認知症と聞くと、多くの方は、何もできなくなる、意思疎通が難しくなって、外出して家に帰ってこられなくなるなどのイメージを持たれるのではないでしょうか。
実際には、病院で認知症と診断されても、急に何もかもできなくなるわけではありません。
認知症だからと言って、今できている散歩や料理などをやめさせてしまうと、逆に症状が進んでしまうことがあります。
しかし、普段と変わらないように思えても、いつ散歩から帰って来られなくなってしまうのか実際には分からない、今日は大丈夫でも明日も無事に帰って来られるか不安、ひとりで外出させるのが心配というのも家族の本音です。
今回は、認知症の方の散歩や外出に利用したいサービスにスポットをあてていきます。
携帯電話を持って外出することが習慣化している方におすすめ
認知症になると、新たな行動を習慣として、取り入れることが難しくなります。
そのため、散歩に行くのにGPSの端末を持っていくように伝えても、難しく、靴や服、杖などにGPS端末を取り付けて利用している方もいます。
しかし、靴や服などは、毎日同じものを履いたり着たりするとは限らないため、確実性に欠けます。
携帯電話やスマートフォンを外出時に持っていくことが習慣化されている方の場合、携帯電話やスマートフォンの居場所の確認できるアプリやサービスを利用するのもひとつの方法です。
docomo イマドコサーチ
docomoが提供している月額使用料税込み220円のサービスです。
対応する携帯電話やスマートフォンのGPS機能を使って居場所の確認ができる見守りサービスです。
月額使用料は見守る方だけにかかります。
また、見守られる方はドコモ回線の契約が必要になりますが、見守る方はドコモ以外を使用していても利用できます。
GPSを利用する機器は、充電が必要になります。
一緒に住んでいる介護者であれば充電も苦ではないかもしれませんが、離れて住まれている場合では充電のために家によるのも大変ですし、充電中に外出されてしまうかもしれません。
本人がもともと持っている携帯電話やスマートフォンであれば、本人が充電を行い持って外出される可能性が高いものです。
本人が日ごろから外出時にも持ちだしている物を活用することで居場所の確認を確実に行うことができます。
≪画像元:docomo イマドコサーチ≫
散歩などを一緒にしてくれる認知症サポーターに依頼
認知症の方の散歩では帰って来られなくなることも問題ですが、足腰の弱りもある方では、転倒も心配です。
散歩に行く時間が決まっている方の場合、一緒に散歩をしてもらえるように認知症サポーターを活用するのもひとつです。
認知症サポーターとは認知症サポーター養成講座を受講し、住んでいる地域で認知症に対して正しい知識と理解を持ち、認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けを行う方です。
実際に認知症サポーターが地域で支援していく場合、ステップアップ講座受け、地域支援センターやかかりつけ医、スーパーや金融機関などと連携し、チームオレンジとして支援していきます。
≪画像元:認知症サポーター・チームオレンジ≫
チームオレンジの取り組みのひとつとして、認知症の方のやりたいことを個別に支援していく活動があります。
その活動の一環として、認知症の方と一緒に散歩を行った活動例があります。
いつも、決まった時間に散歩に行く習慣になっている場合は、この個別支援活動で一緒に散歩を行ってもらえれば、途中で道がわからなくなる、転倒して動けなくなるなどの心配が減ります。
家族だけで介護を行うのではなく、地域の中で、認知症を理解してもらいながら支援してもらえると思うと、心理的な負担も減ります。
認知症の方の介護は、介護をする側の心理的な負担の軽減も重要です。
チームオレンジや認知症サポーターからの支援を利用したい場合は、市区町村の担当窓口や地域包括支援センターに相談してみましょう。
いざという時のためにSOSネットワークに事前に登録を
あってはならないことですが、認知症の方が外出から戻って来られない場合が発生してしまうことがあります。
そのような時に利用したいのが、各地域で徘徊SOSネットワークや認知症高齢者等SOSネットワークといわれる地域の取り組みです。
この取り組みは、認知症の方が行方不明になった場合に、警察だけではなくタクシーやバスなど地域の公共交通機関などの協力機関と連携し、速やかに発見・保護することを目的としています。
SOSネットワークは、事前に登録することができます。
【横浜市の例】横浜市認知症高齢者等SOSネットワーク
本人がいないと気付いたら警察や区役所、地域包括支援センターに連絡します。
連絡を受けた警察などは公共交通機関などの協力機関と連携し、発見や保護の協力をします。
区役所や地域包括支援センターなどで、事前に登録することができます。
本人がいないと気付いた時、家族は不安でどうしたら良いのか分からなくなり、冷静ではいられません。いざという時のために、事前に登録しておくとスムーズにSOSネットワークを利用することができます。
本人の服装やいなくなったと思われる時間などの情報を、SOSネットワークに伝えるためにも、日ごろから本人が着ている衣服を把握したり、何曜日の何時には何をしているといった日常生活のスケジュールを大まかに把握しておきましょう。
衣服や持ち物で、本人が気付きにくい場所に名前や連絡先などを記入しておくのも良い方法です。
≪画像元:横浜市 認知症高齢者等SOSネットワーク≫
本人のしたい気持ちを尊重した生活へ
認知症の方へのサポートのひとつとして、今できていることや日常生活の良い習慣が続けられるように、関わっていく方法があります。
危ないからという理由で本人が続けていきたいことを取り上げてしまうのは、よくありません。万が一の事態が起こることを考えて対策をとることで、認知症の方や介護を行う方も安心でき、本人のしたい気持ちを尊重した生活することができます。
認知症の方に対する協力体制は、地域によって異なります。
お金のかかる介護保険の介護サービス以外でも支援が広がってきています。
地域包括支援センターなどで、お住いの地域で行われている認知症の方に対するサポートについて、一度確認してみられることをおすすめします。