現在、認知症の方も地域で生活していく方法が模索されています。
若年性認知症の方の在宅介護は、高齢者の認知症と違いいろいろと考えなければならないことが多いです。
今回は、若年性認知症の方が介護を受けながら在宅生活を送る上で、注意する点などをご紹介します。
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若年性認知症の場合は、家族を巻き込んでの金銭面の問題が
働き盛りの年代である若年性認知症の方は、世帯の収入を担っていることが多いです。
若年性認知症と診断された後も、本人や家族の生活は続いていきます。
その為にも収入を途絶えさせないことが必要になります。
例えば、診断後も初期であれば、配置換え等で就業を継続できる可能性があります。
傷病手当金の申請
また、会社勤めの方で、若年性認知症により連続して4日間以上仕事を休んだ場合、その期間が無給であれば、傷病手当金を申請することができます。
自営業の人は傷病手当金の支給がない為、自分で就業不能保険や認知症に対する保険を入っておくのも収入確保の1つの手です。
認知症症状が進んだ時には、精神障害手帳を取得し、その後、障害年金の手続きをとることもできます。
また、企業の障害者雇用や障害福祉サービスの1つである就労継続支援事業所で働くこともできます。
働くことは、収入を得ることだけではなく、本人の社会参加を促し、意欲を保つことにもつながります。
収入確保と同時に支出を減らす工夫
金銭面の負担軽減の為に、支出を減らすことも重要です。
医療費や介護費が高額になった際は、高額療養費制度や高額介護サービス費の制度が利用できます。
高額介護サービス費は、自己負担額が上限を超えた場合に市区町村から支給申請が送られてきます。
しかし、高額療養費制度は、限度額適用認定証を事前に入手する事前申請や自己負担限度額の上限を超えた分の払い戻しを事後に申請するという、自分から手続きを行わなければならない制度ですので、注意が必要です。
また、同じ世帯内で、1年間の「医療保険」「介護保険」の自己負担が一定の金額を超えた場合は、高額医療、高額介護合算療養費制度が利用できます。
住宅ローン
若年性認知症とよばれる年代的には、住宅ローンに加入しておられる方も多いのではないでしょうか。
団体信用生命保険に加入しているのであれば、本人の状態により、返済をしなくて良い場合がある為、ぜひ確認をしてみてください。
参照:厚生労働省(pdf)
介護サービスや障害福祉サービスを利用しよう
認知症の症状がすすむと家族介護だけでは、在宅介護が難しくなっていきます。
収入を得る為にも、家族は働く必要があります。
また、お子さんがいる場合は、お子さんが担う介護の負担が大きくならないように、介護サービスや障害福祉サービスを利用した方が良いと考えます。
40歳から64歳までの若年性認知症の人も介護サービスが利用できます。
しかし、認知症症状がかなり進んでしまった方は、入浴や排せつなどの介護の拒否がある場合もあります。
その場合、年齢が若い分力が強い方だと対応が難しい施設もあります。
介護サービスは高齢者が中心なので、本人が利用を嫌がる可能性もあります。
基本的には介護サービス優先ですが、障害福祉サービスが利用できる場合もあります。
そのほか、訪問系サービスを利用するという方法もあります。
家族の負担軽減等の為に、担当マネージャーに相談し、本人に合った方法や施設を選び、介護サービスが利用できるようにすることをおすすめします。
財産問題の為に、家族信託や銀行への代理人届を
本人名義の財産がある場合には、管理が問題となってきます。
認知症症状が軽度で、判断能力があるとなれば、家族信託や代理人届を利用できる場合があります。
代理人届は、本人に代わり金融機関のお金の出し入れ等をすることができるようになる届け出です。
家族信託は、預金や株券、不動産等の財産がある場合、本人の為に本人に代わって運用していいくことができる制度です。
症状が進み大きな問題が起こる前に、話し合いを行い、手続きをすることをおすすめします。
周りの協力を得ながら在宅生活を工夫していきましょう
若年性認知症の方の在宅生活では、お金やサービス利用について考慮する点が多くあります。
加えて家族の心配もあるでしょう。
本人の気持ちや家族へのフォローなど、心理的支援も必要となります。
在宅生活をスムーズに送る為にも、医療機関やサービス事業所、家族の学校や会社の関係者と連携をとっていくことも重要です。
考えなければならないことは多いですが、本人、家族のペースで、周りの協力を得ながら在宅生活を工夫していくことで、安定した生活を送っていくことも可能な場合があります。
まだ社会に浸透していない若年性認知症でもあるので「若いのになぜできない?」と思われがちです。
それでも、どんな方でも安心して買い物ができるようにと商品の購入の方法に配慮しているスーパーマーケットなど、地域で行っている活動や工夫も広まってきています。(執筆者:現役老人ホーム施設長 佐々木 政子)
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