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【阪神】吉田義男さん「私はメジャーかぶれ」55年の日米野球で憧れ、引退後は自腹で米国行脚


阪神の名遊撃手として知られる吉田義男氏が91歳で逝去しました。吉田氏はメジャーリーグへの憧れから、自腹でアメリカに渡り大リーグを研究しました。1955年の日米野球では、ヤンキースのミッキー・マントルと対戦し、「ファイン・アート」と称賛されました。監督としても阪神を日本一に導き、その情熱と指導力は高く評価されました。

1960年日米野球 全日本対ジャイアンツ 試合前にウィリー・メイズ外野手(右)と写真に納まる阪神・吉田義男遊撃手

<吉田義男さんメモリーズ15>

「今牛若丸」の異名を取った阪神の名遊撃手で、監督として1985年(昭60)に球団初の日本一を達成した吉田義男(よしだ・よしお)さんが2月3日、91歳の生涯を閉じました。日刊スポーツは吉田さんを悼み、00年の日刊スポーツ客員評論家就任以前から30年を超える付き合いになる“吉田番”の寺尾編集委員が、知られざる素顔を明かす連載を「吉田義男さんメモリーズ」と題してお届けします。

   ◇    ◇    ◇

吉田さんは「わたしはメジャーかぶれでした」と言ってはばからなかった。今は野球解説者が大リーグ取材に赴くのは珍しい時代ではない。だが吉田さんはテレビ局から受けた仕事でなく、単身の自腹で海を渡って大リーグを勉強した。

現役時代から大リーグに強く感心を持った。村山実さんに監督の座を譲った形でユニホームを脱いだ吉田さんは渡米し、米国内を転々とした。現役時代に集めた情報と知識を頼ってキャンプ、マイナーリーグにも足を運んだ。

ずいぶん後になってのエピソードだが、ロサンゼルスで長嶋茂雄さんと会食したこともあった。1981年(昭56)のドジャース対ヤンキースのWシリーズ取材にきていた。前年、巨人監督を解任されたミスターの気持ちは痛いほど分かった。

小兵の吉田さんにとって、力と力でぶつかり合う異国の野球はあこがれだった。そのきっかけになったのが55年秋、毎日新聞社が主催した日米野球だ。全盛時のヤンキースがそうそうたるメンバーで乗り込んできた。

こちらも中西太さん(西鉄ライオンズ)、山内一弘さん(毎日オリオンズ)ら、スーパースターにのしあがっていく若手もいた。プロ3年目を終えた22歳の吉田さんは、翌56年3冠王に輝くミッキー・マントルの打撃投手を務めている。

「ミッキー・マントルからは、内角でなく、外の高めに投げて欲しいとリクエストを受けました。打撃投手といっても、打球をよける網もなかったし、打球が速いので怖い思いをしたのを覚えてますわ」

なにせ“体当たり”“殺人スライディング”など危険なクロスプレーは当たり前の時代だから、大リーグでトップクラスの選手たちのパフォーマンスは激しかった。吉田さんは「ゲッツーで二塁カバーに入るのが怖かった」という。

「今は衝突禁止のコリジョンルールがありますけど、走者が向かってくるのは当然でしたからね。こっちが走者につぶされては話しにならんのですよ。よけながら投げるんじゃなく、投げてから避ける。逆に走者に送球を避けさせるんですわ。しょっちゅうケガしてましたわ」

捕るが速いか、投げるが速いか。“今牛若丸”と称されただけあって、吉田さんのプレーは俊敏で、華麗だったのだろう。阪神の試合前の守備練習を記者席からチェックしながら、突然「バン!」と机をたたいては「ボール持ちすぎや」とブツブツ怒った。

55年の日米野球で全日本は1つも勝てず、15敗1分けの完敗。しかしヤンキース監督で名将ケーシー・ステンゲルは、吉田さんの動きを「ファイン・アート」と表現し、芸術的プレーを絶賛する。そして「ヨシダを連れて帰りたい」と評価するのだった。

全日程を終えたヤンキースは、最も傑出した選手「アウトスタンディングプレーヤー」に吉田さんを選出した。本人は大リーグのダイナミックで、パワー&スピードの野球に圧倒されながらも、基本に忠実なフィールディングをお手本にした。

初めて阪神監督に就任した75年、吉田さんは背番号「1」をつける。当時戦ったあこがれの人、ヤンキース二塁手のビリー・マーチンがつけた番号だ。名選手で名監督、激しく、情熱的だった。その番号は名門ヤンキースの永久欠番になっている。

あの全敗した日米シリーズから70年間もの歳月が流れた。日本が大リーグと互角以上の戦いをする時代が訪れるとは、当時のだれが想像できたか。歴史はこうやって変わっていくのだろう。伝説になった先人たちに畏敬の念を抱かざるを得ない。

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