二十四節気の季節は、<処暑しょしょ>から<白露はくろ>へと移り変わります。暑さのピークが過ぎ、日中の残暑はつづくものの、朝は草木に露のたまが白濁したように見えることから昔の人が名付けましたが、今年の暑さでは見られるでしょうか?
日が当たるとすぐに消えてしまう露ですので、万葉集などでは、はかなさを表すものですが、一方で、菊や蓮の露は、永遠や清らかさを表す代名詞でもあります。早朝、秋の気配が感じられるかそのような視点でお散歩してみるのも楽しいかもしれませんね。
今月も、私たちの生活の中にエネルギーや恵みをもたらしてくれる9月の旬食材をお知らせしていきます。特に何よりも美味しい秋ナスについて、注目してみましょう。
9月の旬食材
【野菜】
●そろそろ9月で食べおさめの旬野菜
あおとうがらし、あしたば、いんげん おくら、ズッキーニ、なす、ゴーヤ、しそ、葉とうがらし等です。
●これからおいしい旬野菜
かぼちゃ、さつまいも、さといも、しめじ、ちんげんさい等です。
まつたけもこれから時期を迎えます。落花生も9月末にはでてきそうですね、新鮮な落花生が運よく手にはいったら、塩ゆでに。しゃりしゃりほくほくの独特の食感と、口の中に広がる甘みは、食べだしたらとまらない美味しさです。
【果物】
●9月での食べおさめ旬果物は、ブドウ、マスカット、なし シークワーサー等です。
今年は果実園の果物狩りも再開され、うれしい限りです。巨峰やピオーネはこれからでしょうか。
いちじく、くり、柿などの旬もやってきます。
今年の9月の中秋の名月は9月29日金曜日です。お月見には、お団子の他にサトイモや栗をお供えしますが季節の果物をそなえるのもよいですね。
【魚・海産物】
9月までに食べておきたい旬の魚介類は、
くるまえび、あわび、かんぱち等
夏から秋にかけて旬の魚、お刺身で定番のかんぱちは、その名の通り、幼魚の間に眉間に八の字の模様があることに由来しているそうです。
これから美味しい旬の魚介類は、
いくら、さんま、いわし、かつお、鮭、しらす、たちうおなどでしょうか?
8月末よりいくらも出回りはじめています。この時期にしか味わえないものを楽しみたいですね。
<参照>
旬の食材カレンダー
駿河名物!?「一富士、二鷹、三茄子」のいわれ
秋なすは、7月末くらいまでに収穫した後、枝を切り戻すことで、再びなすの枝が元気になり、たくさんの実をつけ収穫されるものです。そんなたくましさとあわせて、「成す」と音が重なることから、なすは、古くから縁起物とされてきました。黒紫色の皮に含まれるアントシアニンは抗酸化作用もあるといわれています。
初夢の縁起のよい順として「一富士、二鷹、三茄子」見たら良いことがある吉夢といわれ有名ですが、いわれは、徳川家康が住む駿河の名物、あるいは駿河の中で高いものともいわれています。
江戸時代、江戸っ子たちの間で旬の初物を食べると、寿命が75日延びるといわれ、初ガツオなどがはやっていたそうです。なすは野菜の「初物(はつもの)」の代表格で、品種改良や促成栽培もさかんだったようです。季節にさきがけた初物の初なすはお高く貴重だったのかもしれませんね。
こんなにあるんだ、ご当地なす!食べたことありますか?
なすの生産量ランキングでいくと、高知県、熊本県、群馬県といわれています。12月~6月は、あたたかい地域でハウス栽培し年中なすが食べられるようになっています。
7月~11月は露地物で、茨城県、栃木県からも多く出荷されます。
一方で、県内で消費され、県外にはでまわらないなすも多く存在するようです。種類が多く必ず各地にご当地なすがあるといわれています。出張や旅の際はチェックしてみたいものです。
【大長なす】
長さ40~45cmで、肉質(にくしつ)がやわらかなので「焼きなす」や「煮(に)なす」むき……福岡県の「久留米長(くるめなが)」や「博多長(はかたなが)」など
【中長なす】
長さ12~15cmで、「長卵形(ちょうらんけい)なす」ともいわれる……橘田なす(愛知県)、大阪中長なす(大阪府)など
【長なす】
長さ20~25cmで、おもに西日本や東北でつくられている……秋田県の「河辺長(かわべなが)」、岩手県の「南部長(なんぶなが)」、大阪府の「大阪長(おおさかなが)」、宮崎県の「佐土原(さどわら)」など
【卵形ナス】
関東を中心に出回る……千成なす(東京都)、真黒なす(埼玉県)、山科なす(京都府)など
【丸なす】
東北から北陸、関西でつくられています。肉質がしまっているので、田楽(でんがく)や煮ものむき……京都府の「賀茂(かも)なす」、新潟県の「巾着(きんちゃく)なす」など
【小丸なす】
東北から北陸、関西でつくられています。肉質がしまっているので、田楽(でんがく)や煮ものむき……からしづけで有名な山形県の「民田(みんでん)なす」など
<参照>
・ナス 「こんなにいろいろあるんだ!」:農林水産省
・日本の南北で異なるナスの地方品種事情【やさいの時間4・5月号こぼれ話】-みんなの趣味の園芸
こんなレシピも!?いろいろなすメニュー
なすといえば、なすのグラタン、マーボーなす、ラタトゥユ、焼きなす、さばなす、なすのそぼろ煮、田楽、みそ炒め、煮びたしなど美味しい食べ方がたくさんあります。
本日は簡単なアレンジを加えたレシピをご紹介します。
【焼きなすの冷たいパスタ】
材料(2人分)
・スパゲティ 140g
・なす 4本
・生ハム 4-6枚
・にんにくみじん切り 適量
・バジルの葉 10-12枚
・バルサミコ酢 小さじ1
・白ワインビネガー 小さじ2
・オリーブ油 大さじ6-8
・塩 適量
作り方
1.なすを焼く、皮が焦げるくらいにこんがり焼く。熱いうちに皮をむき、縦2.にんにくみじん切り、バジルを手でちぎったもの、なすをざっとボウルにいれ、バルサミコ酢、白ワインビネガー、オリーブ油の順にいれ、手でよく混ぜ合わせる
3.生ハムを一口大にし、2のソースにいれる
4.茹でたパスタを水きりし、オリーブ油を大さじ2~4混ぜ合わせ3のソースをかけて出来上がり
参照
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【焼きなすの昆布〆】
材料(2~4人分)
・なす 4本(320〜400g)
・昆布 2枚(羅臼昆布など)
※幅の狭い昆布の場合は数枚組み合わせて使用
・粗塩 少々
作り方
1.なすはヘタをぐるりとむき、皮だけのこす。
2.網に並べ、真っ黒になるまで強火で焼く。冷水にさっとくぐらせ、すぐ取り出し、皮をむき粗熱を取る
3.昆布はさっと水にくぐらせる。バットにラップを広げ昆布を1枚おく。水気を拭いた焼きなすを並べ、もう1枚の昆布をのせてはさみ、ラップで包む。皿を重しがわりにのせ、冷蔵庫に一晩以上置く
4.昆布をはがしてなすを食べやすく切る。皿に昆布をのせ、なすを盛り、粗塩を添えていただく
昆布の味が染みたら食べ頃で2~3日置いてもOK!ねっとり感がアップしてさらに美味しくなります。
【ふかしなす、中華だれ】
材料(1~2人分)
・巾着なす(ヘタを切り、4つ割り、厚めに皮をむく) 1個
※普通のなすの場合3〜4本
ザーサイだれ
・味つきザーサイ(細切り) 30g
・白いりごま 大さじ1/2
・しょうゆ 小さじ1
・ごま油 小さじ1
作り方
1.蒸気のあがった蒸し器に、なすを並べ、(布巾で包んだ)蓋をする。強火で10分ほど、柔らかく蒸す。粗熱を取り、冷蔵庫で冷やしておく
2.混ぜ合わせたザーサイだれをのせて完成
季節も生活もめぐりますが、毎年、毎日、毎時間、瞬間瞬間、丁寧に意識をむけて味わうと、必ず微細な変化に気づくことと思います。そんなところに新しい発見やアイデアがあるかもしれません。健やかで味わい深い9月となりますように。