぜてあげる必要があった。そして問題は、混ぜるオイルの比率なのだ。
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以前の記事でも書いたが、ラビットの場合ガソリン25に対してオイル1が必要。燃料タンク容量は8リッターだが、そこまで入れるとあふれることがあるため7リッターと仮定しよう。ガソリンを満タンにすると、同時にオイルを300cc近く入れなければならないことになる。現在レギュラーガソリンは1リッターあたり120円前後する。そして2サイクルオイルは安価なスズキCCISでも1リッター800円前後。
つまり1回の給油で1000円以上かかるということになる。燃費は街中だと1リッターあたり20km前後。1000円使っても140kmしか走れないのだ。
以前の記事ではライバルとしてベスパET3と比較した。ベスパはガソリンとオイルの混合比がラビットの半分ですみ、燃費は10km以上多く走ってくれる。同じ140km走るためにかかるガソリンとオイル代は600円ちょっと。いかにラビットが経済的でないか、お分かりいただけると思う。
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ではそのラビット、手放すときの価格はいくらになるのだろう。現在はバイク買取業者がネットにたくさん広告を出している。愛車を高く手放す方法として、これら業者を複数、同時に呼びつけて査定をさせるといいなどがネットに書かれている。だが、相手がラビットだとどうだろう。おそらくネット査定では10万円以上つくかもしれないが、実際に業者が見にきた場合、5万円になるかどうか。これが現実だ。
実際に筆者も愛車を業者に見てもらったことがあるのだが、レストアベースを買った時の金額にもならなかった。だとするなら、ヤフオクなどで個人売買に出すのが一番お得ということになる。
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つまり、現在ヤフオクなどの個人売買に出ているラビットの多くは、バイク買取業者の査定の安さに辟易した人が多いことの反動だろう。だから価格がプロショップの販売価格と変わらないことになってしまっているのだ。そう考えると、ラビットを買うというのは博打のようなもの。だって高い金額で直したり買ったりしても、手放すときは二束三文にしかならないのだから。
そうなのだ、ラビットを手にするなら長く乗るつもりでなければ楽しめないし、だったら徹底的に手を入れてあげたくなるのだ。手放すことを前提にしたら、手が出なくなるのがラビットなのだ。