2020年度(令和2年)中に「交通事故死をゼロにする」という目標達成に向け、今、警察庁を中心に、交通取り締まりの強化体制が着々と整備されている。前回、解説した「移動オービス」の全国的な配備、「ながら運転」の罰則強化、そして、いよいよ「あおり運転」に関しても、警察庁は明確な法制化を図るべく、検討を始めたようだ。さらに、この9/21から始まる「秋の全国交通安全運動」における取り締まり重点項目としてあげられているのが、「横断歩道」と「生活道路」。前回に続いて今回はそれら3つのキーワードについて検証してみよう!
☆5つのキーワード
1.「移動オービス」(PART1)
2.「ながら運転」(PART1)
3.「あおり運転」
4.「横断歩道」
5. 「生活道路」
3. 「あおり運転」:ついに、罰則強化に向け、警察庁が検討開始!
8/27、警察庁が「あおり運転」に関する罰則強化の検討について、自民党の交通安全対策特別委員会で説明を行った。
もちろんこれは、1昨年の東名高速での悲惨な死亡事故、そしてこの8月に常磐自動車道で発生した傷害事件などを受けてのことだが、確かに現状では道路交通法に「あおり運転」という言葉は存在せず、その行為によって死傷事故や暴行事件が起こらない限り、警察は「車間距離不保持違反」や「急ブレーキ禁止違反」などの、いわゆる軽微な違反として反則切符を切るしかなかった。
また、東名高速の死傷事故でも、「あおり運転」と他車によって生じた「死傷事故」の関連性を具体的に証明することができなかったために、結果的に裁判所が民意を尊重し、法律の拡大解釈によって、被告に懲役刑を科したことは記憶に新しい。
もちろん、警察庁も手をこまねいて見ていただけではなく、昨年1月に悪質な「あおり運転」に対しては、「道路交通法108条第1項第8号(免許を受けた者が自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあるときは、点数によらず免許取り消し、あるいは180日間の免許停止に処する)の適用を視野にした取り締まりを行いなさい」という通達を出しているのだが、現場の判断によってその都度対応するやり方では、不公平感を生む可能性もあることは事実。そこで、きっちり法制化するという結論に達したわけだ。
いまのところ具体案等は一切、示されていないだけに、果たして「あおり運転罪」なるものを定めようとしているのか、それとも、その要因となる車間距離不保持違反などの反則行為の点数や反則金をアップさせようというのかは不明。いずれ「試案」が公開されパブリックコメントの公募が行われるはずだ。
とにかく、そもそも、スピード違反や駐車違反などのわかりやすい違反に比べて、「あおり運転」の定義には曖昧な要素が多く、とかく「冤罪」が生まれやすいもの。事実、今朝(9/3)、岩手県大槌町の副町長にあおり運転の嫌疑がかけられ、その副町長と通報者の証言が食い違っていることが報道されたが、今後もこのような事件があっちこっちで多発することは目に見えている。果たして「悪意」があったのか、それとも「いいがかり」なのかを誰がどう判断するのか、なかなか難しいものがあるからだ。しかも、やろうと思えば罪のないドライバーを無実の罪に陥れることだってできるからだ。
いずれにしても、今後、我々ドライバーが、このような事態に巻き込まれないためには、他車に疑念を抱かさないような慎重な運転を心がけるしかない。それでも「いいがかり」をつけてくる悪質なドライバーには、ドライブレコーダーで対抗しよう。できればフロントだけではなく、リアへの装着もお勧めしたい!
4. 「横断歩道」:横断中、あるいは横断しようとしている歩行者がいたら赤信号と同じ、ということを心得よう!
横断歩道での「歩行者妨害」。これも、最近になって脚光を浴びてきた(?)違反であり、今後、取り締まりが強化される違反であることは間違いない。
が、以前、JAF(日本自動車連盟)の調査で明らかにされたように、信号のない横断歩道を歩行者が渡ろうとしているのに、手前で停止したドライバーはわずかに8.6%! これは、横断歩道というものに対するこの国のドライバーの意識の低さを象徴しているといえるだろう。
まずは、道路交通法により定められている横断歩道関連の条文を確認してみよう。
というわけで、乱暴にまとめちゃうと、
・横断歩道を歩行者が渡っていたら、一時停止
・渡ろうとしている歩行者がいたら、一時停止
・横断歩道手前にクルマが止まっていたら、一時停止
・横断歩道のそばに歩行者や自転車がいたらスローダウン
・横断歩道手前30m以内は追い越し&追い抜き禁止
つまり、フツーに通過できるのは視界に歩行者や自転車、そして駐車車両がいないときのみということになるにもかかわらず、91.4%のクルマがこの法律を無視しているというわけだ。となれば「交通事故死をゼロにする」目標をやっきになって達成しようとしている警察がこれに目をつけないわけはない。特に来年は東京オリンピックの年。歩行者優先意識の高い欧米人が大挙して日本を訪れるとなれば、なおさら、なのだ。
ちなみに、この違反に対する罰則は、「3年以下の懲役、または5万円以下の罰金」となっているが、ほとんど反則金制度(青切符)が適用されるので、「反則金9,000円(普通車)/基礎点数2点」となる。この9/21から始まる秋の全国交通安全運動でも、ガチに本気で取り締まりが強化されることが予想されるので、今のうちに横断歩道に対する意識をアップさせておきましょう!
5. 「生活道路」:学校や幼稚園、病院のそばに注意!
交通取り締まり、特に速度取り締まりの拠点が、幹線道路からゾーン30などの生活道路へ移されているというのはご存知の通り。が、取り締まりが強化されるのは、なにもスピード違反だけではない。幼稚園や小学校に通う園児や生徒、病院通いの高齢者、そして自転車などの、いわゆる死亡率の高い交通弱者を守るために、事故につながる違反を徹底的に取り締まろうという意図のもとに、取り締まり強化を図るというのは、警察庁の方針でもあるのだ。
中でも注意すべきなのは、一時停止違反。ご存知のように細い道や一方通行などが多い生活道路では、一時停止箇所が多く、また同時に事故多発地点でもある。タイトルの写真のようにクルマなどの陰に隠れた(そこ不法侵入じゃないの?)取り締まりが行われているので、停止線前で完全に停止するようにしよう。止まったつもりでも「タイヤが完全に止まっていなかった」と難癖付けられて容赦なく切符を切られるケースがままあるからだ。
また、スクールゾーンなど、時間帯による進入禁止区域についうっかり入ってしまうというのはよくあること。本来であれば違反を防ぐために入り口より手前で注意喚起するべきなのだが、彼らはほとんどといっていいほどエリア内で待ち伏せしている。日曜日や平日の昼間など、抜け道として使っている勝手知ったる道でも、進入前に標識に書いてある文字をよく確かめること。特に、平日の朝(7:00~8:30)と夕方(15:00~)は要注意!
さらに、通学や通園の妨げになるということで、取り締まりが強化される可能性が高いのが、駐車違反。駐車監視員制度のおかげで人が乗っていれば駐車違反にならないと思い込んでいる人が多いが、「人が乗っていようが乗っていまいが」駐車禁止場所にクルマを駐めたら立派な駐車違反であることを再認識しましょう!
というわけで、前回と合わせて5つのキーワードを紹介したが、もちろん、それ以外にも注意すべき点は山ほどある。警察は今、以前と違って明確な意志のもとに本気で交通取り締まりを強化しようとしていること、そして警察庁はやると言ったら必ずやるということを、もう1度、認識してほしい。