分譲中古マンションを購入するとき、資金計画(返済計画・住宅ローン)に余裕はありますか。
インフレ傾向の中で、中古マンションの購入価格は上がっています。
住宅ローンも上昇気味ですが、管理費・修繕積立金(以後管理費など)も値上げ傾向です。
大規模修繕工事費も、もちろん上昇しております。
以前の記事では、理事会や総会の議事録や議案から値上げについて考察しました。
今回は修繕積立金の値上げについて、長期修繕計画から考察します。
国交省が発表する長期修繕計画(ガイドライン)には、統括表が備わっています。
ちょっとしたコツが解れば、総括表を見ることによって、値上げの時期や値上げをせざるを得ない状況などが把握できます。解説します。
長期修繕計画書と修繕積立金
長期修繕計画書とは
「将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するもの」です。
マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには、建物等の経年劣化に対して適時適切な修繕工事等を行うことが重要です。
≪執筆者撮影≫
そのためには、適切な長期修繕計画を作成し、これに基づいた修繕積立金の額を設定し、積み立てることが必要です
建物等の劣化に対して適時適切に修繕工事等を行うために作成する長期修繕計画は、
(1) 計画期間
(2) 推定修繕工事項目
(3) 修繕周期
(4) 推定修繕工事費
(5) 収支 計画を含んだもので作成
(6) 5にに基づいて「修繕積立金の額」の算出を行います。
長期修繕計画における計画期間の推定修繕工事費の累計額を計画期間(月数)で除し、各住戸の負担割合を乗じて、月当たり戸当たりの修繕積立金の額を算定します。
参照:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」
長期修繕計画総括表
長期修繕計画総括表とは、長期修繕計画書の中の一部で、今後30年程度に必要とされる修繕工事を、工事項目、必要時期に沿って一覧としたものです。
縦軸は工事項目(支出)、修繕積立金項目(収入)、横軸は時間軸(年単位)になります。
総括表の確認
値上げが設定されているか
総括表、収入の「収入」の「修繕積立金年度合計」(1) をご覧ください。
途中金額が大きくなることがあれば、それは修繕積立金の値上げを指しています。
多くのマンションで、数年ごとに修繕積立金を値上げすることで、必要な修繕費をまかなうことができる『段階増額積立方式』を採用しています。
国土交通省「平成30年度マンション総合調査」によると、平成22年以降に完成したマンションの67.8%が段階増額積立方式を採用しています。
段階式値上げは、5年スパン程度で上げることが多いです。
単年度で金額が増えている個所があれば、一時金徴収を行う予定となります。
修繕積立金不足が懸念されるか
次年度繰越金赤字の有無について、確認してください。
総括表一番下段の「修繕積立金 次年度繰越金」(2) が赤字の年は、残高より工事費が多く赤字になっています。
大規模修繕工事施工年度など支払額増額による単年度の赤字でなく、継続して赤字が発生する際は、修繕積立金不足です。値上げの可能性が高い。
大規模修繕工事の単価が妥当か
区分の「仮設」、「建物」の項目に金額が並ぶ年、「大規模修繕工事の施工」この合計額がざっくりとした大規模修繕工事費用になります。
この合計額をマンション戸数で割ってください。1戸あたりの工事単価が計算できます。
これが100万円を切るようであれば、工事費用に不足分が出る可能性が高いです。
例えば、大規模修繕工事費用の合計4,500円で、50戸あるとすれば、1戸当たり90万円となります。
住宅支援機構の発表をまとめたマンション管理新聞(2023年9月25日)では、戸数区分ごとの戸当たり工事費平均が掲載されました。
マンションの総戸数20戸未満では約162万円、101戸以上は109万円となっています。
単価を修正すると大規模修繕工事費用は増大するので、それを踏まえた修繕積立金値上げが想定されます。
長期修繕計画総括表の精度が適切か
更新状況の把握をしてください。
基本的に物価高騰を踏まえると、更新がされていない計画書ほど工事コストの増大が見込まれ、修繕積立金値上げの可能性が高まります。
・ 長期修繕計画書自体が、管理組合の総会で承認されているか
長期修繕計画が計画されたものの、方向性が定まらず、総会で承認されていない(正式な長期修繕計画でない)場合があります。
・ 前期期末の修繕積立金残高が計画書に反映されているか。
前年度末の修繕積立金 次年度繰越金額が総会の貸借対照表と合っているか
・ 作成者がだれか
新築時の施工会社や、大規模修繕工事の設計監理を手掛ける設計事務が作成した長期修繕計画書は、信ぴょう性が高いものになります。
反対に建築士事務所免許のない管理会社や、経験の少ないフロント営業が作成した長期修繕計画書は、信ぴょう性にばらつきがでます。
必ず「長期修繕計画」を確認しよう
中古マンション購入時は、かならず長期修繕計画を確認しましょう。
今後、住宅ローンや固定資産税も増加傾向です。
修繕積立金の値上げ想定されるのであれば、家計がそれに対応できるかの検討が必要です。
また修繕積立金が適切に積み立てられていない組合のマンションを購入するのは、将来的に売却できない等のリスクがあります。
内容について疑問があるときは、仲介の不動産会社か、管理会社に質問してください。
あるいは、第三者的な立場のマンション管理士に相談してください。