確定申告の時期がやってきました。
年間10万円以上の医療費自己負担があった方は、確定申告の際に「医療費控除」を受けることができます。
しかし、
「ちょっとのことなら、薬局で市販薬を買って対処しているから、年10万以上も医療費払ってない」
という方も多いのではないでしょうか。
そんな方にぜひ使ってほしいのが、「セルフメディケーション税制」です。
申請すれば、年1万2,000円を超えた分の市販薬の購入代金に対して、所得税と住民税の税額控除を受けることができます。
この記事では、医療費控除を使えなかった方にぜひ使ってほしい、「セルフメディケーション税制」の概要と注意点、申告手順をお伝えします。
令和5年度の確定申告は2024年2月16日~3月15日までですので、対象の方はぜひ活用してください。
セルフメディケーション税制とは?
ドラッグストアなどで購入した市販薬の年間合計額が1万2,000円以上だった場合に、1万2,000円を超えた分に対して所得控除が受けられる制度です。
もともとは令和3年までの期限で実施される予定でしたが、延長され、令和8年12月31日まで適用されます。
対象となる年間購入金額
1万2,000円以上
(その年の1月1日~12月31日までの期間において合計購入金額)
控除の上限額
8万8,000円まで
例えば、1年間に対象となる市販薬を10万円購入した場合、1万2,000円を差し引いた8万8,000円となり、控除対象金額の上限に達します。
この8万8,000円に、所得に応じて設定されている「所得税率」をかけた金額が、戻ってくる金額になります。
次項でシミュレーションしてみましょう。
いくら戻ってくるのか?【例:課税所得額400万円、市販薬の購入金額年5万円の場合】
課税所得額400万円、市販薬の購入金額が年5万円の場合で試算してみます。
控除額:5万円 - 1万2,000円 = 3万8,000円
減税額は「所得税」と「住民税」に分けて計算します。また税率も課税所得額に応じて変わります。
所得税:3万8,000円(控除額)×20%(所得税率)=7,600円の減税効果
個人住民税:3万8,000円(控除額)×10%(個人住民税率)=3,800円の減税効果
⇒合計1万1,400円の減税効果
ちなみに1万2,000円を超えた分の金額が小さいと、減税効果も低くなります。減税で得られる効果がたとえば500円だったら、確定申告会場へ行く交通費で赤字が出るかもしれません。
減税で得られる効果と、
確定申告にかかる費用(申告会場への交通費や郵送費用など)とを
天秤にかけて、メリットが大きい場合にセルフメディケーション税制を活用すると良いでしょう。
ご自分がどれだけ戻ってくるのか、便利なシミュレーションサイトもあるので試算して判断してください。
参照:日本一般用医薬品連合会 セルフメディケーション税制 どれだけおトク?
対象となる市販薬の種類
スイッチOTC医薬品
対象商品リストをみると、ごく一般的な風邪薬や胃腸薬などが対象になっています。
花粉症の治療薬も一部対象になっています。
対象となるスイッチOTC医薬品は、購入レシートにたいてい表記がなされているので、目印としてください。
もしくはパッケージに以下のマークがついています。
対象となる医薬品名は国税庁のこちらのページで確認してください。
申請できる人
所得税、住民税をおさめている人
「健康の保持増進及び疾病の予防に関する一定の取組」を行っている人
セルフメディケーション税制は、家族分の合算OKです。
専業主婦(夫)や学生の子ども等が購入した分を申請する場合は、上記の2つの条件にあてはまる、生計を一にする家族に世帯分まとめて申請してもらいましょう。
この考え方は往来の医療費控除と同じです。
条件2については、「セルフメディケーション税制」がもともと膨らみ続ける医療費を抑制するためにはじまった施策のため、このような条件になっています。
昨年1年間に以下のようなことを実施していればOKです。
保険者(健康保険組合等)が実施する健康診査【人間ドック、各種健(検)診等】
市区町村が健康増進事業として行う健康診査
予防接種【定期接種、インフルエンザワクチンの予防接種】
勤務先で実施する定期健康診断【事業主検診】
特定健康診査(いわゆるメタボ検診)、特定保健指導
市区町村が健康増進事業として実施するがん検診
2021年以前は健康診断などを受けたことを証明する書類の添付が必要でしたが、税制改正により添付はしなくてOKになりました。
ただし、セルフメディケーション税制の明細書に、健康増進のために何に取り組んでいたのか記入する欄があるので、そこには内容を正しく記載しましょう。
必要な書類
確定申告書+セルフメディケーション税制の明細書
提出するのは確定申告書と「セルフメディケーション税制の明細書」だけです。
まずは健康診断や予防接種などについて、記載しましょう。ちなみにここに記載した健康診断や予防接種の費用については、控除されません。あくまで健康増進への取組みの証明として記載するだけですので、ご注意ください。
つぎに対象の医薬品について、レシートをみながら、内容と金額を記入していきます。
ちなみに、2021年から購入したレシートや領収書の添付は必要なくなりました。
ただしレシートや領収書は、5年間は手元に保管しておくことが求められていますので、廃棄はしないようにしてください。
セルフメディケーション税制の明細書は、国税庁のHPで書式をダウンロードできます。手書きだけでなく、電子作成も可能です。
提出方法
確定申告書とともに提出します。
郵送や確定申告会場への持ち込みの他、e-TAXでの電子申請も可能です。
注意点(医療費控除とどちらを選んだ方が良いか)
いちばん大切な注意点として、10万円の医療費控除と、1万2,000円のセルフメディケーション税制は併用できないことを覚えておいてください。
どちらを選べば良いか、先にご紹介したサイトで試算して判断しましょう。
セルフメディケーション税制は医療費控除の年10万円と比較して、年1万2,000円が基準となっており金額的なハードルが低いのが最大のメリットです。
医薬品を購入した際はレシートを必ずとっておいて、年が明けたら確定申告でセルフメディケーション税制の申告を行ってください。
セルフメディケーション税制は令和8年12月31日が適用の期限となる見込みです。
過年度の分も5年間はさかのぼって申告可能ですので、ぜひ活用してください。