2022バステクフォーラムが7月8日に開催
2022年7月8日、大阪の舞洲スポーツアイランド「空の広場」にて、2022バステクフォーラムが開催されました!
猛暑の懸念もある時期でしたが、当日はほど良い曇り加減。バス車内が暑くなることもなく、いい祭典となりましたよ。
出展企業数は、なんと全部で29社。14台のバスが展示され、更に試乗やデモ用のバスも6台。機器・用品・システムなどの展示は25ブースに渡り、ワークショップセミナーも開催される、大規模なイベントとなりました。
今回はその中から、高速バス車両6台をピックアップ。見どころをまるっとまとめてお送りします。最後にはおまけで、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』に登場したバスもご紹介。
1:西日本JRバス 2階建てバス「スカニア/アストロメガ2022年式」
2:大阪バス 最新鋭貸切車
3:全但バス LuxRea(ラグリア)
4:ヒョンデ・モビリティジャパン ユニバース観光仕様AT
5:三菱ふそうトラック・バス エアロエース(13列仕様/ラッピング)
6:三菱ふそうトラック・バス リニューアルサンプル車
おまけ:『ちむどんどん』のバス「ちむどん号」
2022バステクフォーラムで高速バスの未来を体験
1)西日本JRバス 2階建てバス「スカニア/アストロメガ2022年式」
真っ先にご紹介したいのがこちらの「2階建てバス・スカニア/アストロメガ2022年式」です。車両の大きさは、全長12m、全幅2.5m、全高はなんと3.8m。全部で14台の展示車両の中でも、ひときわ目を引く存在感でした!
2階建てバスは現在、国産では新規の生産がありません。アストロメガは国産2階建てバスの後継として、ベルギーのバスメーカー・バンホール社によって製作された日本仕様車。エンジン・駆動系がスウェーデンの車両メーカー・スカニア社製のため、「スカニア/アストロメガ」などと呼ばれます。
車両は夜行高速用、グランドリーム仕様。西日本JRバスのグランドリーム号は多くの路線で運行されていますが、こちらの2階建てバスは「京阪神~東京線」のみで運行します。
その魅力は、何と言っても乗り心地の良さ! 車内2階部分のシートは全て、グランドリームの誇る3列独立シート「クレイドルシート」です。横3列×縦11列ありますが、2階に運転席がなく全て客席のため、スペースは通常の3列×10列以上にゆったり!
クレイドルシートは、シート幅(座面)約46.5cm・リクライニングは最大約135度のゆったりシート。しかもリクライニングを倒すと、連動して座面がゆりかごのように少し後ろへ傾いて、足を持ち上げてくれる仕様なのです。フットレスト・レッグレストもシームレスに続く仕様でストレスなし。
「えっ、バスの中でこんなにしっかり横になっちゃって平気なの?」と感じるほどのリラックス感です。
2階建てバスの良いところは、車両の揺れが通常のバスより響きにくいところ。これは寝心地の良さに相当期待ができそうですね。各シートにはUSBポートや読書灯などの設備も備わっています。
1階は4列シート。4列とは言え、シート幅は44cm、リクライニングは最大131度と、こちらもゆったりです。トイレも1階にあります。一般的なバス車両のトイレと比べ、ゆとりをもって出入りできる余裕があるのも嬉しいポイント。
車内のハイライト動画はこちら!
2)大阪バス 最新鋭貸切車
大阪バスから登場した最新車は、貸切バス。2021年式三菱ふそうエアロエース(2TG-MSO6GP)です。
こちらのバスの大きな特徴は、客席一番後ろ部分の空間を広く使った、大型・豪華な化粧室!
化粧室内はトイレはもちろん、洗面台があり、くず入れもあり、大型の鏡もあり。なんと着替え用の台まで付いています。バス走行中の揺れ対策に手すりもしっかり。身だしなみをきちんとしたい女性にも、通常のバストイレが狭く感じがちな大柄な男性にも嬉しいですね。
後方のトイレスペースがこれほどゆったりしていながら、座席に窮屈さがないのも嬉しいポイント。横4列×縦10列シートでこのシート周り感覚やリクライニング角度は、充分なゆとりではないでしょうか。
3)全但バス LuxRea(ラグリア)
バステクフォーラム初出品・全但バスから登場したのは、ハイグレード高速車「LuxRea(ラグリア)」の最新バス。車種は三菱ふそうエアロエース(2TG-MSO6GP)です。
こちらのバスの大きな魅力は、昼行便には珍しく、扉付きの完全個室を2部屋備えていること! 「城崎温泉~大阪線」「浜坂・湯村温泉~大阪線」と、温泉街と大阪を繋ぐ2つの路線で運行中です。
車内は4列シート。進行方向に向かって左側(写真では右側)の後方が個室となっています。1個室の広さは、通常シートの4席分! なのにこちらの個室の使用料は、通常運賃に+1,000円だけというのだから驚きです。
こちらが個室内の様子。ゆったりもたれられるリクライニングに、フットレスト・レッグレストも広々。大きな窓ももちろん独り占めできるので、景色を眺めるのもカーテンを閉めて休むのも、周囲を気にせずお好みのまま。
さらに室内は豪華設備がぎっしり! シートの前には大きな個室専用モニターがあり、走行中には4台の車外カメラの映像を楽しめます。周辺設備は、スリッパ、折り畳みの机、2つのドリンクホルダー、コンセントに3つのUSBポートと至れり尽くせり。室内は照明もエアクリーナーもすべて個別のため、自分好みの明るさ・空調に整えてくつろげます。
こちらの個室は基本的には予約購入ですが、空席があればバス乗車後でも購入可能。バスの中でお弁当を食べたい時や、パソコンやタブレットを広げたい時などにもおすすめです!
4)ヒョンデ・モビリティジャパン ユニバース観光仕様AT
会場で運転体験試乗と客席試乗、EDSS(ドライバー異常時対応システム)のデモを行っていたのが、ヒョンデ・モビリティジャパンのユニバース観光仕様のAT車です。今回の注目は、緊急時の対応。
バスの最前列席の上部へは、非常ブレーキボタンが取り付けられています。これは、運転手さんが万一意識を失うなどの非常事態が発生した場合に、バスを緊急停止させるためのボタン。この非常ブレーキボタンを押すと真っ赤なランプが点灯し、3秒後にバスが急停止します。
それ以外は、ごく普通のバス。緊急時の対応はしっかりとしてあっても、普段はそれを忘れてくつろげるのがいいですね。バス車外にはEDSSを始め、万一の事故時の衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報システムを搭載していることを示すステッカーが貼ってあります。
5)三菱ふそうトラック・バス エアロエース(13列仕様/ラッピング)
高速バス車両で人気の三菱ふそうエアロエース。こちらの展示車のハイライトは、車両のボディープリントと、バスの内側の客席シートの13列仕様です。
まずは外観からご紹介します。細かいデザインや写真を再現するのに一般的なのは、フィルムラッピング仕様。特別なラッピングをしたバスを「ラッピングバス」と呼んだりしますよね。ですが今回の展示車は、ラッピングではなくダイレクトデジタルプリント!
ラッピングの約半額で迅速・キレイにプリントができ、塗り替えも簡単だそう。この技術で、もっともっと華やかなバスがこれから増えるかもしれませんね。
特別に、塗装の様子の動画も見せていただきました。横長の大きなバスプリント専用の機械で、スイーッスイーッという感じで絵がプリントされていきます。車体へプリントしているとは思えないほど速くてキレイ!
外観に注目した後は、いよいよ客席へ。こちらの車体は驚きの縦13列仕様。以前は12列がぎりぎり限界だと言われていたバスの縦列を、シートの薄型・軽量化、ひじ掛けやドリンクホルダーなどの省略できるものを極力省く、リクライニングもなくすことで、1列増やすことに成功しています。
ということは、その分座席は狭めなのでは…と気になりますよね。しかし座ってみるとこれが問題なし! 削れるところは削っても、足元のゆとりや座席幅は確保してあるので気にならないのです。これはいい! 座席数が増えた分バスの人気路線の混雑事情が緩和され、より使いやすくなるのではと期待できますね。
6)三菱ふそうトラック・バス リニューアルサンプル車
こちらは、三菱ふそうバスが取り組むリニューアル案を実際に見られるサンプル車。リニューアル案は外装から運転席周りまでたくさんあるのですが、今回は特に乗客にとって一番重要な、客席部分やシートなどを見てきました。
中へ入ると、左右でデザインが違う! これはリニューアル前後の比較をするため、あえて進行方向左側(写真右側)に何年も使用した後の状態を残してあるのです。シートはもちろん、床(フロアマット)や窓下の壁部分(サイドトリム)など、あちこちが新しくなっています。
長距離バスは長く乗車する分、座席の小さな傷や汚れなども、案外気になってしまうもの。これまで乗り慣れたバスも内装がリニューアルされたら、より快適なバス旅ができそうですね。
おまけ:『ちむどんどん』のバス「ちむどん号」
会場へは、オノエンジニアリングの『ちむどんどん』のバス、通称「ちむどん号」も特別ゲスト(?)で登場しました!
『ちむどんどん』は沖縄県を舞台にした、2022年前期・NHK朝の連続テレビ小説。こちらのバスはドラマで実際に登場した車体です。1960~70年代の北米で人気を博したモデルで、劇中では「米軍払い下げ車」として活躍しました。
内装も作中のままのようで、レトロな沖縄の広告が貼られ、小振りなブルーシートが並んでいました。昭和生まれにはどことなく懐かしく感じられる素材感や広告と、北米ならではのワイルドで明るい感じの作りにわくわくします!
「ちむどん号」が今後どこで活躍するかは未定だそう。見かけたらぜひ乗車してみてくださいね。
2022バステクフォーラムで高速バスの未来を体験
2022バステクフォーラムより、高速バスに特化した新情報をお届けしました!
今回のバステクフォーラムで感じたのは、驚くような新技術や大きなシステムではなく、バスに求められる3つの要素「安全・キレイ・快適」をいかに当たり前にしていくか、いかに「もっと安全」「もっとキレイ」「もっと快適」を丁寧に突き詰めていくかが大切にされているということ。
乗客目線では気が付かないくらい当たり前のサービスが、少しずつグレードアップされていくことで、バス旅はもっと楽しいものになっていくんだなぁと感じます。高速バスユーザーとして未来が楽しみですね!
バステクフォーラムは一般の方でも参加可能な無料イベント。気になった方は次回開催日を調べてみては?
(陽月よつか)