つみたてNISAのおすすめ銘柄は、WebメディアやSNSなどで多数取り上げられています。
おすすめ銘柄を見た人のなかには、「数が多すぎてなにを買えばいいのかわからない」「1銘柄でいいのか、複数銘柄買ったほうがいいのか」「複数銘柄買う場合はどう組み合わせるのがよいのか」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか?本記事では、つみたてNISAの銘柄をどう組み合わせるのがおすすめかを解説します。リターンやリスクに対する考え方別に組み合わせ例も紹介しているので、どの銘柄を選べばいいのかわからない人は参考にしてみてください。
証券会社で約8年間、株式や投資信託、生命保険等の販売に携わる。
退職後はフリーライター兼個人投資家として活動。
金融ジャンルの記事を中心に執筆しつつ、日々のマーケット動向も注視している。
■保有資格
・証券外務員一種
・生命保険募集人
・2級ファイナンシャル・プランニング技能士
■SNSアカウント
・Twitter
つみたてNISAの銘柄はいくつ組み合わせればいい?
つみたてNISAの銘柄をいくつ組み合わせればいいかは、投資する銘柄やリスクをどれくらい抑えたいかによって異なります。
海外株式に投資するインデックスファンドなら1銘柄で十分
海外株式に投資するインデックスファンドなら、組み合わせせず1銘柄で十分でしょう。インデックスファンドとは、日経平均株価やNYダウなどの指数に連動した運用を目指す投資信託のことです。
1銘柄で十分だといえる理由は3つあります。
1つ目の理由は、つみたてNISAの対象商品には必ず株式が含まれているからです。つみたてNISAの対象商品は金融庁が公表しており、選定条件として「主たる投資の対象資産に株式を含むこと」としています。
投資信託によって株式への投資割合には差があるものの、2銘柄以上組み合わせると投資先の一部が海外株式または国内株式で重複します。
2つ目の理由は、国内株式より海外株式のほうが長期的なリターンが安定しているためです。2023年4~6月にかけて日経平均株価は大きく上昇しているが、米国株(S&P500)のほうが長期的なリターンは高くなっています。
S&P500とは
- 米国を代表する約500社の値動きをまとめた株価指数
■日経平均株価と米国株(S&P500)の比較(2003年1月~2023年6月)
海外株式に投資するインデックスファンドのメインは米国株なので、20年間保有する前提でしたら他の銘柄と組み合わせる必要はないでしょう。
3つ目の理由は、投資信託は1銘柄だけで分散投資できているからです。
例えば、S&P500に連動した運用を目指す投資信託なら、約500銘柄の米国株に分散投資しています。米国株投資でAppleだけを買うのとは全く異なります。
■S&P500に連動した運用を目指す投資信託の主な投資先
会社名 | 投資割合 |
---|---|
Apple | 7.3% |
Microsoft | 6.8% |
3.9% | |
Amazon | 3.0% |
NVIDIA | 2.7% |
META (Facebook) | 1.6% |
(2023年5月31日時点)
日本株や米国株といった個別の株に投資する場合に2銘柄以上に分散投資をする意味はあります。しかし、投資信託では自動的に分散投資されているうえ、投資先や投資割合の見直しも定期的に行われているので無理に2銘柄以上に分散投資しなくてもよいでしょう。
リスクを抑える目的で2銘柄以上組み合わせるのはあり
1銘柄だけでどうしても不安な人は、リスクを抑える目的で2銘柄以上組み合わせるのはありでしょう。例えば、バランス型ファンドと海外株式に投資するインデックスファンドを組み合わせることで株式への投資割合が下がり、リスクが抑えることができます。
バランス型ファンドとは、株式と債券など2種類以上の金融商品を組み合わせて運用する投資信託です。債券とは国や会社がお金を借りるときに発行するものであり、返済期日や利息の支払日が決まっているので、株式と比べて値動きが安定しています。
つみたてNISAで銘柄を組み合わせるときの注意点
つみたてNISAで銘柄を組み合わせるときの注意点は、以下の2つです。
投資先が似ている銘柄同士ではリスク分散にならない
投資信託の場合、投資先が似ている銘柄同士ではリスク分散になりません。例えば、eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)とeMAXIS Slim米国株式(S&P500)を組み合わせても、全世界株式(オール・カントリー)の約60%は米国株式であるため、リスクを分散していることにはなりません。
なお、全世界株式と米国株式は、銘柄ごとの投資割合は異なるものの主な投資先は同じです。
■全世界株式と米国株式の主な投資先
全世界株式 | 米国株式 |
---|---|
Apple:4.5% | Apple:7.3% |
Microsoft:3.8% | Microsoft:6.8% |
Google:2.3% | Google:3.9% |
Amazon:1.8% | Amazon:3.0% |
NVIDIA:1.6% | NVIDIA:2.7% |
META:0.9% (Facebook) | META:1.6% (Facebook) |
(いずれも2023年5月31日時点)
このように、投資先が似ている場合はリスク分散にはならないため、組み合わせる必要はなく1銘柄で十分と言えます。
銘柄が多すぎると管理しづらい
投資先が異なる銘柄なら2銘柄以上組み合わせる意味はあるが、銘柄が多すぎると管理しづらくなります。証券会社のサイトでは銘柄ごとの損益が確認できますが、銘柄が多ければ多いほど確認の手間が増えます。
投資信託は1銘柄だけで分散投資ができているので、リスクを抑える目的で複数銘柄を組み合わせるとしても、2銘柄までにしておくのが無難でしょう。
つみたてNISAのおすすめ銘柄の組合わせ例
つみたてNISAのおすすめ銘柄の組合わせ例について、リターンやリスクに対する考え方から3パターンにわけてご紹介します。
なお、ここで紹介する銘柄の組合わせは、当メディアが厳選したおすすめ銘柄から選んでいます。おすすめ銘柄や選び方は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
例①積極的にリターンを追求したい人
■積極的にリターンを追求したい人のポートフォリオ
銘柄の内訳 | eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):70% ニッセイ日本株ファンド:30% |
---|---|
リターン (直近1年) | 19.09% |
信託報酬 (年率) | 0.3296% |
主な販売会社 | SBI証券 楽天証券 マネックス証券 auカブコム証券 松井証券 |
積極的にリターンを追求したい人は、海外株式に投資するインデックスファンドとアクティブファンドを組み合わせるのがおすすめです。アクティブファンドとは、日経平均株価やNYダウなどの指数を上回る運用を目指す投資信託を指します。
具体的な銘柄の内訳は、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が70%、ニッセイ日本株ファンドが30%でよいでしょう。日経平均株価は直近大きく上昇していますが、銘柄によっては出遅れているものもあるので、アクティブファンドのほうが今後のリターンは期待できます。
直近の日経平均株価の上昇は、米国株と比べて出遅れていた分を取り戻すような値動きにも見えますが、長期的にこの勢いが続くかどうかは不透明なので、日本株に投資するアクティブファンドの比率は30%までにしておくのが無難でしょう。
例②リスクとリターンのバランスを取りたい人
■リスクとリターンのバランスを取りたい人のポートフォリオ
銘柄の内訳 | eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):50% ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型:50% |
---|---|
リターン (直近1年) | 12.13% |
信託報酬 (年率) | 0.1337% |
主な販売会社 | SBI証券 楽天証券 マネックス証券 auカブコム証券 松井証券 |
リスクとリターンのバランスを取りたい人は、海外株式に投資するインデックスファンドとバランス型ファンドの組合わせがおすすめです。具体的な銘柄の内訳は、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が50%、ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型が50%でよいでしょう。
ニッセイ・インデックスバランスF 4資産均等型は、株式よりリスクの低い債券に全体の50%を投資する方針のため、海外株式に投資するインデックスファンドと組み合わせることでリスクを抑えられます。
ポートフォリオよりも高いリターンを求める人は、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の投資割合を増やして調整してみてください。
例③できる限りリスクを抑えたい人
■できる限りリスクを抑えたい人のポートフォリオ
銘柄の内訳 | DCニッセイワールドセレクトファンド(債券重視型):80% eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):20% |
---|---|
リターン (直近1年) | 7.68% |
信託報酬 (年率) | 0.1459% |
主な販売会社 | SBI証券 楽天証券 マネックス証券 auカブコム証券 松井証券 |
できる限りリスクを抑えたい人は、海外株式に投資するインデックスファンドとバランス型ファンドを組み合わせたうえで、バランス型のなかでもリスクの低い債券への投資割合が高い投資信託を選ぶのがおすすめです。
具体的な銘柄の内訳は、DCニッセイワールドセレクトファンド(債券重視型)が80%、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が20%でよいでしょう。
DCニッセイワールドセレクトファンド(債券重視型)は、債券のなかでもリスクが低い日本国債に全体の45%、海外債券も含めると全体の65%投資する方針であるため、株価下落時の損失リスクを抑えられます。
一方で株価上昇時は、ほかの銘柄の組合わせと比べてリターンは少なくなります。もう少し高いリターンを求めるなら、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の投資割合を増やして調整してみてください。
個人投資家が実際に運用している銘柄の組合わせを紹介
ここでは、個人投資家(著者)が実際に運用している銘柄の組み合わせをご紹介します。著者はSBI証券と楽天証券に口座を持っており、つみたてNISAはSBI証券で運用しています。
つみたてNISAで保有している銘柄は、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)の1銘柄です。2020年頃からつみたてNISAをはじめ、2023年6月13日現在の利益率は40.6%となっています。
■著者の保有資産の状況
画像引用:SBI証券
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)を選んだ理由は、長期保有するのであれば米国株が最も安定したリターンを期待できるためです。また、楽天証券で日本株を10銘柄程度保有するなど、保有資産全体でみれば投資先の分散はできているので、つみたてNISAの枠内では複数銘柄にわける必要はないと判断しています。
個人的見解としては、つみたてNISAでは1銘柄だけに投資して、2024年1月にはじまる新NISA(新しいNISA)で銘柄の組合わせを考えればいいと思っています。
新NISA(新しいNISA)については、以下の記事で詳しく解説しています。
つみたてNISAで銘柄を組み合わせたいときにおすすめの証券会社
つみたてNISAで銘柄を組み合わせたいときにおすすめの証券会社は、SBI証券や楽天証券をはじめとした大手ネット証券です。
取扱銘柄数が169~195銘柄と豊富で、野村證券(7銘柄)や大和証券(26銘柄)を圧倒しています。
大手ネット証券なら、組合わせ例で挙げた銘柄も全て購入できます。大手ネット証券のなかでも、クレジットカードによる投資信託の積立(クレカ積立)やポイント投資に対応している以下4社がおすすめです。
■つみたてNISAでおすすめの証券会社
(2023年6月13日時点)
SBI証券
SBI証券は、つみたてNISAの取扱銘柄数が業界No.1のネット証券です。つみたてNISA対象商品の約85%にあたる195銘柄(2023年6月13日時点)を取り扱っています。
三井住友カードがあればクレカ積立が可能で、条件達成で年会費が無料になるカードでも0.5~1.0%のポイント還元が受けられます。
■クレカ積立のポイント還元率(年会費が無料になるカード)
カード名 | ポイント還元率 | 年会費 |
---|---|---|
Olive ゴールド | 1.0% | 初年度無料 (翌年以降は税込5,500円) 条件達成(※)で無料 |
三井住友 カード ゴールド (NL) | 1.0% | 5,500円(税込) 条件達成(※)で無料 |
Olive | 0.5% | 永年無料 |
三井住友 カード (NL) | 0.5% | 永年無料 |
(2023年6月13日時点)
2023年2月27日からはつみたてNISAでのポイント投資にも対応し、TポイントやPontaポイントがつみたてNISAで使えるようになりました。
クレジットカードの登録やポイント投資の設定、積立注文は「かんたん積立 アプリ」から簡単に操作できます。ポイントの種類にこだわりがない人は、SBI証券でつみたてNISAをはじめてみましょう。
楽天証券
楽天証券は、つみたてNISAを含むNISA口座の開設数が業界No.1のネット証券です。楽天カードや楽天銀行をはじめとした楽天グループとの連携による特典も充実しています。
■楽天証券と楽天グループとの連携による特典
条件 | 特典 | |
---|---|---|
楽天銀行 | マネーブリッジの登録 | 300万円までの普通預金金利が0.1% |
楽天市場 | マネーブリッジの登録 月3万円以上の投信積立/米国株 1ポイント以上のポイント投資 | 投資信託と米国株で楽天市場のポイント還元率が+0.5%ずつUP |
楽天 カード | クレカ積立の設定 | 0.5~1.0%のポイント還元 |
楽天証券のクレカ積立は、2022年9月買付分からつみたてNISAのおすすめ銘柄を中心にポイント還元率が0.2%に改悪されましたが、2023年6月買付分から0.5%に引き上げられています。年会費永年無料のクレジットカードで比べると、SBI証券と同じポイント還元率です。
楽天ポイントをよく使う人は、楽天証券でつみたてNISAをはじめるのがおすすめです。
マネックス証券
マネックス証券は、年会費実質無料のクレジットカードでもクレカ積立のポイント還元率が最大1.1%になるネット証券です。
口座開設後にマネックスカードを発行すれば、毎月の積立金額に応じて1.0~1.1%のマネックスポイントがもらえます。マネックスカードは、年1回でも利用すれば年会費が無料になるので、クレジットカードをあまり使わない人でも発行しやすいカードです。
また、年会費実質無料のカードに限れば、クレカ積立のポイント還元率が大手ネット証券のなかで最も高くなっています。
■クレカ積立のポイント還元率(年会費実質無料のカード)
マネックス証券 | 1.0~1.1% |
---|---|
auカブコム証券 | 1.0% |
楽天証券 | 0.5%または1.0% (※) |
SBI証券 | 0.5% |
(2023年6月13日時点)
貯まったマネックスポイントは、Tポイント、dポイント、Pontaポイント、Amazonギフトカードなどと交換できます。クレカ積立のポイント還元率を重視する人は、マネックス証券でつみたてNISAをはじめてみてください。
auカブコム証券
auカブコム証券は、au PAYカードで投資信託を積み立てると1.0%のポイント還元が受けられるネット証券です。au PAYカードは年1回以上の利用があれば年会費が無料になるだけでなく、au、UQ mobile、povoいずれかの利用者だと、新規入会時にPontaポイントが最大1万ポイントがもらえます。
クレカ積立で貯まったPontaポイントは、ローソンなどのお店で使えるほか、au PAY残高にチャージして使うことも可能です。auユーザーやau PAYカードを持っている人は、auカブコム証券でつみたてNISAをはじめてみましょう。
つみたてNISAについてよくある質問
ここでは、つみたてNISAについてよくある質問をまとめました。
- つみたてNISAの金融機関は変更できますか?
- 以下の3ステップで変更可能です。ただし、手続きには2週間程度かかるほか、今年中に1回でもつみたてNISAで投資をしている場合は、2023年のNISA口座は変更できません。2024年の新NISA口座については、2023年10月以降に申請すれば変更できます。つみたてNISAの金融機関の変更
- 変更前の金融機関にNISA口座の変更を申し出て、手続きに必要な書類をもらう
- 変更先の金融機関にNISA口座の申込書類を請求する
- 申込書類とその他必要書類をそろえて変更先の金融機関に送る
- SBI証券と楽天証券でおすすめ銘柄に違いはありますか?
- ほとんど違いはありません。SBI・V・全米株式インデックス・ファンドは楽天証券では買えませんが、eMAXIS Slimシリーズといった低コストで人気のある銘柄はどちらでも買えます。
- 新NISAが始まる2024年からはどうなりますか?
- つみたてNISAは一般NISAと一本化され、新NISA(新しいNISA)のつみたて投資枠に生まれ変わります。年間の非課税投資枠も120万円に拡大し、成長投資枠とあわせると非課税投資枠は年間360万円です。非課税保有限度額(生涯投資枠)1,800万円という制限はあるものの、現行のNISA制度と比べて使いやすいと言えるでしょう。
つみたてNISAでは組み合わせる銘柄を増やしすぎないのがおすすめ
つみたてNISAでは、組み合わせる銘柄を増やしすぎないのがおすすめです。
つみたてNISAで投資できる投資信託は、1銘柄でも十分な分散投資ができます。できる限り投資する銘柄は絞ったほうが管理も楽です。銘柄の組合わせに迷っている間にどんどん株価が上がってしまったら、機会損失になるのでもったいないでしょう。
銘柄の組合わせに迷ったら、とりあえずeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)を買ってみてください。いずれにせよ、2024年からは新NISA口座に自動的に切り替わるので、銘柄の組合わせは投資しながら考えるというのも1つの手です。
これからつみたてNISAをはじめるなら、SBI証券がおすすめです。取扱銘柄数が業界No.1なだけでなく「かんたん積立 アプリ」を使えばスマホ1台でつみたてNISAがはじめられます。
\アプリでつみたてNISAがはじめられる/