
アドベンチャーカテゴリーを切り拓いた「Ténéré(テネレ)」ブランドのニューモデル「Ténéré(テネレ)700 ABS」が2020年6月5日に発売。乗車姿勢自由度の高い車体、耐久性や整備性の高さ、荷物積載時の高い適応力など、オフロードの走破性とツーリングでのユーティリティ性を高次元でバランスさせた、注目のアドベンチャーモデルだ。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
パワフルな72馬力!水冷4ストロークDOHC直列2気筒 270度クランク 688ccエンジン搭載





ヤマハは軽量ボディに水冷4ストロークDOHC直列2気筒270度クランク688ccエンジンを搭載したアドベンチャーモデル「Ténéré(テネレ)700 ABS」を2020年6月5日に発売する。
「Ténéré(テネレ)」とは、アフリカ大陸の遊牧民が話すトゥアレグ語で「何もないところ」という意味。「Ténéré(テネレ)」と名のついた初代モデルは、「XT600 Ténéré(テネレ)」。ヤマハにとって「Ténéré(テネレ)」ブランドは40年近い歴史があり、その名はパリ・ダカールラリーが行われていた頃の難所である『テネレ砂漠』に由来している。
1980年代当時のライダーは、テネレ砂漠のどこかに生えていると言われる幻の木を見に、「XT600 Ténéré(テネレ)」で行くという夢を描いた。ヤマハは「Ténéré(テネレ)700 ABS」の開発にあたり、『軽くて、ワクワクでき、世界のどこかに、いつかは行けるという夢を持つことができるバイク』という、「XT600 Ténéré(テネレ)」にあった“原点”に戻り、車両を設計した。
「Ténéré(テネレ)700 ABS」のコンセプトは、“Top of Adventure Ténéré”。具体的には、徹底的に“軽さ”にこだわっていること。オフロードではオンロードと比べ、三次元的な動きやダイナミックな動きをする場面が多く、バイクの軽さそのものが、バイクの運動性やライダーの車体コントロールのしやすさにつながる。
新開発の「Ténéré(テネレ)700 ABS」は、乗車姿勢自由度の高い車体、高い耐久性や整備性、荷物積載時の高い適応力など、オフロードの走破性とツーリングでのユーティリティ性を高次元でバランスさせているのが特徴だ。
「Ténéré(テネレ)700 ABS」には、7つのポイントがある。それは、
・パワフルでトルクフルな270度クランクエンジン
・オフロード走破性を徹底追求した吸気・排気系
・オフロードでのポテンシャルを支える軽量で強靭なボディ・
・走破性を支える前後サスペンション
・初期タッチやコントロール性に磨きをかけたブレーキ
・自由度の高いライディングポジション設定
・ラリーの血筋を感じさせるスタイリング
各ポイントの詳細を探ってみよう。
パワフルでトルクフルな270度クランクエンジン

「クロスプレーン・コンセプト」 に基づき開発された直列2気筒688ccエンジンは、低中速の豊かなトルクと、高回転の伸びやかさが特徴。エンジン特性に合わせ2次減速比を最適化し、本格的なオフロードライディングと日常的な市街地走行での扱いやすさを両立している。
「クロスプレーン・コンセプト」とは、慣性トルクが少なく、燃焼室のみで生み出される燃焼トルクだけを効率良く引き出す設計思想のこと。
オフロード走破性を徹底追求した吸気・排気系

エアクリーナーボックスは吸気ダクトの向きを進行方向とし、後輪からの砂埃等の吸い込みを抑制するなど十分な吸気容量を確保。コンパクト設計のエキゾーストパイプと別体式サイレンサーといった排気系や、冷却ファンやグリルを新設計したラジエーターといった冷却系とともに、オフロードのさまざまなコンディションで高い走破性を発揮する安定性に磨きが掛かっている。
オフロードでのポテンシャルを支える軽量で強靭なボディ

フレームはヤマハ伝統の軽量・スリム・コンパクトを追求し新設計。形状はダブルクレードルタイプで、素材には高強度で軽量な高張力鋼管を採用し、オフロード走行に必要な剛性を確保しつつ、しなやかな乗り心地を実現。さらにアルミ製のリアアームを採用するなど軽量化を推進している。
走破性を支える前後サスペンション

フロントサスペンションは43mm径インナーチューブの倒立式を採用し、優れた接地感とショック吸収性を確保。アンダーブラケットやハンドルクラウンもサスペンションに合わせて強度バランスを整え、倒立らしい自然な操舵感を引き出している。
リアはリンク式モノクロスサスペンションは、減衰特性とバネ定数、リンクレシオの最適化で、一般路での快適な乗り味とハードな走行での粘り強い特性を両立。プリロード、圧減衰、伸減衰の調整が可能。一般路から砂漠地帯のような過酷なオフロードコースまで幅広く対応する走行性に磨きを掛けている。

初期タッチやコントロール性に磨きをかけたブレーキ

前後ブレーキは最適設計のウェーブディスクに加え、軽量・コンパクトなブレンボ製キャリパーを採用。初期タッチ、制動力、コントロール性、リリース特性など優れたバランスを追求。さらにオン・オフ切替え可能なABSを搭載。
自由度の高いライディングポジション設定

シート高875mmのフラットシートとスリムなタンクとのバランスを調整し、自由なライディングポジションを獲得。また、ライディングポジションに重要な3点(フート・ヒップ・ハンドル)の位置関係を最適化することで、疲労感の低減も実現。

ラリーの血筋を感じさせるスタイリング

スタイリングやデザインは、ヤマハのデュアルパーパスタイプのシリーズ「XT」や「WR」が持つ、ラリーイメージを継承。さらに機能部品であるヘッドランプやタンクに特徴的なアレンジを加え、新しいモダンラリーバイクのプロポーションを提唱。








シート高を約38mmダウンさせた「Ténéré700 ABS Low」


「Ténéré(テネレ)700 ABS」の発売に合わせ、ローシート&ローダウンリンク装備し、約38mmシート高を下げたアクセサリーパッケージ「Ténéré(テネレ)700 ABS Low」も登場。小柄なライダーでも、より安心して乗車できるのがポイントだ。
「Ténéré(テネレ)700 ABS Low」は、シート高が875mmの「Ténéré(テネレ)700 ABS」をベースに、
・スタンダードからシート高を約20mm下げる、形状にも工夫を凝らし、数値以上に足着き向上に効果を発揮するローシート
・リアサスペンションのリンク長を変更し、シート高を約18mm下げるローダウンリンクキット
の2点パーツ(合計3万5800円)を装備しつつも、価格は「Ténéré(テネレ)700 ABS」と同額としているのが嬉しいところ。ちなみにローシートは2万7500円(税込)、ローダウンリンクキットは1万1880円(税込)で販売される。


Ténéré700 ABSディテール解説





認定型式/原動機打刻型式:2BL-DM09J/M415E
全長×全幅×全高:2,370mm ×905mm ×1,455mm
シート高:875mm
軸間距離:1,595mm
最低地上高:240mm
車両重量:205kg
燃料消費率*1
国土交通省届出値 定地燃費値*2:35.0km/L(60km/h) 2 名乗車時
WMTC モード値(クラス)*3:24.0km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1 名乗車時
原動機種類:水冷4 ストロークDOHC 4 バルブ
気筒数配列:直列2 気筒
総排気量:688cm³
内径×行程:80.0mm×68.5mm
圧縮比:11.5:1
最高出力:53kW (72PS)/ 9,000 r/min
最大トルク:67N・m(6.8kgf・m)/6,500 r/min
始動方式:セルフ式
潤滑方式:ウェットサンプ
エンジンオイル容量:3.0L
燃料タンク容量:16L(「無鉛レギュラーガソリン」指定)
燃料供給方式:フューエルインジェクション
点火方式:TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式:12V, 8.6Ah(10HR)/YTZ10S
1 次減速比/2 次減速比:1.925(77/40)/3.066 (46/15)
クラッチ形式:湿式,多板
変速装置/変速方式:常時噛合式6 速 / リターン式
変速比:
1 速2.846 / 2 速2.125 / 3 速1.631 / 4 速1.300 / 5 速1.090 /6 速 0.964
フレーム形式:ダブルクレードル
キャスター/トレール:27°00′/ 105 mm
タイヤサイズ(前/後):90/90 -21M/C 54V/150/70 R18 M/C 70V (前後チューブタイプ)
制動装置形式(前/後):油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ:LED/LED
*1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
*2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。
*3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。