アメリカン・スペシャリティカーの代表と言ってもいい「シボレー カマロ」。6代目となって再び日本に導入されたこの新型カマロは、その昔とはちょっと違う出来栄えで話題だ。やたらと”スポーツ”というキーワードが使い倒されている今だからこそ、このスペシャリティカーの醍醐味を知って頂きたい。
PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
トランスフォームできそうな勢い!
「シボレー カマロ」と聞いて何を思い浮かべるだろうか? 世代によってその答えはさまざまだと思う。中高年の方なら“アメリカンスペシャリティカー”、若者であれば映画「トランスフォーマー」をイメージするのかもしれない。いずれにしても、いい意味でデカくて豪快、そしてパワフルな2ドアクーペとして記憶しているはずだ。何はともあれ、2017年も後半になってから、このカマロがにわかに注目されはじめているのは確か。日本に上陸したのも久々、一時はその存在すら忘れられていたものの、ついに復活を果たし、この日本にも導入されたというわけである。
この6代目カマロ、実はその昔とは違って、だいぶ洗練された印象だ。なんせ、シャシーはキャデラックのCTSやATSと共通。最新のキャデラックを知る人ならば、その完成度の高さを分かっているはずだが、とにかく軽くて強靭! “剛性命!”とする欧州勢にまったく引けを取らない骨格をベースとするのだから、昔のようなユルさなど微塵もない。走り出してからすぐにわかるほど、“シャキッ”としているのが新型カマロの第一印象である。
ラインアップされるのは、6.2ℓ V8 OHV“LT1”を搭載する「カマロSS」と、なんと4気筒DOHCターボを積む「カマロLT RS」、そしてそのオープン仕様の「カマロ コンバーチブル」の3モデル。今回は、当然トップモデルのカマロSSと、4気筒を試す意味でも「カマロ コンバーチブル」の2台を試乗した。
もちろん、はじめは「カマロSS」からスタートしたのだが、これが、お世辞抜きに良い。と、ひと事で表現してしまうと誤解されそうだが、スペシャリティカーにしては、あまりにも“まとまり”すぎている。というのは、とにかくその走行性能に度肝を抜かれたからだ。全長4780mm、全幅は1900mmもの車格をもつにもかかわらず、走り始めると、そのサイズ感を思わせないほど、しっかりと路面とコンタクトをとる(5代目カマロよりひと回りほどコンパクトに仕上げられているのもあるが)。
このあたりは、キャデラックのCTSやATSと共通する点なのだが、しかし、さらに驚くべきは、コルベット譲りのLT1エンジンを、8速トルコンATを介して、きっちりとトラクション性能を活かしているところ。全4種類のドライブモード(ツアー=ノーマル/スポーツ/トラック/スノー&アイス)をもつ中でスポーツを選択し、アクセルを意図して多めに踏みつけると、豪快な加速とともに路面を噛むかのように突進した。無論、その時のエキゾーストノートもけたたましいくらいで、“これぞカマロ!”と唸らせる。まさに“トランスフォーム”できそうな勢いだ。
おまけにブレーキには、ブレンボのハイパフォーマンスブレーキシステムまで奢られているから抜かりなし。それに加え、カマロとしては初となるマグネティックライドコントロールの足まわりをもつとあって、安心感まで得られるのだから、その昔の“アメ車”とは違う。となれば、もしかしたらコーナリングも……と期待して、ちょっと攻め込んでみた。
すると、さすがに“曲がる”をメインにしていないのが、すぐに判明。ただし、これをネガティブにとらえてはいけない。つまり、6代目になってもカマロの精神は新しい解釈で貫かれている証だ。カマロはあくまでも“スペシャリティカー”であって、アメリカンGTとしての魅力がある。もちろん、その昔から比べれば、かなり曲がるクルマにはなっているが、忘れてはいけないのは、カマロはリアルスポーツカーではないということ。だから直線番長でいいのである。かえってそのほうが、存在意義があるというものだろう。もし、コーナリングも……などと欲張るのであれば、コルベットを選択すればいい。
とはいえ、カマロSSの魅力は、それだけではない。453pa&617Nmを発揮するV8 OHV“LT1”ユニットは、コルベットよりも、このカマロにこそ相応しいと思うくらいに、その良さを引き出せている。正直、コルベットのLT1は、シャシーがリアルスポーツカーとして造られているだけに、ちょっと物足りなく感じてしまうのだが、これがカマロになると“巨大なボディ”とあいまって周りを蹴散らすような加速を体験させてくれるから面白い。
ほど良い、4気筒のカマロ コンバーチブル。
そしてカマロSSの豪快さを味わった後、4気筒ターボを積む「カマロ コンバーチブル」に乗り換えた。さすがにパフォーマンスには期待していなかったのだが、これはこれで魅力があると思えた。というのは、そもそものコンセプト、つまりスペシャリティカーとしては、必要十分な条件を満たしているからだ。
当初は“4気筒か……”と思っていたものの、いざ走り始めると、ターボを活かした加速に不満はないし、何しろ乗り心地は極めて快適。特にコンバーチブルであることを思えば、これくらいのほうが合っていると思う。気持ち的に“ゆるーく”走りたいと思う向きには最適だろう。性能的にも275ps&400Nmあるから文句はないはずだ。かつてあったV6のカマロに代わる存在として、十分だと思う。
と、褒めちぎってばかりいたが、実はすべてにわたって“イイ”とは言えないのも事実。それは、インテリア全般の出来栄え。価格から考えると、正直ややチープに感じてしまうのは否めない。中でもダッシュボードの“プラスチッキー”なところは、非常に残念だ。デザインはカマロらしくて良いのに、なぜ質感にこだわらなかったのか、と言いたい。同じグループに属する、兄弟車といってもいい、キャデラックのCTSやATSがあれだけ高い質感をもっているのに……と疑問が残るばかりだ。
そうとはいえ、「カマロSS」に関しては、あの豪快なパフォーマンスからすれば、価格設定は非常にリーズナブルに感じる。何しろ、6,458,400円(税込)である。それに対して「カマロ コンバーチブル」は、6,026,400円と微妙。これをどう解釈すればいいのやら……。
【SPECIFICATIONS】
シボレー カマロ SS
■ボディサイズ:全長4780×全幅1900×全高1340㎜ ホイールベース:2810㎜ ■車両重量:1710㎏ ■エンジン:V型8気筒OHV 総排気量:6153cc 最高出力:333kW(453ps)/5700rpm 最大トルク:617Nm(62.9㎏m)/4600rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■ステアリング位置:左ハンドル ■サスペンション形式:前マクファーソン 後マルチリンク ■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:前P245/40ZR20 後P275/35ZR20 ■車両本体価格:645万8400円(税込)
【SPECIFICATIONS】
シボレー カマロ コンバーチブル
■ボディサイズ:全長4780×全幅1900×全高1350㎜ ホイールベース:2810㎜ ■車両重量:1670㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1998cc 最高出力:202kW(275ps)/5500rpm 最大トルク:400Nm(40.8㎏m)/3000-4000rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:RWD ■ステアリング位置:左ハンドル ■サスペンション形式:前マクファーソン 後マルチリンク ■ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク ■タイヤサイズ:前後P245/40R20 ■車両本体価格:602万6400円(税込)