今回は円安・インフレ・訪日外国人などのキーワードから、インバウンド需要による中古市場への影響について、分かりやすく解説いたします。
経済復興で重要となってくるのが海外からの訪日外国人観光客の存在です。
2019年には入国数が約3,600万人、経済効果は約4.8兆円と過去最高を記録していましたが、昨年2022年の入国数は約1割程度。
日本政府は空港の水際対策緩和を行っていますが未だに厳しい状況が続いています。
また、急激な円安や食品、ガソリン、光熱費などの値上げの影響で家計を圧迫し、企業の賃上げや人手不足なども社会問題となっています。
これらの影響からブランド品の価格も次々と値上げを実施。
特に人気メーカーから販売している腕時計やバッグなどは並んでも買うことができない状況にあります。
このように、様々な経済事情が中古品の相場にも多くの影響をもたらしています。
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インフレについて
インフレとはインフレーションの略で物価が上昇することを言います。
円安がインフレを招く場合もありますし、逆にインフレが進み、相対的にお金の価値が下がることで円安となることもあります。
例えば100円で買えていたリンゴが200円に値上がりしたとします。
同じものを買うのに元々の価格よりも2倍も多くお金を支払わなければならない状況は円自体の価値も下がっているともいえます。
円の価値が下がることで、外貨を交換するときの為替レートにおいても円の価値が下がるため円安の原因ともなっています。
また、このインフレには、良いものと悪いものがあるといわれています。
良いインフレ
景気が上向くと給料も上がり、消費が活発になることで物がよく売れます。
そして、需要が供給を上回り、物の価格が上がる流れは良いインフレとされています。
日本では海外に輸出する自動車や機器メーカーが経済的に大きな割合を占めています。
この良いインフレになることで円安となり、海外で日本の製品が買いやすくなることで輸出が増え、企業の業績があがると景気が上向きます。
景気が良くなることで、給料も上がり、消費意欲が高まり、物が良く売れることで良い循環が生まれ日本経済全体が活性化されます。
悪いインフレ
一方で原材料の高騰により物の価格が上がることは悪いインフレとされています。
日本は貿易大国で様々な物を輸入に頼っています。
円安により輸入材料の価格が上がると当然利益率は減ります。
その為、利益のために物の価格を上げざるを得ません。
消費者目線で言えば、給料は上がらないのに物価は上がることで生活が圧迫され人々の生活は厳しくなります。
まさに今の日本はこの「悪いインフレ」の状態が続いている状況にあります。
物価上昇について
新型コロナウイルスの感染拡大により世界的に経済不況となりました。
さらにロシアのウクライナ侵攻による物流問題やガソリンなどの資源高騰の影響により円安・インフレを後押しする形となりました。
その結果、観光や飲食などの多くの企業は廃業や人員削減、早期退職者を集うなどの対策を取らざるを得ない状況になりました。
しかし、徐々にコロナ前の状態に戻ろうとしています。そのため多くの企業は人手不足に陥っています。
一度手放してしまった人たちの人材確保を補うため求人募集を行いますが、まわりの企業も同じ状況により需要と供給の関係で競争が起こり給料を上げざるを得ない状況になっています。
しかし、消費行動は活性化には至らず、不景気が続いているため社員の賃上げを行えない企業が多く、雇用した人件費を商品の価格に上乗せするなどの対応で物価上昇の負のスパイラルが引き起っています。
ブランド品への影響
これらの状況によりブランド品の価格も徐々に上がっています。
ロレックスの人気モデル、コスモグラフデイトナ(116500LN、白文字盤)を例に挙げますと2016年発売時の定価127万4,400円から幾度かにわたって値上げが行われています。
2023年2月現在の定価は175万7,800円と、実に発売当時の4割近い48万3,400円もの値上がりとなっています。
また、時計だけでなくエルメスのバーキン(素材トゴ、サイズ30)は、同じく2016年頃の価格は134万2,000円でしたが現在は163万9,000円と2割程の18万7,000円の値上げを行っています。
各社利益率を確保するため、値上げによりブランドを守っていると想像できます。
しかし一方では価格が上がることでよりブランドとしての価値を上げ、「手が届きにくいブランド」、「人気のため品薄で手に入らない」といったプレミア感がブランディングの効果をもたらしていて需要が供給を上回り、これらのブランドの店先には長蛇の列が生まれ、中古市場においても常にプレミア価格として販売されています。
現在中古品の買取相場は浮き沈みが激しく予想することが難しい状況にあります。
先ほども例に挙げたロレックスのデイトナ(116500LN、白文字盤)は昨年1月頃にはご使用になられた状態でも定価から約3倍の450万円の査定額が付けられました。
その後さらに値上がりし、春頃には一時500万円もの値が付きました。
しかし、年明け1月には350万円まで急落。2月現在400万円まで盛り返しました。
このように毎月のように相場が変動し安定しない状況が続いています。
外国人観光客の増加
円安になると当然、日本に訪れる外国人観光客が増えます。
理由はドルを持っている人たちが日本円に多く両替することができるからです。
また免税の効果も相まって自国よりも割安で物品を買うことができます。
日本人の物を大切にする文化によって中古品のクオリティは海外の物に比べ状態が良いと言われています。
特にタイや、フィリピンなどの東南アジアの方々や英語圏からのお客様が多くなっている印象です。
海外のお客様は商品との出会いや購入体験を大切にし、欲しい物をじっくりと厳選して選んでいるように見えます。
一方で中国の旧正月にあたる春節時期においてはコロナ前に比べると賑わいを感じることができません。
理由としては本土でゼロコロナ対策を緩和した中国ですが、日本政府による中国からの渡航者に向けた水際対策として行われている直行便の増便抑制を継続して行っているためです。
中国から日本への直行便の予約数はコロナ前の約1割程度と言われています。
アフターコロナに向けて
SDGsは国連加盟193か国が2016年から2030年までにこの地球でより良い暮らしを続けられるように17個もの目標を掲げました。
今はこの取り組みが世界的に認知され世界中の学校や企業、個人でも取り組みが行われています。
これにより日本でもリユースへの関心が高まり中古品に対するハードルは下がりつつあります。
新型コロナウイルスの影響については政府により日本でのマスク着用が屋内外問わず個人の判断に委ねる方針が決定、さらに感染症法上の位置づけがインフルエンザと同等の5類に移行するなど長い長いトンネルもようやく出口が見え始めています。
これに伴いインバウンド需要による経済の復調はもう一歩のところまで来ていて、春の訪れと同じく暖かくなる4月以降に賑わうのではないかと予想しています。
また、各社メーカーが値上げを行ったことで現行品を購入することが難しくなり、比較的リーズナブルに購入することができる以前のデザインや廃盤のモデル、ヴィンテージ品に対するニーズが高まりつつあります。
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