2018年デビューの15代目トヨタ・クラウンのRSは、先代までの「アスリート」に代わるスポーツグレードだ。今回は、ノン・ハイブリッド仕様である2.0ℓ直4ターボエンジン搭載の「RS advance(2WD )」に試乗した。スポーツグレードらしからぬ、ごくごく普通の走り、できるだけアクセルを深く踏み込まないで走ったらどうだったか。
第十五代目クラウンはTNGA GA-Lプラットフォーム
第十五代目、と聞くと、なんだか歌舞伎の片岡仁左衛門かと思ってしまうが、もちろんトヨタが誇るクラウンの最新モデルだ。2018年にフルモデルチェンジを受けた現行型はTNGAの縦置きプラットフォームのGA-Lプラットフォームを使う。パワートレーンは2.5ℓ直4NAエンジン+モーターと3.5ℓV6 NAエンジン+モーターのハイブリッドと、今回試乗した2.0ℓ直4ターボの3種類ラインナップする。今回選んだのは2.0ℓ直4ターボのRS Advanceである。もっともスポーティなクラウンであり、2.0ℓ直4ターボ搭載の最上級モデルでもある。
あらためて自宅ガレージに納めてみると、変わったボディ・ディメンジョンであることがわかる。全長×全幅×全高:4910mm×1800mm×1455mm ホイールベース:2920mmは、長さはメルセデス・ベンツならEクラス、BMWなら5シリーズなのに、幅はCクラスや3シリーズより狭いという、ちょっと細長いボディサイズである。「ニッポンの高級車のあり方」をずっとリードしてきたクラウンだからこそのディメンジョンなのだが、やはりちょっと華奢な感じがする。それに対して、フロントグリルの主張は強い。好き嫌いがわかれそうなデザインだが、どこからどう見てもクラウンに見えるのは、さすが、である。
クラウンのRSグレードは、先代まででいえば「アスリート」グレードに当たるモデルで、つまりは、「オレは”クラウン”を選ぶニッポンのおじさんじゃなくて、”アスリート”を選ぶスポーツマン(あるいは、元スポーツマン)なのだ」というユーザーに向けてのクルマである(と筆者は思っている)。
となると、ライバルはBMWやメルセデス・ベンツCクラスとなるわけだ。ボディサイズで肩を並べる5シリーズやEクラスは2.0ℓターボ搭載のクラウンとは価格帯が違う(もっと高い)。
さて、クラウンRS Advanceが搭載する2.0ℓ直4DOHCターボは、8AR-FTS型。直噴とポート噴射を併用するトヨタ得意のD-4STを使い、ツインスクロールターボで過給する。パワースペックは
最高出力 245ps/5200-5800rpm、最大トルク 350Nm/1650-4400rpm
である。
これを仮想ライバルの3シリーズに当てはめると、
BMW 320i 533万円(消費税10&で) 184ps/300Nm
よりはハイスペックで
BMW 330i Mスポーツ 644万円 258ps/400Nm
とよりやや劣るというスペックになる。
前述したように、クラウンRS Advanceは、「ボディサイズ(長さ)は5シリーズ/Eクラス並み、エンジンスペックは330i並み、価格は320i並み」ということになる。
と前置きが長くなったが、クラウンRS Advanceに400kmほど試乗してみた。向かった先はツインリンクもてぎである。トータルで400km走行したが、市街地2割、高速8割(渋滞あり)だった。
スポーツ・グレードといっても、きょう日245ps/350Nmはさして強力ではない。車重が1730kgもあるから、すごく速いというわけでもない。BMW330i Mスポーツは100kg軽い1630kgである。今回はあえてアクセルをじわっと踏んで、「スポーツしない運転」を心がけてみた。なぜか? 借り出して少し乗った時点で、あれ?これ、燃費悪くない?と思ったからだ。RSといえば「Racing Sport」あるいは「Racing Special」かと思うが、クラウンでサーキットを走る人は少ないだろう。通常はごくごく穏やかに、家族や仕事仲間を乗せて走るはず。であるなら、それをイメージしてドライブしてみるのもいい(サーキットで自在にクルマを振り回せるドライブスキルもないのだが)。
クラウンらしい乗り心地というのがどういものかわからないが、フワフワした感じはない。良くも悪しくもそれがクラウンのイメージだから、ここは「アスリート」「RS」らしい感じである。
もっとも気になったのはフロントシートだ。白い本革シートは、パーフォレーション(細かい孔が開けられている)加工がされたシートだが、お尻が滑る(23万7600円消費税8% レザーパッケージオプションだが、もし筆者が買うならオーダーしない)。
思い込みだけではいけないので、測ってみた。
クラウンRSは腿裏がシートに触れるところまでで長さ48cmくらい。
BMW320d(先代F30型)が53cm(アジャストできる機構付きでさらに伸ばせる)。
である。この小ぶりなシートのせいかどうかはわからないが、試乗中ずっとシートポジションを修正し続けていた。最後までベストポジションを決めることができなかった。
クラウンを選ぶ人がみな小柄な人ということはないと思うのだが、なぜこのサイズなのだろうか?
このレポート(同じ個体)で、燃費を意識せずにドライバーしたときの燃費が11.1km/ℓという報告があるから、運転の仕方による燃費の悪化はあまりないかもしれない、ということも追加しておく。
400kmドライブしての結論は、
筆者なら2.0ℓターボではなく、2.5ℓハイブリッドを選ぶ。ほぼ同価格の2.5RS(551万6500円)ならWLTCモード燃費は20.0km/ℓ。しかし、クラウンならRSではなく、もっと「クラウン的王道グレード」を選ぶ。2.5G(572万5500円)ならWLTC燃費も23.4km/ℓ。正直、トヨタ車を選ぶなら、THS2モデルに限ると個人的には思っている。どんな走り方をしても燃費は抜群だし、EV走行の静かさと滑らかさはクラウンに相応しい。
もっといえば、スポーツ・セダンがほしいなら、BMW3シリーズを選ぶ……と言ったら、身も蓋もないか……。
トヨタ・クラウンRS Advance(2WD)
全長×全幅×全高:4910mm×1800mm×1455mm
ホイールベース:2920mm
車重:1730kg
サスペンション:F/Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:2.0ℓ直列4気筒DOHCターボ
型式:8AR-FTS
排気量:1998cc
ボア×ストローク:86.0×86.0mm
圧縮比:10.0
最高出力:245ps(180kW)/5200-5800pm
最大トルク:350Nm/1650-4400rpm
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)+ポート噴射(D-4ST)
燃料:無鉛プレミアム
燃料タンク:66ℓ
燃費:JC08モード 12.8km/ℓ
WLTCモード燃費 12.4km/ℓ
市街地モード 8.7km/ℓ
郊外モード 12.6km/ℓ
高速道路モード 15.1km/ℓ
トランスミッション:8速AT
車両本体価格:559万4400円(消費税10%の現在は569万8000円)
試乗車はオプション込みで633万9060円(消費税8%時)