「相続財産を取得しない」のと「相続放棄」は意味が違うので要注意

相続が発生した場合、遺産の分け方について話し合いますが、相続人の中には遺産を相続しない人もいるかもしれません。

相続財産を取得しないことを「相続放棄」と表現することもありますが、一般的に使われる「相続放棄」の意味と、法的な「相続放棄」は意味が違うので要注意です。

令和6年4月1日から不動産の相続登記が義務化!罰則規定もあるので要注意

相続する方法には3つの選択肢がある

相続が発生した場合、相続人は次のいずれかの方法で相続財産を引き継ぐことになります。テキストが入ります。

1. 単純承認
2. 相続放棄
3. 限定承認

単純承認とは、相続人が相続財産を取得する方法をいい、基本的に相続が発生した際は、単純承認で相続財産を引き継ぎます。

相続放棄は、亡くなった人（被相続人）の権利や義務を一切引き継がない方法をいい、債務超過に陥っている場合や、相続することがマイナスになるようなケースで利用します。

限定承認は、相続により引き継ぐプラスの財産を限度として債務を引き継ぐ方法で、債務が不確定の状態でも引き継ぎたい財産がある場合に用いる手段です。

一般的な「相続放棄」は相続財産を取得しないだけ

一般的に用いられる相続放棄は、相続財産を一切取得しないことをいいます。

相続権が消失したわけではないため、遺産分割協議書を作成後に相続財産が新たに判明した場合には、相続する権利を主張することができます。

ただし、一般的な相続放棄は相続財産を取得していないだけなので、被相続人に債務があれば、相続人のいずれかは債務を引き継がなければなりません。

法的な「相続放棄」は相続する権利を手放すこと

法的な相続放棄とは、家庭裁判所で相続する権利を手放す手続きを行うことをいいます。

相続放棄手続きが完了すれば相続権は失われますので、被相続人に多額の借金があったとしても、相続放棄した人が借金を返済する必要がなくなります。

一方で、法的な相続放棄を行えば不動産や預金などの財産も相続することはできなくなるため、相続したい財産がある場合や、被相続人の事業を承継したいときは相続放棄を選ぶことはできません。

相続放棄と限定承認は相続開始後3か月内に手続きが必要

法的な相続放棄または限定承認を行う場合は、相続開始があったことを知った日から3か月以内に手続きをしなければなりません。

（「相続開始があったことを知った日」は、基本的には相続開始日をいいます。）

相続放棄等を申請する場所は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

被相続人と相続人が住んでいる場所が離れている場合には、提出先の家庭裁判所をあらかじめ確認してください。

期限までに相続放棄等の手続きを行わなかった場合、単純承認により遺産を引き継ぐことになります。

ご家庭の状況によっては、勘違いや誤った手続きをしてしまうと多額の債務を背負うことになりかねませんので、相続が発生しましたら遺産の引き継ぎ方についてご一考ください。（執筆者：元税務署職員 平井 拓）

相続税の申告手続き、他の税金とは違う「3つのポイント」

固定資産税が6倍になることも 「空き家」に対する課税が強化の可能性

子供がいない方は必読 配偶者のどちらかが亡くなられてから気付く問題について