「銀行に行くと、NISAのポスターが目につく」
「銀行からNISAの電話勧誘があったけど、よくわからないので断った。でも銀行がそんなにおススメしてくるNISAってオトクなの?」
景気が回復するかもという期待感も漂い始め、反面で世界情勢や物価高などマイナスな要素も多く、自分の資産形成を考える中でNISAが注目されています。
銀行など金融機関もNISAを積極的にアピールしてセールスをしているのが現状です。
今回は「銀行がススメしてくるNISAは自分にあっているのか?」を見極めるヒントになるよう、銀行員が解説します。
新NISA制度も含め基本の再確認
NISA(「少額投資非課税制度」)は、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度です。
一般に株式や投資信託などを売却して得た利益や配当に対しては、約20%の税金がかかります。
そこでNISAを利用する、具体的には「NISA口座(非課税口座)」内で購入した利益を非課税にすることで、国民の資産形成と投資の推進を目的に創設された制度がNISAになります。
NISAはイギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルに、日本版ISAとしてNISA(Nippon Individual Savings Account)という愛称でスタートし、現在は社会的にも浸透しています。
NISAの誕生から現在、そして今後の変更などを時系列で見てみましょう
NISAの誕生
2014年1月 NISAとしてスタート
株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有可能
現在(記事執筆時2023年9月時点)
現在のNISAは3種類。
【一般NISA】
一般NISAはNISAが名称変更したもので内容は変わらず、株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有可能
【つみたてNISA】
つみたてNISAの対象になる「一定の投資信託」(のちほど説明します)なら年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有可能
【ジュニアNISA】
ジュニアNISA(「未成年者少額投資非課税制度」は2016年1月スタート
未成年が株式・投資信託等を年間80万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有可能。
成年年齢の引き下げに伴い、2023年時点では0~17歳の人が利用可能(未成年者本人以外に二親等以内の親族(両親・祖父母等)も運用管理者になれる)。
*ただし2023年末で終了(運用中の場合に年齢などで延長特例あり)
2024年改正後、新しいNISAのポイント
ポイント1:改正により、NISAは【成長投資枠】と【つみたて投資枠】の2種類になる
ポイント2:非課税保有限度額は1人1,800万円までに増加(成長投資枠は1,200万円まで)
ポイント3:利用枠に空きができれば再利用が可能
ポイント4:成長投資枠とつみたて投資枠を別々の金融機関で利用できないので、新NISA制度はひとり一つの金融機関で利用することになる(まとめて次の年に金融機関を変更は可能)
ポイント5:現在のNISA制度(一般NISA・つみたてNISA)で保有している投資信託などは、改正後の新NISA制度の「別枠」として当初購入時からの非課税保有期間内はそのまま持ち続けることができる。
たとえば今までNISA利用経験の無かった人が今年「一般NISA120万円、つみたてNISA40万円」購入すれば、新NISAの1人1,800万円の限度とは別に非課税枠を使えることになる
【成長投資枠】
現在の一般NISAに相当、年間240万円まで購入可能で非課税保有期間は無期限に(一般NISAは年間120万円まで購入可能、非課税保有期間は5年)
【つみたて投資枠】
現在のつみたてNISAに相当、年間120万円まで購入可能で非課税保有期間は無期限に(つみたてNISAは年間40万円まで購入可能、非課税保有期間は20年)
参照:金融庁 NISAとは
銀行は、どうしていまNISAを強力にセールスしているのか?
最近の銀行は「新規NISA口座開設とつみたて投信購入で2,500円キャッシュバックプレゼント!」といったように、積極的な戦略でNISA口座の獲得競争をしています。
どうして銀行はいまこの時期に、NISAを強力にセールスしているのかは、新NISA制度のポイントでわかります。
- 非課税保有限度額は1人1,800万円までに増加
- 成長投資枠とつみたて投資枠を別々の金融機関で利用することはできない
- 現NISA制度で保有している投資信託などは、改正後の新NISA制度の「別枠」
まったくNISAの取引をしていない新規顧客を今年中に獲得して口座を開設・積立投信を購入までしてもらえれば、その顧客を新NISA開始後も囲い込めます。
NISA口座を作るのも結構面倒(ネット経由で解説は可能ですが、操作や本人確認資料の準備などそれなりの手間はかかる)なので「口座を作ってもらえれば…」ということです。
現在のNISAで運用できる投信は、新制度になっても引き続き運用可能です。
銘柄により「つみたて投資枠専用」「成長投資枠専用」「両方の枠で可能」などに分かれていたので、選択がむずかしいところでもあります。
新NISAで運用可能な投資対象商品の特徴を知ろう
個別の投資信託商品を考える前に、新NISAを前提に「成長投資枠」「つみたて投資枠」それぞれで運用ができる投資の対象となる金融商品を知ることが大切です。
・成長投資枠の投資対象商品
上場株式、投資信託(信託期間や分配方法、投資対象などに制限あり)、REIT(不動産投資信託。 投資された資金で不動産投資を行い収益(賃料や売却益)を分配・還元する金融商品)等
・積立投資枠の投資対象商品
長期の積立・分散投資に適しているなど一定の「条件」を満たす投資信託 (現行の、金融庁が指定するつみたてNISA対象商品と同様)
≪画像元:一般社団法人全国銀行協会≫
つみたて投資枠~3つの投資信託
つみたて投資枠の投資対象となる長期の積立・分散投資に適しているなど一定の「条件」を満たす投資信託 は以下の3つがあります。
【株式型】
株式を組み込むことができる投資信託(株式を組み込まないものも存在する)
【資産複合型】
株式、債券、など複数の資産を投資対象にしている投資信託 「バランス型」とも呼ばれる
【ETF】
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など特定の「指数」に連動する運用成果をめざした投資信託で、東京証券取引所などに上場しているもの
類似した投資信託に「インデックスファンド」があります。(ETFとの違いは上場していないことや、指数の発表頻度から一日で購入できる回数が異なるなど)
上記のように投資の対象から3つに分かれるのですが、さらに株式でも国内株式のみ、海外株式のみ、国内海外両方(「内外」*ETFは国内・海外の2分類)に細分化され、対象となる投資信託は、現在248本あります。
参照:金融庁/つみたてNISA対象商品の分類(pdf)(2023年9月1日時点)
銀行で勧められた投資信託を判断する「2つの質問」
2024年の制度改正は政府の「貯蓄から投資へ」資産所得倍増計画の大きな柱として国の肝煎りよるもので、金融機関もビジネスチャンスとして競争を繰り広げています。
そのためこれから(すでにいまも)あなたに電話勧誘、窓口や訪問によるNISAセールスが来るかもしれません。
また自分で投資を始めてみようと考える人にも、銀行でNISAと投資信託をおススメされたとき、判断するにはどうしたらいいでしょうか?
投資信託はさまざまな種類があり、どれを選ぶかは個人の自由選択ですし、正解不正解はありません。
銀行によって取り扱っている投資信託の数や種類も異なります。
銀行員が「あなたにこれがおススメです」と言ってきたなら、その意図するところを探ることで、自分に適したものか判断する参考にはなります。
そこで、判断に迷ったときや相手の意図を知りたいと感じた時など、次の質問を投げかけてみてください。
質問1:なぜその投資信託が私におススメなんですか?
- 投資に関する考え方や投資の知識・経験(いわゆる金融リテラシー)
- 資産をどうしたいのか(「減らしたくない」「損しても良いから増やしたい」→投資性向とよぶ)
- 考えているお金には明確な使いみちが決まっているのか?決まっていないのか?
などを聞いて、その人に適していると思われる商品を、ひとつではなく複数提示するのが本来の提案です。
この質問に対し答えられなかったり、銀行都合が見えたりするようなら、それはあなたにおススメではなく銀行(銀行のイチ押し、あるいは銀行員の個人ノルマ)にとっておススメなのかも知れません。
質問2:あなたもその投資信託を持っているの?(これから買うの)?
「絶対儲かります!」「電話してくれた人だけ特別に教えます!」こういったかなり疑わしい広告や記事に対し、「そんなに儲かるなら他人に教えず自分でやれば?」というツッコミで、私もその通りだと思います。
投資や運用の説明でもこれと似たシチュエーションになる場合があり、上記したように販売する側の都合優先で話が進むようなときや、運用予想など「本当に大丈夫なのかな?」と心配になったなら「じゃああなたもこの投資信託を持ってるの?」(あるいは「これから買う予定?」)と聞いてみてもいいでしょう。
個人的に良くない答えとしては、
「私は投資をしないので」(本当にそうだとしても、投資しない人間に投資の説明を聞かされるお客様の気持ちを考えればダメな答えとわかるはず)
「私の個人的意見は差し控えさせていただきます」(上記と似たもので、お客様からアドバイスを求められているのに、それっぽい言い回しで逃げているだけ)
こういった答えが返ってきたなら、あなたもその銀行員とそれ以上話したいとは思わないはずです。
銀行員にしてはいけない質問
投資信託は運用商品であり、運用成果によっては元本を割り込むこともあります。
投資対象や国内外などの違いで、想定される安全度には高低差もありますが、必ずもうかるモノも必ず損するモノも存在しません。
しかしこの質問はけっこう多いのが実態で、投資経験がない方が良く口にされます。
これも数は少ないのですが、私もお客様から何回か投げかけられた質問です。
この質問は自身が投資の経験がない、投資に詳しくないと銀行員に気づかれてしまうので、注意してください。
「銀行がススメしてくるNISAは自分にあっているのか?」と感じたときは、おススメの2つの質問をするようにして、自分にあった商品なのか判断してください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)
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