戸建住宅を購入したいあなた、希望の物件は見つかりましたでしょうか。
住宅は、電気・ガス・水道のインフラが整わなければ、生活できません。
電気を家まで運んでくれるのは、電柱です。
電話線や光ケーブルも、電柱を通して、配線されています。
あなたの希望した物件に、電信柱は立っていますでしょうか。
あるいは物件に隣接する形で、電信柱が立っていますでしょうか。
電柱の存在は、あなたの収入になるかもしれません。
反対に、不動産の資産価値を下げるかもしれません。
今回は、不動産における電柱の関係について、述べていきます。
敷地内だけでなく、敷地周りに電柱が立っている不動産物件は「要注意」
電柱とは
電力会社などが、送電や配電の目的で設置し管理している柱状のものです。
電力柱とも言われます。
通信会社などが、電話線や光ケーブルを目的とした電信柱や、電気と共用で運用する共用柱もあります。
電柱の所有者
取り付けられているプレートに所有者の記載があります。
プレートが2枚付いている電柱について、 関西などは上に付けられているプレートが所有者(管理者)、関東などは下に付けられているプレートが所有者(管理者)など、 地域差があるようです。
無電柱化
現在、国や地方公共団体では、電線を地中に埋める等の無電柱化を進めています。
最も無電柱化率が高い東京都でも、無電柱化されている道路は5%台です。
電柱が収入になる場合
土地の所有者が電柱を設置するための敷地を貸すと、賃貸料として「電柱敷地料」が支払われます。
自身の敷地内に電柱や電線などの電力供給設備が設置されている場合、電力会社などが土地の所有者に支払う料金です。
宅地内にある電柱一本につき、一年間で1,500円程度となります(全国一律)。
※ 「電気通信事業法施行別表第一」
あくまで自身の土地の電柱に対して払われる料金で、自身の土地に電柱が隣接していても支払われません。
支払いは、毎年の場合や、3年毎に3年分支払われる場合があります。
電柱は資産価値を下げる恐れ
電柱の最大の問題点は、移設が容易でないことです。
また自身の敷地にしている電柱の移設は、より困難になります。
技術面
電柱は倒壊すると危険なため、移設には専門業者の作業が必要です。
費用は立地や周辺環境によりますが、数十万円は必要です。
上記は電柱の移動費であり、共架されている配線の移動は、別途費用が必要です。
地下からの配線の移動が必要な場合や、共架状況によっては、近隣の電柱の移動も必要です。
権利面
自身の敷地内の移動ならともかく、自身の敷地から他人の土地へ移設は、まず承諾が得られません。
市区町村敷地(道路など)への移動は、申請し許可を得なければなりません。
移設費、復旧費を負担しなければなりません。
隣接している電柱の移設
自宅の間口(摂動部分)に立っている電柱は、土地利用の支障になります。
これが自身の敷地でない場合、この移設は、敷地内の電柱より困難です。
上記3点を見ても、電柱の移動は、高価であり承諾が得られるとは限りません。
電柱が敷地内ある物件、隣接している物件の購入は、リスクが高いと言わざるを得ません。
筆者の経験談
筆者は不動産管理や仲介に従事しながら、電柱に関して、以下の経験をしました。
・ 交通の便や環境で候補に挙がった土地の仲介を試みたが、間口に立っている電柱を移設することができず、購入を断念した。
・ 8区画の分譲地を売却している際に、ある区画に申し込みが入った。
その区画には電柱があり、どうしても気に入らなかったので、売れていない隣の区画に電柱を移設して、売却した。
・ 敷地内の電柱を全面道路へ移設しようとしたら、道路にある側溝の補修費も請求された。
・ 移設を検討している電柱は、電線だけでなく、光ケーブル等が架電されていた。
地下の配線も架電されており、電力会社から数百万円の見積提示があった。
・ 電柱が土地の出入口(間口)に干渉する場合、住宅のプランが限られる。
・ 駐車場を予定している場所に電柱が干渉している事例が多い
・ 売買契約時に、電柱関係の収入や支出について、伝え忘れていることが多い。
これは電力会社によりますが、これらを3年分まとめて支払う場合があり、存在を忘れてしまうのです。
マイホームでは稀ですが、自身が所有しない電信柱に、自宅のための電線を取り付けている場合があります。
電柱を利用させてもらうので、共架料が発生します。
電柱を購入した後に費用を受け取る権利である、「電柱敷地料」の存在は、さほど問題になりませんが、支払い義務がある「共架料」については、契約不適合責任を問われる可能性もあります。
敷地に接近して電柱が立っている不動産は注意
電柱に罪はありませんが、敷地内に電柱が立っている場合、敷地に接近して電柱が立っている不動産は、注意してください。
私の経験でも、電柱がある物件は成約率が低いです。
移設は相当難しいと思ったほうが良い。
なので、電柱がある物件の購入は避けたほうが賢明です。
購入検討において、電柱を許容できるのであれば、値引き提案はしやすいと思います。(執筆者:CFP、1級FP技能士 金 弘碩)
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