2023年1月以降しばらくは、大手電力会社にて電気料金が引き下げられることが発表されましたが、東京電力では6月に大幅な値上げがありそうです。
食品やガソリン代の値上げも続くなか、電気代だけでもどうにか節約したいと考えている人も多いことでしょう。
そこで今回は、「ハウスメーカーだからわかる、冬の節電方法や断熱性アップの工夫について」インタビューを敢行。
2020年に創立60周年を迎えた、「積水ハウス株式会社」住生活研究所担当の河﨑由美子さんに話を聞きました。
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断熱性を高めて節電につなげる
積水ハウスの河﨑さんに冬の節電方法や断熱性アップの工夫について聞きました。
-本格的な冷え込みになってきました。今年の冬も電気代の請求が恐ろしいので、断熱性を高めて節電したいと考えている人も多いと思います。可能でしょうか?
建築プランや仕様によって異なりますが、築30年程度の家では、暖房をしても家から逃げていく熱の1/3が窓から出て行っています。
そのため、窓付近の隙間風や窓面の冷たさには注意したいところ。
一般的に窓は壁よりも断熱性が低いので、窓の断熱性を上げることがポイントになります。
-すでに建築済の家やマンションで断熱性を高める方法はありますか?
窓に、空気の気泡でできた断熱素材を貼り付けたり、厚めのカーテンに変えると、窓付近の断熱性を高められます。
窓に貼る断熱シートはホームセンターなどでも購入できるので、負担をかけすぎず試しやすいですね。
シャッター(雨戸)を閉めることでも少しは熱が逃げるのを防げますが、採光や日当たりなど生活の快適性を大切にすると難しいところですね。
たとえば、夜間だけ閉めるという方法もあります。
-ハニカム構造の断熱素材を貼るというのは、いわゆる「ぷちぷち」を貼ったり、プラダンで二重窓にするといったことでしょうか。
熱を伝えにくい空気の層を作って、熱損失の大きい窓ガラスをカバーしていくイメージです。
プチプチを貼る場合でも凸面をガラス側に貼る、表面が平面になっているものなどを使うなど、空気の層が作れる素材を貼る方が効果的です。
窓をカバーすることで、家全体の断熱性を高めることに繋がります。
即効性のある冬の節電方法
-即効性のある冬の節電方法についてもっと知りたいです。
冬に暖房を我慢することは難しいので、ひとつの部屋に集まって暖房を使う箇所を減らすことが、暖房費の節約になるのではないでしょうか。
そのためには、心地よく集まりたくなるリビング空間が大切です。
家族のいどころをたくさん作って、一人で過ごすところも、みんなで団欒するところも確保できていると、自然に集まりたくなるリビング空間になりやすいでしょう。
足元を温める「頭寒足熱」も大切です。
具体的には、暖かい靴下やスリッパを履いたりラグを敷いたりして、足元を防寒します。
見た目にも暖かくなるような、冬らしいインテリアを取り入れてみても良いですね。
新築で気をつける「断熱性」のポイント
-これから家を建てる場合、断熱性の高い住宅にするには、どこに気をつければいいですか?
熱の逃げやすい部分をしっかり考えましょう。
窓について言えば、ガラスやサッシ部分の両方の断熱性能によって全体の性能が決定します。
そのためガラスは、複層ガラスやトリプルガラスにするのがおすすめです。
また、サッシはアルミではなく「アルミと樹脂の複合」でできたものを選ぶとよいですよ。
そうすることで窓面の断熱性が確保でき、大きな窓にしても空間の快適性を損なわずに済むからです。
窓だけでなく、壁、天井、床の性能も重要です。
壁や床の断熱材に隙間を作らないことが大切なのですが、柱や梁がある部分は断熱材が入らなかったり、断熱材が切れる部分になったりすることもあります。
-建築後の光熱費を削減するためには、そのあたりもハウスメーカーや業者の方々に説明を求めながら進めていくことが大切なのですね。
家全体の断熱性能を表す指標にUA値というものがあります。
UA値が小さいほど熱の逃げが小さくなるので、お住まいの省エネ基準レベルを調べたりハウスメーカーや業者の方に確認したりしながら断熱性に優れたおうちを実現してください。
半分以下の光熱費を目指す積水ハウスのヒミツ
-積水ハウスの手掛ける建物は、一般的な住宅と比較してどれぐらいの電気代削減が見込めますか?
積水ハウスのZEH「グリーンファースト ゼロ」は、開放的な空間での快適な暮らしを維持しながら、高い断熱性と省エネ設備により消費エネルギーを大幅に削減できます。
先進の創エネ設備により、必要な消費エネルギーに相当するエネルギーを創り出すことで、エネルギー収支ゼロを目指す住宅です。
「グリーンファースト ゼロ」は、いつも快適で、家計にも、環境にもやさしい暮らしを実現します。
そして光熱費は、2013年までに建てられた一般的な住宅と比較して半分以下になる事が目安です。
新築時の参考にしたい「積水ハウス」の工夫
-どのような工夫や建築方法で断熱性を保っているのかを教えてください。
さまざまな断熱材をつながりとバランスを考えながら適材適所に使用するとともに、施工性を向上させた確実な熱橋(ねっきょう)対策により快適な住まいを実現しています。
-熱橋(ねっきょう)対策とは、どんな方法ですか?
熱橋とは、建物の構造体や下地材などの断熱材以外の熱を伝えやすい弱点のことです。
その弱点を克服するために、積水ハウスでは下記のようなことに取り組んでいます。
- 断熱材の特徴を活かして部位ごとに最適な仕様で実施
- 柱や下地材の木部分にも断熱材を配置し、弱点を少なくする設計
- 天井、壁、床など全体のつながり、バランスを考慮した建物全体の断熱設計
- 誰が施工しても安定した性能が確保できる設計
新築時に比較したい断熱性のポイント
-断熱の大きなカギをにぎる「窓」の工夫も教えてください。
家の中でいちばん熱が逃げやすい窓だからこそ、積水ハウスでは、アルミと樹脂の複合サッシで超高断熱を実現し、「暑さ」や「寒さ」そして「結露」を最小限に抑えます。
-超高断熱を実現するアルミと樹脂の複合サッシとは、どういうものですか?
積水ハウスの「SAJサッシ(超高断熱アルミ樹脂複合サッシ)」です。
外部には厳しい日射しに耐える耐候性の高いアルミを、室内には質感や断熱性の高い樹脂を採用した複合構造サッシです。
一般的なアルミ樹脂複合サッシに比べ、室内側樹脂の被覆を増やし、枠部のアルミに断熱樹脂を挟み、断熱性・防露性と気密性をさらに高めています。
その断熱性能は約1.4倍で、業界最高水準のサッシです。
≪画像提供:積水ハウス株式会社≫
さらに、断熱性能を向上させた「薄板トリプルガラス」や「真空複層ガラス」などの超高断熱ガラスも用意しています。
-どういう技術や工夫を取り入れていますか?
断熱性能を高め、室内の温度ムラを少なくする技術により、「ZEH外皮基準(※3)」をクリアしています。
断熱材が壁体内でずれ落ちることのないよう断熱内壁枠と、熱橋を極力排除する内壁下地壁枠取付金具を採用。
長期にわたって確かな性能を発揮し、確実な断熱性能を実現し「冬暖かく、夏涼しい」快適な環境をつくっています。
≪画像提供:積水ハウス株式会社≫
(※3)「外皮」とは建物の内部と外部を分けている境界のことです。
地域ごとに外皮性能基準が定められていて、従来の省エネ基準より高い水準の性能が求められています。
省エネ基準以上の外皮性能を達成しないとZEHとは認められません。
冬にできる節電
河﨑さんのアドバイスにより、すでに建築済の家やマンションで断熱性を高めたいときには、
- 厚手のカーテンに変える
- 空気の気泡でできた(ぷちぷちなど)の断熱素材を貼り付ける
- 夜間はシャッター(雨戸)を閉める
即効性のある冬の節電方法としては、
- 暖房をつける部屋を減らすために、家族が集まりやすい空間をつくる
- 暖かい靴下やスリッパ、ラグなどを敷いて足元を温める
- 見た目にも暖かくなるような、冬らしいインテリアを取り入れてみる
冬の暖房時の設定温度を21℃から20℃にした場合、年間の電気代は約1650円もおトクになります 引用:東京電力エナジーパートナー株式会社
寒い冬は間もなく終わりそうですが、値上げはまだ続きそうです。
今からでも家の断熱性を高めて、電気代節約を試みてください。(執筆者: 山内 良子)
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