青柳晃洋、締め切り直前の吉報「また同じ気持ちで」ドラ５から投手３冠の再現を米でも

フィリーズとのマイナー契約が決まり、インタビューを受ける阪神青柳（撮影・磯綾乃）

ポスティングシステムでメジャー移籍を目指してきた阪神青柳晃洋投手（31）が17日（日本時間18日）、フィリーズとマイナー契約を結んだ。同日に両球団が発表した。

交渉期限はこの日午前7時。静岡で自主トレ中のサブマリンに吉報が届いたのは、締め切り間際の午前6時だった。15年ドラフト5位の入団からエース格にのし上がり、22年には投手3冠に輝いた右腕。ここ2年は苦しんだが、海の向こうでもメジャーでの活躍を目指してはい上がる。

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安堵（あんど）と決意。青柳の表情は紅潮していた。

「期限が迫ってくるにつれて、『本当に行くところがあるのか？』とか、不安は結構ありました。契約してもらえたことが、本当にうれしく思います」

阪神球団の後押しを受けて昨年12月にポスティングシステムの申請手続きを行ったが、交渉期限はこの日の日本時間午前7時。自主トレ先の静岡に、代理人から吉報が届いたのは1時間前の6時だった。マイナー契約だったが、念願だったメジャーへの扉が開いた。

新天地は24年ナ・リーグ東地区で地区優勝の強豪フィリーズ。昨季16勝右腕のウィーラーを筆頭に2桁勝利を挙げた投手がずらりと並ぶが、険しい道は望むところだ。「本当に厳しい戦いになると思いますけど、自分の中で挑戦の年だと思う。新しいことに挑戦しながら、勝負ができたら」。

2月中旬から米フロリダで始まる春季キャンプに招待選手で参加予定。メジャー昇格へ猛アピールが不可欠だ。「あとは自分の実力だったりになってくるので、また下からはい上がるように頑張っていけたら」。

15年ドラフト5位で阪神に入団。21年には東京五輪日本代表に選ばれ、22年に投手3冠に輝くまでに成長した。「ドラフトも下位から入りました。また同じ気持ちでまた違う野球を経験できるのかなと思ったら、プロに入団した時の気持ちじゃないですけど、すごく楽しみが多いです」。ここ2年は成績がふるわず苦しんだが、異国の地でマイナーからはい上がる覚悟だ。　この日は偶然にも、元同僚の藤浪もマリナーズとのマイナー契約が判明した。「日本で晋太郎の頑張りはずっと見ていたので。地区が全然違うので会うのは難しいかもしれないけど、同じアメリカで頑張っている日本人がいるとなったら頑張れる」。リーグは違い投げ合う機会は少ないかもしれないが、絶好のモチベーションになる。

フィリーズに日本人投手が入団するのは初めて。「何ごとも1番はいい。日本人がいないチームなので、日本人として活躍することを楽しみにしたい」。大谷らが所属し、同ナ・リーグのドジャースとは9月17日から敵地で3連戦が組まれている。ドキドキとワクワク。サブマリンの挑戦が始まる。【磯綾乃】

○…阪神森下が青柳の海外移籍決定を喜んだ。この日、フィリーズとのマイナー契約が発表された先輩右腕。森下自身も将来的なメジャー願望を胸に秘める中、海の向こうでの活躍を心待ちにした。「メジャーで活躍してくれたらすごく励みになる。自分も将来的にメジャーでプレーして活躍したいと思っているので、青柳さんの活躍を見たいです」と目を輝かせた。

▽阪神西勇　自分で選択して道を切り開いたのはすごいこと。ここからは本当に大変だと思うけど、ヤギ（青柳）のプロ入り後の道のりからしたら「楽しい大変」だと思う。でも僕らからしたら寂しい。いなくなるとロッカーも寂しくなる。陰ながら応援したいです。

▽阪神原口　みんな応援している。ヤギ（青柳）が一番分かっていると思うけど、実力（の世界）なので思い切り野球を楽しんで、本場のベースボールに触れて、挑戦する姿を励みにしたい。身近にいた選手がアメリカで挑戦するわけだから、本当に頑張ってほしい。

▽阪神糸原　すごいチャレンジ。頑張ってほしい。厳しい道を選んでチャレンジしているので、野球人としてすごいと思う。メジャーに行ったらぜひ招待してほしい。付き合いも長いし、観戦に行きたいと思います。

▽阪神村上　藤浪さんが（米国で）投げていてみんな刺激をもらっていた。ヤギさん（青柳）が投げれば、もっと刺激になると思います。32（歳）になるシーズンで、また1から挑戦するのは本当にすごいと思う。尊敬しかありません。

▽阪神岡留　一緒に自主トレやらせてもらっている先輩が、メジャー挑戦するのはすごく刺激になる。青柳さんのことなので、僕たちの結果も見てくれると思う。頑張らないとと思います。

◆フィラデルフィア・フィリーズ　1883年に創設され、現在ナ・リーグ東地区所属。チーム名は、フィラデルフィア住民の愛称「フィリー」から。本拠地はシチズンズバンクパーク。リーグ優勝8度。80年に初のワールドシリーズ制覇。08年には、ヤクルトと近鉄で活躍したチャーリー・マニエル監督に率いられ2度目の世界一に輝いた。今季は13年ぶりに地区優勝を果たしたが、ナ・リーグ地区シリーズでメッツに敗れワールドシリーズ進出はならなかった。

◆フィリーズの先発ローテ　昨季16勝7敗、防御率2・57を記録しサイ・ヤング賞投票2位だった右腕ウィーラーがエース。続いて昨季14勝の右腕ノラ、同11勝の左腕サンチェス、同12勝の左腕スアレスと10勝カルテットは顕在。昨年12月には23年に10勝を挙げた左腕ルサルドをマーリンズから獲得しており、ローテ5人が確定。さらに通算72勝右腕ウォーカーや、マイナーにはペインターとアベルの両右腕が控えている。

◆フィリーズに在籍した日本選手　過去は07、08年井口資仁、08年田口壮の野手2人がプレー。投手のメジャー出場はない。