寒い日が続くと、お風呂が恋しくなりますね。でも、服を脱いだら寒さでブルブル、思わず熱い湯船にザブン、という入浴のしかたをしている人はいませんか?
実はこれ、「ヒートショック」(温度の急激な変化により血圧が変動することで起こる健康被害)を起こす危険性大なのです!
旅先や自宅でも思いがけない事態に陥ることがあります。今回は、実際に起きた二つのケースをもとに注意ポイントをご紹介しますので、大切なご家族の命を守るために、ぜひご一読ください。
〈ケース その1〉 温泉旅行に潜む落とし穴
〈ケース その1〉
── 11月のある日、70代の夫婦が温泉旅行に行きました。早めにチェックインでき、まだ夕食までには時間があったので、温泉に入ることにしました。ご主人は早くお風呂からあがったので、奥さんを待っていましたが、一向に出てくる気配がありません。女の人はいくら長風呂とはいえ、ちょっとおかしいと思い、旅館の女性に女湯のようすを見に行ってもらいました。
すると、浴槽内で浮いている女性を発見! 呼吸はしていましたが、意識がありません。すぐに救急車を呼び、女性は病院に搬送されました。幸い、命は取り留め、後遺症もなく一安心でしたが、もう少し発見が遅かったら危なかったそうです。
医師によると、その女性は露天風呂に入ってヒートショックを起こし、意識が朦朧として溺れたのではないかとのことでした。女性はこれまで病気をしたことがなく、健康に自信がありましたから、まさかこんなことが起こるとは思っていませんでした──。
■教訓その1:入浴時の気温・室温差には十分注意すべし!
脱衣所と浴室の温度差が激しいと、血圧の急激な変化により、失神や心筋梗塞、脳卒中などの重篤な症状を引き起こしかねません。この女性の場合は、北風が吹く中、屋外にある露天風呂での入浴だったので、なおさらです。温度差の激しい場所での入浴には、ヒートショックを起こす危険性があることを念頭に置いて、冬の露天風呂は気を付けて入りましょう。
■教訓その2:なるべくひとりでの入浴を避けるべし!
実は、この女性が入っていた露天風呂は宿泊者専用。しかも、当時は他に誰も入浴している人がいなかったため、発見が遅くなってしまった可能性があります。温泉などに出かけた際は、なるべくほかに人がいる時間帯や場所を選びましょう。自宅で入浴する場合も、家族にひと声かけておくと安心です。家族も高齢者がひとりで入浴する際は気にかけておいてください。ちなみに、ひとり暮らしの場合は、日が落ちる前の時間帯に入浴する、見守りサービスなどを利用する、というのもひとつの方法です。
〈ケース その2〉 熱めのお湯&長風呂は命取り
〈ケース その2〉
── ある60代の男性がいつものように自宅で入浴していました。妻は入浴中に男性に2度ほど声をかけていて、その都度、お風呂から返答がありました。そろそろ出たほうがいいと思った妻が3度目に声をかけると、今度は返事がありませんでした。慌ててお風呂のドアを開けると、男性は浴槽で沈んでいたのです。女性ひとりで男性を水の中から引き上げるのは相当な重労働。なんとか引き上げて、すぐに救急車を呼びましたが、残念ながら男性は亡くなってしまいました 。
この男性は熱めのお風呂に入るのを習慣にしていて、しかも長風呂でした。お酒が好きで、よく飲酒後に入浴していたそうです。この日も、いつものように晩酌後の入浴だったので、家族はそれなりに気を付けていたのですが、悲しい結果になってしまいました ──。
■教訓その3:湯船の温度は41℃以下&長湯をしない!
高温(約42℃以上)の湯船に浸かった場合、血圧の急変が起こりやすくなります。また、長く湯船につかると、体温が上昇して汗をかき、脱水症状を引き起こすことに。すると、めまいや意識障害を起こして倒れることがあります。お風呂の温度は41℃以下で、湯船に浸かるのは10分以内にしましょう。
■教訓その4:飲酒後すぐの入浴は厳禁!
お酒を飲んでの入浴は少ない湯量でも簡単に溺れてしまうことがあるので大変危険です。入浴でカラダが温まると血管が広がって血流がよくなります。すると、アルコールが早く体中にまわるので、ふだんよりも酔いやすくなるのです。アルコールを飲んだすぐ後での入浴はやめましょう。高血圧や動脈硬化などの持病を持っている人は特に気を付けてください。
「ヒートショック」を起こさない、5つの注意ポイント
2つの事例を紹介し、それぞれ教訓をあげていますが、「ヒートショック」を防ぐために、他にもできることがあります。ご自宅で入浴する際、また温泉などに入る際も、次のような点に注意することをオススメします。
■脱衣所・浴室の室温に注意
居室と脱衣所の温度差は5℃以内にすることが望ましいと言われています。自宅の脱衣所に暖房が設置されている場合は使用し、設備がない場合は暖房器具を置いて室温を上げておきましょう。暖房器具の使用にあたっては、火事や火傷など安全に十分注意してください。また、入浴前は浴槽のふたをはずしておく、シャワーでお湯をはる、などで浴室を湯気で温めておくと効果があります。
■湯船に入る前にかけ湯をする
いきなり湯船に入るのは、急激な血圧の変化を招きます。特に高血圧の人などは、血圧が急変するリスクが高まるので危険です。湯船に入る前には、心臓から遠い足先から徐々にお湯をかけるのがオススメ。かけ湯をしてカラダが湯船に浸かる準備をしてあげましょう。
■湯船から出るときはゆっくり立ちあがる
湯船からいきなり立ちあがると、血管が広がって貧血状態になるため、立ちくらみを起こす可能性があります。狭く滑りやすい浴室で転ぶとケガをしたり、打ちどころが悪い場合は意識を失うこともあります。手すりなどにしっかりつかまって、ゆっくり立ちあがるようにしましょう
■浴室内で水分を拭きとっておく
脱衣所に出る前に、バスタオルでカラダを覆って水滴が落ちない程度に拭いてしまいましょう。浴室内は湯気で温かいので、水分を拭きとってしまえばカラダを冷やしにくく、脱衣所へ出ても室温差による影響を受けにくくなります。
■入浴の前後にはコップ1杯の水を飲む
入浴時には思った以上にカラダから水分が蒸発しています。水分が足りないと脱水症状を起こしやすいので、入浴前と入浴後にはコップ1杯程度の水を飲むようにしましょう。できれば白湯か常温の水がよいようです。
高齢者や持病がある人だけでない! 若い人、健康な人も要注意!
── 今回ご紹介したケースを読んで、「高齢者の話だから関係ない」、と思った人は要注意です。若い人でも「ヒートショック」には気を付ける必要があります。太っている人や糖尿病などの病気を持っている人、循環器に問題がある人は特に注意してくださいね。
tenki.jpでは、冬の寒い時季に起こる「ヒートショック」の被害を防ごうと、「ヒートショック予報」を提供しています。気象予測情報にもとづく、家の中でのヒートショックリスクの目安として、ぜひご活用ください。