感染症による多くの制限が解除され、海外旅行に出かける人も多くなってきました。
海外旅行をする場合、悩むことに一つに保険の加入があります。
「海外で病気やケガをしたら高額になる」ということはすでに常識です。
そこで、海外旅行保険に加入するかどうかのポイントである健康保険の海外療養費制度について紹介します。
海外療養費制度とは
海外では、自由診療が多く日本のように保険証で治療を受けることができません。
海外旅行中に病気やケガをして治療を受けた場合には、いったん現地で医療費を全額支払います。
そして、日本に戻ってから申請をすることで療養費が支給される仕組みになっています。この還付される制度を海外療養費制度といいます。
また海外でのすべての治療が該当するわけではなく、海外での予期しない病気やケガが対象となり、治療目的の渡航や日本で保険が適用されない治療や薬が使用された場合は、対象となりません。
海外療養費の金額について
海外療養費は、まず海外で支払った医療費と同じ治療を日本で行った場合の医療費を基準として計算します。
計算した金額を海外療養費とし、そこから自己負担分(一般的には3割)を引いた金額が実際に支給されます。
そのため、実際に海外で支払った金額と比べて、支給額が大幅に少なくなるケースがあるので、注意が必要です。
また、海外の通貨で支払われた医療費は、その支払われた日ではなく支給決定を行う日のレートで円に換算されます。
ここでも為替の影響を受けることになります。
例)海外で病気になり現地の医療機関で100万円の医療費を支払った。
日本での同じ治療を受けた場合の医療費は60万円だった場合。
健康保険の自己負担分: 60万円 × 3割 = 18万円
健康保険の実際に支給される海外療養費:60万円 − 18万円 = 42万円
42万円が海外療養費として自分の口座に還付されます。
結果的に実質かかった医療費: 100万円−42万円=58万円
この海外療養費の自己負担分の18万円は高額療養費の対象となり、所得と年齢により異なる自己負担上限額を超えた場合、後から超えた分が還付されます。
さらに確定申告の際には、医療費控除の対象となりますので、忘れないで申請をしましょう。
申請について
海外療養費の請求は、海外で医療費を支払ってから2年以内のものが対象ですので、面倒でもいろいろ調べる時間的な余裕はあります。
海外療養費の申請は、国民健康保険に加入している方は市区町村役場、会社員や公務員等の方は、勤め先の健康保険組合か協会けんぽになります。
国民健康保険の場合の申請に必要なものは、以下の通りです。
・ 国民健康保険療養費支給申請書
・ 保険証
・ 世帯主の振込先口座がわかるもの
・ 診療内容明細書(診療を行った医師が記入したもの)
・ 領収明細書(診療を行った医師が記入したもの)
・ 領収書等の原本
・ 日本語の翻訳文(外国語で作成されているすべての書類に必要)
・ 診療を受けた方の渡航の事実が確認できる書類(旅券や航空券等)の写し
・ 調査にかかわる同意書(申請内容について現地医療機関等へ事実調査するための同意書です)
ここで注意をすべきは現地語で書かれた書類の和訳です。
和訳ができればよいというものではなく、医療に強い専門の方に和訳を頼まなければならず、その費用が高額になりますので、心づもりをしておく必要があります。
また、健康保険組合や協会けんぽも同じような書類が必要となりますが、実際に手続きをする場合は、それぞれの担当窓口に相談をして確認をすることをおすすめします。
民間の医療保険が使える
クレジットカードに付帯されている海外旅行傷害保険はよく知られていますが、実は、民間の生命保険会社や損害保険会社の医療保険に加入していれば、海外での病気やケガでも保険金の対象となります。
申請は帰国後になりますが、健康保険のように様々な書類が必要になることは覚えておきましょう。
通訳の費用や帰国時の交通費なども含まれて幅広く支給されます
海外では、自由診療が多いため医療機関にかかると高額になるケースが多いようです。
健康保険の海外療養費や民間保険会社の医療保険も海外での医療費に対しては対象となります。
しかし、あくまでも医療費だけです。
また、健康保険の場合は自己負担分を除いた支給となります。
それと比べると海外旅行保険は、通訳の費用や帰国時の交通費なども含まれて幅広く支給されます。
医療費だけの支給では不安な人は、海外旅行保険に加入するとよいと思われますし、あまり不安はないと考える人は、健康保険や医療保険で大丈夫かもしれません。
海外旅行に対しては、現地での病気やケガをした場合の不安がどうすれば解消されるかを考えて保険に加入することが、一つのポイントになるのではないでしょうか。