三菱復活の夢を乗せ、独自開発の新型クロスオーバーSUVエクリプスクロスがデビューしたのは、2018年のこと。すでに、昨年末には一部改良を実施。今年6月には待望のクリーンディーゼルを追加した。発売より1年を経過した今、改めてエクリプスクロスに迫ってみた。
REPORT&PHOTO●大音安弘(OHTO Yasuhiro)
スタイル最優先に見えるものの……
ホンダ・ヴェゼルとトヨタC-HRを中心に熱い戦いが繰り広げられる都市型コンパクトSUV市場に、三菱が戦いを挑んだのが、「エクリプスクロス」だ。三菱にとって、実に4年ぶりの新型車であることも話題となったが、パジェロに代表されるように、SUVには一過言あるメーカーだけに、このマーケットにも、ヴェゼルよりも早い2010年に、平成ヒットモデル「RVR」の名を復活させたコンパクトなクロスオーバーSUVを投入するも、不発……。エクリプスクロスは、そのリベンジを掛けたモデルといえるわけだ。
エクリプスクロス最大の特徴は、やはりスタイル。「ダイナミックシールド」デザインを取り入れたシャープなフロントマスクをはじめ、クーペライクなルーフライン、スポーツハッチを彷彿させるリヤスタイルなど、まさにイケメン仕立て。プリウスのような2分割式リヤガラスを採用したテールゲートもデザイン性を高めている。
ボディサイズは、全長4405㎜×全幅1805㎜×全高1685㎜、ホイールベース2670㎜となり、実は、トヨタC-HRよりもやや大きい。とはいえ、かつてのコンパクトSUVの代名詞であった日産エクストレイルなどは、最新世代が、より大型化してしまったため、十分コンパクトといえるものだ。
インテリアは、黒を基調としたもので、スポーツタイプのフロントシートを装着するなどスポーティさを意識したもの。試乗車は、ダッシュボード上にインフォメーションディスプレイを備えた「Gプラスパッケージ」のため、シフトレバー横に、タッチバッドコントローラーが備わる。レイアウトやデザイン自体は、割とオーソドックスで、使い勝手も悪くない。
しかし、後付け感のあるタッチパッドコントローラーが、全体のデザインバランスをスポイルしている。ただ他グレードでは、タッチパッドは存在せず、インフォメーションディスプレイの代わりに、ダッシュボード中央の最上段に2DIN用のスペースが設けられる。
室内空間は、外観から想像するよりも広々している。特筆すべきは後席スペースで、200mmのスライド機構を備えることで、大人が座っても足元にゆとりがある。意外にもクーペライクなルーフの影響はなく、頭上空間もしっかりと確保。後席スライドを最前部にしてみても、膝が前席背面に触れることもなく、必要十分なスペースはしっかりと確保されている。しかも9段階のリクライニング機能まで備わり、コンパクトとはいえ、かなりのおもてなし上手。
ちなみに後席用のアクセサリーソケットは備わるが、USBソケットはなし。ここまで快適性を重視するなら、USB充電まで行えれば、言うことなしだが。
お次はラゲッジスペース。自慢のスタイルの犠牲になっていることを心配しつつ、テールゲートを開けてみると、こちらも意外と広い。標準時(リヤシート最前端スライド時)で、448Lを確保しているというから必要十分。2分割可倒式シートとスライド機構を上手に組み合わせれば、使い勝手は良さそうだ。また4WD車でも床下収納が備わる点もマル。
メカニズムを見ていくと、試乗したガソリン車の場合、パワートレインは、1.5L直列4気筒DOHCターボにINVECS-Ⅲ8速スポーツモードCVTを組み合わせる。スペックは、最高出力150ps/5500rpm、最大トルク240Nm/2000~3500rpmを発揮。パワーよりも常用する低回転でのトルクバンドを意識したセッティングだ。さらにレギュラー仕様であることは、うれしいところ。FFか4WDが選択可能で、4WDには、車両運動統合制御システム「A-AWC」が組み合わされる。
さて、エクリプスといえば、三菱のスペシャルティカーに使われてきたネーミングである。その名を受け継ぎ、スポーティなスタイリングから想像させるのは、やはりワクワクさせる走りだろう。私も、さぞやスポーティ(俊敏性重視)な味付けなのだろうと胸を膨らませていた。
ところが、市街地の試乗で感じたのは、想像とはまったく異なるものであった。軽やかなステアリング、ソフトな足回り、ターボ感の薄い従順なパワートレインなど、尖っているどころか、かなりの優等生キャラなのだ。後方視界も2段式ガラスのテールゲートのお陰もあり、悪くない。広いキャビンと合わさって、まさにファミリーカーとしての素質も十分持ち合わせているといえる。お洒落なイケメンは、イクメンでもあったというわけだ。
ただ、この話には続きがある。この結果をもたらした秘密にこそ、エクリプスクロスの正体があるのだ。
エクリプスクロスもほかの三菱SUV同様に、最低地上高、アプローチアングル、ディパーチャーアングル等のオフロード走行を加味したディメンションを持つ。悪路を行くなら、柔軟な足回り、路面を的確に捉えるステアリング、自然吸気エンジンのような粘りあるパワートレインが必要というわけだ。
つまり、三菱SUVのDNAを受け継いでいるからこその味付けなのである。
エクリプスクロスは、道を選ばず。そういう意味では、今もスペシャルな存在であり、まさにエクリプスの名が相応しいモデルといえよう。
因みに、クリーンディーゼル車も基本的な味付けは同様。個人的には、パワートレインは、用途と好み次第だと思う。ただカッコいい電動パノラマサンルーフは、重心高に繋がっている様子。舗装路でのスポーツカー的な走りを重視する人にはお勧めしない。
エクリプスクロス Gプラスパッケージ(4WD)
全長×全幅×全高:4405×1805×1685mm
ホイールベース:2670mm
トレッド(前/後):1545/1545mm
車両重量:1550kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボ
排気量:1498cc
圧縮比:10.0
最高出力:110kw〈150ps〉/5500rpm
最大トルク:240Nm/2000-3500rpm
燃料タンク容量:60L
トランスミッション:CVT(INVECS-Ⅲ8速スポーツモードCVT)
駆動方式:フロントエンジン・オールホイールドライブ
乗車定員:5名
サスペンション形式(前/後):マクファーソンストラット/マルチリンク
タイヤサイズ:225/55R18
JC08モード燃費:14.0km/L
車両価格:310万7160円