筆者の父は転勤が多く、祖母に「どこでも使える郵貯にしておきな」と言われたそうです。
確かに、全国津々浦々にゆうちょ銀行TMはあります。
そんな郵便貯金ですが、放置しておくと消滅するという話がありましたので、紹介しましょう。
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満期から20年2か月経った定期性郵便貯金は権利消滅
≪画像元:郵政管理・支援機構≫
郵政民営化(平成19年9月30日)前に預けた定期性の郵便貯金について、預入期間満了日の翌日から20年間払い戻しなどの手続きがない利用者に対して、「権利消滅のご案内(催告書)」が送付されます。
「権利消滅のご案内(催告書)」の送付日から2か月以内に払い戻しの請求がないと、該当の郵便貯金の権利は消滅して払い戻せなくなります。
これは、権利消滅を定めた「旧郵便貯金法第29条」が、郵政民営化(平成19年10月1日)後も引き続き適用されるためです。
権利消滅した郵便貯金は国庫に返納されますが、令和3年度の権利消滅額は457億円でした。
これは、該当する郵便貯金が預け入れられた平成3年度が高金利だったため、預け入れられた額が多かったのも原因かもしれません。
対象の郵便貯金は
≪画像元:郵政管理・支援機構≫
郵政民営化前に預け入れた定期性の郵便貯金が対象ですが、以下のように貯金の種類によって満期の時期が異なります。
・ 定額郵便貯金:預入期間が経過したとき(自動継続扱いのものは民営化後に到来する継続日)
・ 定期郵便貯金:預入の日から起算して10年が経過したとき
・ 積立郵便貯金:据置期間(積立期間)が経過したとき
・ 住宅積立郵便貯金:据置期間(預入期間)の経過後2年が経過したとき
・ 教育積立郵便貯金:据置期間(預入期間)の経過後4年が経過したとき
「お預り年月日」が郵政民営化前までの定期性の郵便貯金は、すべて満期を迎えています。
民営化以前に自動継続する定期郵便貯金を預け入れしていても、民営化後に到来する最初の継続日をもって満期となっていて、自動継続はしていません。
通常貯金、民営化以降に預け入れた貯金は対象外
定期性の郵便貯金でも、郵政民営化後に預け入れたものは旧郵便貯金法第29条の適用を受けないため、対象となりません。
郵政民営化前に預け入れたた通常郵便貯金、通常貯蓄貯金も、権利消滅の対象外です。
筆者のゆうちょ銀行の貯金はこのタイプだったので、安心です。
催告書は郵送で届く
≪画像元:ゆうちょ銀行≫
まず、郵便貯金の満期から20年経過すると「満期日経過のご案内」が郵送され、その後「権利消滅のご案内(催告書)」が郵送されます。
催告書には送付日が記載されておりますので、送付日より2か月以内に手続きを行ってください。
例えば、送付日が令和5年4月30日の場合、手続き可能期限は令和5年6月30日です。
催告書が届かない場合は「現存調査」で確認を
引っ越しなどで、口座開設時に届け出た住所と現住所が異なる場合、催告書は現住所には届きません。
このように催告書が届かないケースは、全体の8割に及ぶそうです。
そのような場合、ゆうちょ銀行に「現存調査」を依頼し、後日結果を無料で郵送してもらうこともできます。
ただし、依頼日より10年以上前の日付を証明年月日とする調査はできません。
現存調査以外なら、ゆうちょ銀行か郵便局の窓口で問い合わせるといいでしょう。
払い戻しの手続きについて
対象の郵便貯金がある人は、払い戻しの手続きをしましょう。
ケースによって手続きが異なるため、ケース別に紹介します。
(1) 証書・通帳がある場合
≪画像元:郵政管理・支援機構≫
満期を過ぎた郵便貯金証書または通帳がある場合は、以下のものを持って郵便局の貯金窓口、またはゆうちょ銀行の店舗へ行ってください。
・ 払い戻しの手続きをする郵便貯金証書または通帳
・ 届け印
・ 本人確認書類(住所、名前、生年月日の入ったマイナンバーカードや運転免許証など)
(2) 証書・通帳がない場合
≪画像元:ゆうちょ銀行≫
満期を過ぎた郵便貯金証書または通帳がない場合は、まずは郵便局の貯金窓口、またはゆうちょ銀行の店舗へ行ってください。
そこで現存調査などを行い、郵便貯金があることが確認できれば、払い戻しの手続きができます。
・ 印鑑
・ 本人確認書類(住所、名前、生年月日の入ったマイナンバーカードや運転免許証など)
も払い戻しの際は忘れず持って行ってください。
(3) 代理人が手続きをする場合
名義人本人でなく代理人が払い戻し手続きをする場合は、証書・通帳の有無にかかわらず、名義人の証明書類、代理人の証明書類、名義人からの委任状、代理人の印鑑が必要です。
現存調査を依頼する際は、代理人の証明書類、名義人からの委任状が必要です。
委任状がない場合(認知症などで名義人が委任状を書けないなどの理由)でも、名義人のゆうちょ銀行の通常貯金口座にそのまま入金する場合は、払い戻せます。
ただし、入金先の通常貯金口座の入出金は停止されます。
名義人の入院費などで入金先の通常貯金口座からお金が必要な場合は、ゆうちょ銀行か郵便局の窓口で問い合わせてください。
4. 相続する場合
≪画像元:ゆうちょ銀行≫
名義人が亡くなっている場合、以下の流れで相続手続きによる払い戻しが必要です。
1. 「相続確認表」に必要事項をご記入の上、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に提出
2. 申出より1~2週間程度で「必要書類のご案内」が郵送される
3. 必要書類をゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口に提出
4. 必要書類の提出より1~2週間程度で代表相続人の通常貯金口座へ相続払戻金が入金
全ての手続きが完了するまで、1か月程度かかります。
死亡した名義人の郵便貯金の有無、記号番号など不明点がある場合は、「貯金等照会書」を提出してください(戸籍謄本などが必要)。
主な必要書類は、以下の通りです。
・ 相続確認表
・ 相続手続請求書
・ 相続人全員の印鑑証明書
・ 遺言書
・ 遺産分割協議書
・ 委任状
・ 被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍
・ 相続人代表者の本人確認書類
・ 相続人代表者の通帳
・ 被相続人の通帳及びカード
5. 満期から20年2か月経った郵便貯金の場合
満期から20年2か月経った定期性郵便貯金でも、権利消滅しないケースがあります。
それは、払い戻し以外の何らかの手続きを行った場合です。
・ 郵便貯金通帳、または貯金証書の再交付にかかる請求
・ 印章の変更の届出
・ 氏名の変更、または住所の移転の届出など
などが該当します。
また、事故、病気、災害、急な海外転出などの理由で、払い戻し請求ができなかったと認められる場合も、権利消滅を取り消して払い戻しに応じることがあります。
満期から20年2か月経ったとしても、とりあえず相談してみましょう。
早めに窓口で相談を
せっかく貯めた郵便貯金、みすみす消滅させてしまうのはもったいないです。
まずは早めに郵便局の貯金窓口、またはゆうちょ銀行窓口へ足を運び、相談しましょう。(執筆者:キャッシュレス研究家 角野 達仁)