VFR800FをベースにしたアドベンチャーモデルがVFR800X (RC80型)だ。外装のほか、主に足周りが大幅に変更されていて、オフでの走破性が向上されている。以前試乗したVFR800Fとの違いを比べながら、「X」独自の使い勝手やパフォーマンスをチェックしていこう!
REPORT:川越 憲(KAWAGOE Ken)
PHOTO&EDIT:佐藤恭央(SATO Yasuo)
VFR800X(キャンディープロミネンスレッド)……1,500,400円
一般的に、オンオフ両方の使い方ができるよう設計されたアドベンチャーモデルにも、前輪に大径ホイールを履いてオフロードの走破性を高めているものと、ロードスポーツと同様のホイールサイズを選択しているモデルがあるが、VFR800Xは後者である。VFR800Fと同径の前後ホイールサイズを採用していることから、オンロードモデル寄りの性格を持っていることが分かる。
跨ってみるとVFR800Fとはまるで違う!? バーハンドルが採用されたアップライトなポジションに最初は途惑った。燃料タンクとシートがスリムで、ロードスポーツというより、オフロードバイクに近いポジションだ。しかし、見た目はボリュームがあるのにV型エンジンとボディがスリムなため、足着き性は意外なほどよい。また、平均的な日本人の体形でも無理がないよう、大型オフロードバイクと比べるとグリップやステップ位置が近いので操作がしやすいと感じた。
ポジションがアップライトになってハンドル幅も広がったため大柄なイメージを受けるが、グリップ位置が手前にありライディングポジションは意外にコンパクト。タンクやエンジン周りがスリムなので足着き性は良好! ただ、身長182cmのテスターにはヒザの曲がりが大きくなり少し窮屈に思えた。シート高は815mmと835mmの2段階でアジャストできる(写真は835mm)。
⚫️ディテール解説
ヘッドライト下のフロントスポイラーは、ホンダのクロスオーバー・コンセプトモデル共通の特徴。ヘッドライトとエクステンション(リフレクターの延長部)でX型となるようデザインされている。
ウインドスクリーンは手動で高さ調節(5段階)することが可能。工具は必要ないため、出先でも簡単に変更できる。
ライダー側にオフセットされたテーパー状のバーハンドルにより、アップライトなライディングポジションとなる。フルデジタルメーターの採用で、コクピットはスッキリと整頓されたデザイン。スクリーンはツアラーとしては小ぶりだが、高速道路でのウインドプロテクションは十分
センターにアナログ式の回転計を置くVFR800Fに対し、VFR800Xはフルデジタル表示のLCDメーターを採用。ギアポジションや燃費計、グリップヒーターの段階表示(5段階)なども備えられている。
アルミツインチューブ式のメインフレームに、アルミダイキャスト製のシートレールを組み合わせは、各部の剛性の最適化を図りながらスリムなボディワークを実現。スリムなV4エンジンの特徴を、より一層生かすことに成功している。またV4エンジンにはVFR800Fと同様にハイパーVテックを採用。低・中回転域は2バルブで、高回転域になると4バルブに切り替わる機構で、全域にわたりトルクフルな加速が楽しめる。
VFR800Fと同様、2017年モデルで内部構造を3室から2室に変更した異形5角形マフラーを採用。従来のV4モデルより迫力があり、歯切れの良い排気サウンドとなった。
リヤサスペンションはVFR800Fに対してアクスルトラベルを28mm延長し、ロードスポーツとしては幅広い148mmを確保。イニシャルはリモコンダイヤルにより調整可能。
サスペンションの専用設計にともなって、VFR800Fに比べて後輪ブレーキのペダルストロークを変更し、コントロール性をアップさせた。
スイングアームはVFR800Fと共通。VFRシリーズのアイデンティティともいえる片持ち式で、アーム部はスーパースポーツタイプと同形状のやぐら型にすることで、ねじれ剛性のバランスを最適化している。
コンパクトなLEDテールランプの採用で、リアビューを引き締め、軽快な雰囲気を強調している。スリムだがパッセンジャーの居住性や、スマートなハードケース積載方式などの機能性も熟慮されている。
ナビなどの電源が取りやすい左カウル上にアクセサリーソケット(12V3A)を装備。シート下などに電源を増設できるようオプションの純正アクセサリーソケットも継続して販売されている。
■主要諸元■
車名・型式:ホンダ・2BL-RC80
全長(mm):2,190
全幅(mm):870
全高(mm):1,385
軸距(mm):1,475
最低地上高(mm):165
シート高(mm):835/815
車両重量(kg):246
乗車定員(人):2
燃料消費率*1(km/L):
国土交通省届出値定地燃費値 (km/h)…27.4(60)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(クラス)…19.2(クラス 3-2)〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):2.8
エンジン型式:RC79E
エンジン種類:
水冷4ストロークDOHC4バルブV型4気筒
総排気量(㎤):781
内径×行程(mm):72.0×48.0
圧縮比: 11.8
最高出力(kW[PS]/rpm):79[107]/10,250
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):77[7.9]/8,500
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式:セルフ式
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):20
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式6段リターン
変速比:
1速…2.846
2速…2.062
3速…1.578
4速…1.291
5速…1.111
6速…0.965
減速比(1次/2次):1.939/2.687
キャスター角(度):26° 30′
トレール量(mm):103
タイヤ:
前…120/70ZR17M/C(58W)
後…180/55ZR17M/C(73W)
ブレーキ形式:
前…油圧式ダブルディスク
後…油圧式ディスク
懸架方式:
前…テレスコピック式
後…スイングアーム式(プロリンク)
フレーム形式:ダイヤモンド(アルミツインチューブ)
■製造事業者/本田技研工業株式会社