「家計のサイフ」とは、たとえば、サラリーマンや公務員などの給与振込用に開設している市中銀行やネット銀行などの金融機関の口座にあるお金で生活費を賄っている場合、その口座のことを指します。
また、家計の収入が余剰の場合は、その資金を預貯金や株式・債券など、資産形成用の口座も「サイフ」というイメージです。
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家計のサイフを一つにするとはどういうことなのか?
「サイフを一つにする」とは、金融機関に持っている全ての口座を一つにするという意味ではなく、どちらかというと、物理的には給与収入と生活費関連の支出について可能な限り1つの口座で家計を管理するという意味合いでしょうか。
ところで、日本の銀行口座の名義人は1人と法律で決まっていますが、諸外国では、共同名義の口座(Joint Account)が普通となっています。
つまり、夫婦が一つの口座を共同で管理できる仕組みなので、これはまさしく「家計のサイフを一つにする」という理想的な形です。
この制度は、残念ながら日本では使えませんが、一部のメガバンクやネット銀行などでは、共通口座が利用できます。
共通口座とは、共同名義口座とは異なり、1人の名義で開設することが必要です。
この制度は、家計収支のすべてを把握できる利点もあります。
それは、一つの共通口座に生活費を定期的に振込み、お互いがその口座を管理していく方法です。
ただし、それには、定期的にその口座に振り込む手間やコストがかかります。
振込手数料は、預金残高にもよりますが、月数回までは無料の金融機関もあるので、それを利用すればコストはかかりません。
しかし、そのような特典がない場合は、振込むタイミングをたとえば月1回から3か月に一回にするなどの工夫が必要かもしれません。
また、この制度には、共通口座の他に貯蓄用口座もあるので、この2つの口座を組み合わせて利用することも可能なのでより効果的です。
家計のサイフを一つにしないと、どうしてお金が貯まらないのか?
お金が貯まらない根本的な原因は、お互いにお金のことに関して干渉しないタイプの場合です。
このタイプは、共働き夫婦に多くみられ、「相手はこのくらいは貯まっているはずだ」とお互いがそう思っています。
そもそも目指すべき家計全体の金銭的裏付けに基づいたライフプランもなく、また目標達成のための行動も起こすことに消極的なので、お金が貯まり難い結果に至ります。
このタイプの具体例をいくつか挙げてみると、
夫の給与のうち生活費だけを妻に渡す
たとえば、妻に渡したお金以外は自由裁量で使えるため夫のサイフにお金が残らないタイプ
お小遣い制となっていない
たとえば、夫婦のお小遣いを特に決めていない場合は、その額が青天井になり易いため、お金が残らないタイプ
自分へのご褒美を頻繁に行う、等々
「事ある度にご褒美を連発する」あるいは「つい衝動買いしてしまう」などもお金が残らないタイプ
家計のサイフを一つにしないとどうして離婚が多いか?
これはまた別の問題ですが、お金の切れ目が縁の切れ目とでも言うのでしょうか、家計のサイフを一つにしない世帯は離婚が多いと言われています。
ただし、家計のサイフと離婚は一つの要因に過ぎないと思われます。
なぜなら、この関係は、家計のサイフを一つ(共同名義口座)にできる米国などを見ても離婚率が高いからです。
この根本的な原因は、お金が貯まらない以前の問題として、お互いのお金に対する価値観の違いが影響しているようです。
離婚に関しては、お互いが同じ価値観を持っていれば何も問題は生じませんが、たとえば、夫が浪費志向で妻が節約志向または妻がケチで夫が節約志向の場合などが悪いパターンとして挙げられます。
「ケチ」と「節約」の根本的な違い
では、ケチと節約はどう違うのでしょうか。
筆者が携わってきた業務経験に基づきそれらを定義すれば、「ケチ」は、自分や血の繋がった人のためには積極的にお金を貯める人が多く、仮に、お金を使う場合でも交際相手や配偶者など、血縁関係のない人のためには使わない傾向があります。
ケチな人は、悪く言えば、決して他人を幸せにしない利己主義的なタイプのためサイフを一つにすることにも消極的な人が多いと実感します。
一方、「節約」は、貯まったお金を自分や家族或は社会のために使う利他主義的なタイプのため、サイフを一つにすることにも積極的な人が多いと実感します。
したがって、それぞれのお金に対する価値観については、出来れば付き合う前や結婚前に、目指す方向性をお互いに確認しておくことがとても大事です。
もう一つの改善策は家計収支をガラス張りにすること
改善策は「家計のサイフを一つにすること」と「サイフの中身を定期的にチェックすること」です。
家計収支の赤字や立てていた目標が未達の場合は、その都度見直しをかけることです。
ただし、「サイフは一つにしない」又は「サイフは物理的に一つにできない」などの事情がある場合は、家計を「見える化」して、その収支状況をお互いが把握できるようにしておくことがポイントです。
また、そのためには、家計簿や資産運用など、お互いの役割分担を決めておくことも大事です。
具体的には、生活費用の銀行口座残高や収支項目を定期的に公開してチェックすることです。
また資産形成用に運用している投資口座についても同様な方法で行います。
生活費については、たとえば、家計簿を付ける場合において、通信費、公共料金、車関連費用、保険料、医療費、住宅ローン返済、教育費など、主な費目別に分類して記録します。
資産運用については、夫婦それぞれが行う場合でも、金融知識のある方が、たとえばiDeCoやNISAなどの金融制度の利用や金融商品の選択および投資判断の助言などの役割を分担するとより効果的です。
自由裁量のお金があってもいい?
お小遣いは自由に使えるお金ですが、家計管理の一項目に過ぎません。
自由裁量のお金は、以下にあるような臨時的に発生するお金を指します。
たとえば、
・お買い物するごとに貯まるポイント
・国の家計支援策により給付されるマイナポイント、コロナ特別定額給付金(一人当たり10万円支給)
・結婚前に貯めていたお金
などです。
もちろん、これらは家計の状況にもよります。
しかし、自由裁量のサイフを持つことは、家計管理をストレスなく進めて行くうえで大変必要なポイントです。
1月は新しい年のスタートです。
まだ家計管理を見える化してない世帯は、新年を機に検討してみてはいかがでしょうか。(執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志)
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