ざっくり、こんなバス
- あの夜行バス車両が豪華バスに大変身! 客席数はわずか12席!
- シートはドイツから直輸入! 内装は地元製を使用
- 四季折々のツアーの数々! 日帰りのコースも
目次
ゴールドを基調とした気品のある外観デザイン
西鉄の新バスツアーブランド「GRANDAYS(グランデイズ)」は、「新しさ」「ひとつ上のサービス」「上質な旅」を求める人に、豪華なバスを使ったツアーを提供するために誕生しました。
ツアーに使用されるバスに求められたのは、「ホテルのようにくつろげる上質な空間」。「One-Seat HOTEL」をコンセプトに、外観、内装すべての部分において、こだわりをもって製作されています。
外観は、ゴールドを基調とした気品のある車体デザインが特長。ツアーブランド「GRANDAYS」のロゴも誇らしげに映ります。
ベースになった車両は、j-bus製の日野セレガSHD。かつて日本最長夜行バスとして運行していた「Lions Express」(福岡~横浜・池袋・大宮、現在は廃止)の専用車を、約6,000万円かけて改造されました。
長距離夜行バスの車両が、このような豪華バスに生まれ変わるというのも、いちバスファンとしては感慨深いものがあります。
ドイツから直輸入した専用シート
早速、車内に入ってみましょう。
車内は、2名掛けシートを6列に配置。客席数12席のゆったりとした特別仕様です。大理石調のタイルカーペットと木目調の内装も相まって、ホテルのような高級感を醸し出しています。
大理石調のタイルカーペットを敷いた通路は、進行方向左側に配置。手すりも設置されています。
シートは、高級本革を使用したドイツ直輸入のシートを採用しています。お聞きしたところ、1脚およそ90万円以上するとか。高級車の様なシートで、腰かけた際の感触もなかなかのものです。
シートを倒すと、このようになります。長時間の旅行を快適に過ごせるよう、レッグレストが完備されています。
車内最後部には、添乗員席が設置されています。
通常の観光貸切バスは、車内最前部の運転席横に添乗員席が設置されていますが、このバスでは一部のツアーでドリンクサービスなどを行うことから、車内最後部に添乗員席を設置しています。
地元産「大川家具」をふんだんに取り入れた内装
車内に入って真っ先に感じたのは、「ぬくもり」「暖かさ」でした。
それもそのはず、実は内装には地元福岡県の「大川家具」を採用。内装の壁にはもちろん、後述のクローゼット、座席と座席の間の仕切りなど、至るところに取り入れられています。
座席と座席の間の仕切りには、ドリンクホルダーや読書灯スイッチ、調光式テーブルライトが設置されているほか、座席テーブルも内蔵されています。
座席テーブルは、仕切りのカバーを開け、引き出して使用します。テーブルも大川家具製です。
収納スペースも充実しています。座席前には、クローゼットと小物置き、小物入れを設置。衣類やちょっとした小物類を収納するのに便利です。
携帯電話やスマートフォンの充電に便利なコンセントとUSBポートは、小物置きに設置されています。コンセント1口とUSBポート2口のデュアル電源環境になっています。
小物入れの下には、「GRANDAYS」ロゴ入りのスリッパが入っています。スリッパは乗車記念として持ち帰ることができます。
車内備品のクッションとブランケットです。こちらは持ち帰ることができません。
各座席の小物入れには、車内備品の「ご乗車のしおり」が入っています。シート及び各種設備の操作方法などが詳しく記載されています。
トイレを設置しなかった理由とは?
と、ここまででお気づきの方も多いかと思いますが、実はこのバスには車内トイレが設置されていません。
このことについて、西日本鉄道自動車事業本部の樋田さんにお聞きしたところ、以下のような回答をいただきました。
車内トイレについては、社内で度重なる検討のすえ、長距離移動もあることから設置を考えましたが、1人あたりの専有スペースをできるだけ広く確保したかったことと、衛生面の観点から、車内トイレの設置は見送りました。
ツアー中は、こまめに休憩時間をとるなど、ゆとりある行程とツアー進行を徹底していますので、安心してご参加いただきたいと思います。
また、「GRANDAYS」専用車の製作に際しては、何かと苦労も多かったそうで、
特に一番苦労したのは、やはり内装でした。現行法令の制約のもとで設計・製作を行っていたために、完成までにかなりの時間を要しました。もちろん、完成時の安全検査や横転試験もきちんとクリアしています。
とのことでした。(西鉄樋田さん談)
改造車ならではの苦労でもありますが、ここまで手の込んだ内装であれば、完成まで時間がかかるのも当然といえば当然なのかもしれません。
四季折々のツアーの数々 日帰りのコースも
西鉄の新バスツアーブランド「GRANDAYS」は、九州・山口方面を中心に展開します。
実際には、地域の「知られざる」「特別な」「その地域ならでは」の体験ができるツアーを提供。町おこしや地方創生に取り組む企業と提携し、普段は立ち入ることのできないスポットでの絶景観賞や、地元の有名シェフによるツアー限定の出張レストランでの食事、予約が困難な温泉旅館への宿泊など、「通常では味わうことのできない旅」を取り揃えるとしています。
1本目のツアーは、2019(令和元)年10月4日から1泊2日の行程で催行。山口県の二大絶景「元乃隅神社」「角島大橋」と山陰の小京都「津和野」を巡るコースで、天候にも恵まれたそうです。
その後、筑前の小京都「秋月」と高取焼・小石原焼の窯元を探訪する日帰りのコースや、世界遺産の街「大牟田」の歴史と文化を味わう日帰りのコースなどを催行。今後も、日帰りから1泊2日のコースをメインに、趣向を凝らしたツアーが催行されることになっています。
なお、ツアーの企画および実施は、西鉄旅行をはじめ4社と提携して行いますが、実際のバスの運行は子会社の西鉄観光バスが行います。
まとめ
現在、日本では「ななつ星in九州」「トランスイート四季島」などといった豪華クルーズトレインが運行されていますが、今回ご紹介した「GRANDAYS」専用車は、まさしく「クルーズトレインのバス版」だと感じました。
豪華な車両に身を委ねて流れゆく景色を楽しみ、普段はなかなか訪れることができない場所を堪能し、豪華な食事に舌鼓を打ち、予約困難な豪華旅館でのんびりと過ごす…このような贅沢なバス旅を一度味わったら、今までの観光バスツアーにはもう戻れないかも…?
今回は車両のみの見学でしたが、近いうちにぜひともプライベートで利用してみたい…そう思わせる、素晴らしいバスでした。
(須田浩司)