筆者の友人が50歳を超えました。
届いた「ねんきん定期便」をみて、
「私の年金、増えた? 」
と感じたそうです。
実は、50歳以上の人の中には同じように「増えた? 」感じる人がいます。
今回は「ねんきん定期便」をみた人が「私の年金、増えた? 」と感じたときに考えられる理由を3つお話しします。
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「ねんきん定期便」とは
「ねんきん定期便」とは、日本年金機構から送られてくるハガキもしくは封書です。
- 35歳と45歳と59歳のときには封書で届き、
- そのほかの年齢では毎年誕生月にハガキが届きます。
中には、保険料の納付額や年金加入期間など必要最低限の情報がシンプルに書いてあります。
自分の年金を確認する方法はインターネットによる「ねんきんネット」もありますが、基礎年金番号の入力などが必要になり、意外と面倒です。
「ねんきん定期便」は、まさに忘れたころに定期的に届く便利な定期便です。
「私の年金、増えた? 」と感じたときに考えられる3つの理由
「ねんきん定期便」を開封したとき、多くの人は「年金額」をチェックします。
やはり1番気になる点は「いくらもらえるのか」だからでしょう。
ただ、あるタイミングで「私の年金、前より増えた!?」と感じることがあるようです。
ここからは、増えたと感じたときに考えられる理由を3つお話しします。
1. 年金額の算出方法が「実績」から「見込」に変わるから
筆者の友人から「私、年金が今の時点で140万円ももらえるの。これからもっと増えるから老後は安心よ」と電話がかかってきました。
筆者の友人は53歳です。
久しぶりに目を通したら驚くほど年金額が増えていたため、電話をしてきたのです。
結論から言うと、友人の年金額がこれからもっと増える可能性は低いでしょう。
なぜならば、50歳以上の「ねんきん定期便」に書かれている年金額は、50歳未満の年金額とは算出方法が違うからです。
50歳未満は、それまでの加入実績に応じた年金額であり、50歳以上は60歳まで掛け金を払い続けた場合を想定した年金額になるからです。
つまり、
- 50歳未満は実績に応じた金額、
- 50歳以上は見込みで仮定した金額
になります。
「もしもこのまま掛け金を払い続けたとしたら」
と仮定しているため、年金額が増えて当たり前なのです。
筆者は、友人に「140万円は今の時点ではなく、60歳まで払い続けた場合の金額であり、払い続けることを途中でやめれば140万円よりも低くなる」と伝えました。
2. 厚生年金基金が反映されたから
筆者の友人は53歳ですが、今までは「ねんきん定期便」が届いてもしっかりと目を通さなかったそうです。
実は、年金額がグッと増えたように感じた理由は、厚生年金基金の反映も理由のひとつでした。
厚生年金基金は、企業が運用する年金です。国民年金を1階、厚生年金を2階とするならば、厚生年金基金は3階になります。3階部分は、ある人とない人がいます。
2021年6月までは国民年金と厚生年金の2階部分までしか「ねんきん定期便」には反映されていませんでした。
しかし、2021年6月以降は3階部分である厚生年金基金も年金額に入ったため、久しぶりに「ねんきん定期便」をみた友人は「増えた」と感じたのです。
3. 離婚時の年金分割分が反映されるから
筆者の友人は40代半ばのときに会社員の男性と離婚をしています。
友人は、専業主婦だったため離婚時に年金分割をしていました(年金分割には条件があります)。
年金分割を簡単に説明すると
「婚姻中に会社員(厚生年金もしくは共済年金加入)として働くことができたのは、配偶者のサポートのおかげでもある。だから離婚するときには婚姻期間中の厚生年金は2人で分けましょう」
という制度です。
年金分割は、厚生年金の支給額の計算のもとになる報酬額(標準報酬)を2人で分けるため、報酬額が大きければ大きいほどもらえる年金額も大きくなります。
つまり、収入が多い人と低い人を比べれば、収入が多い人と離婚した人のほうが分けてもらえる年金額が多くなります。
「ねんきん定期便」の年金額に年金分割分が反映されるタイミングは、30代で離婚しても40代で離婚しても50歳以降です。
友人は、自分が加入してきた年金に年金分割分が上乗せされたため、グッと増えたように感じたのです。
年金分割制度は、専業主婦やパートでがんばってきた人たちの老後を守る制度です。
ただ、請求期限は離婚から2年以内と決められています。
高所得者の配偶者と離婚した人は、将来の年金額に大きな影響を与える可能性もあります。
3号分割ならば相手の同意不要で手続きができます。
50歳以降の「ねんきん定期便」で「増えた! 」と思えるように忘れずに手続きをしましょう。
50歳以降の「ねんきん定期便」算出根拠を知って備えよう
「ねんきん定期便」は、50歳を境に中身がガラリと変わります。
変わった理由を知らずに「年金額はこれから年間2万円ずつ増えていく」と思い込んでいたら老後の試算は大変なことになるでしょう。
筆者の友人の「ねんきん定期便」は、かなり現実に近い金額が書かれるようになりました。
しかし、まだ任意加入や天引きされる金額はわかりません。
豊かな老後のためにも年金額は、もらえる日まで興味を持ってチェックすることが大切なのではないでしょうか。(執筆者:美大卒 式部 順子)